
南スーダン・ジョングレイ州ランキエンにある国境なき医師団の病院で診療を待つ人びと=2023年3月14日 (C) Nasir Ghafoor/MSF
南スーダン政府は、反政府勢力が支配している東部ジョングレイ州の一部で人道援助を遮断している。救命に必要な医療援助活動が制限され、特に子どもや妊婦、慢性疾患を患う人びとの命が脅かれている。
国境なき医師団(MSF)は、全ての紛争当事者に市民を保護する責任を果たすよう求めるとともに、国際社会に対し、悪化の一途をたどる南スーダンの人道危機へ優先度を上げて対応すべきだと訴える。
重症患者の緊急搬送もできず
この制限は2025年12月からジョングレイ州のランキエン、ピエリ、アコボで行われており、人道援助のための航空便はすべて停止されている。これにより、医療物資をはじめとした必需品の輸送や人の移動が、困難または不可能になっている。1月29日時点で、ランキエンとピエリでは少なくとも23人の重症患者が地域の外への緊急搬送を必要としており、命の危険が差し迫っている。
南スーダンのデスク・マネジャーを務めるアブダラ・フセインはこう話す。
「政府がジョングレイ州での人道・医療アクセスを遮断し続ければ、医療が必要な人たちは命を落とすことになります。人道援助を制限して医療を受けられないようにするのは、乱暴な政治的策略だと言えます。最終的に被害を受けるのは市民です。この制限は直ちに終わらせなければなりません。
民間人への大規模暴力や強制移動を公然と示唆する当局者の発言は、到底容認できません。政府は民間人を保護するために今すぐ行動を起こさなければなりません」

MSFは昨年12月上旬、ジョングレイ州ウロルで激しい衝突により重傷を負った人びとの搬送を支援した=2025年12月7日 (C) MSF
すべての紛争当事者は民間人の保護を
この制限を受け、MSFはランキエンとアコボからスタッフの退避を余儀なくされ、両地域とピエリの医療施設での活動を、救急・救命医療のみに縮小せざるを得なくなった。ピエリにも武力衝突の危険が迫り、MSFは患者の大半を退院させた上で、緊急キットを携え、地元住民とともに1月29日に退避を余儀なくされた。
MSFは、これまでランキエンとピエリで約25万人、アコボで11万2000人に医療を提供してきた唯一の医療機関だ。南スーダン政府がMSFの活動を認めずこの地域からの退去を強いると、40万人近くの人びとが医療を受けられなくなる。
南スーダンのオペレーション・マネジャーであるグル・バドシャーはこう話す。
「ジョングレイ州で続く紛争と退避は、もともと限られていた医療に加えて新たな緊急・人道ニーズを生み出し、市民をさらに不安定な状況に追い込んでいます。全ての紛争当事者には、市民、人道援助スタッフ、医療スタッフ、医療施設を保護する責任があるということを、MSFは改めて訴えます。医療活動への攻撃や脅迫、妨害は、人命を危険にさらすものであり、止めなければなりません」
南スーダンで悪化の一途をたどる人道危機は、国際社会が緊急に優先度を引き上げて対応すべき課題だ。地域住民は複合的な危機に直面し、国内全域で援助の需要が高まっているにもかかわらず、現在の対応はこうしたニーズに追いついていない。道路がまだ利用できる乾期の間にMSFが医療施設へ物資を届けられなければ、影響はさらに深刻化し、その後に続く人道危機は壊滅的な規模となるおそれがある。救命医療を維持し、住民の健康状態がこれ以上悪化するのを防ぐためには、継続的で安定した人道アクセスが不可欠だ。
<南スーダンにおけるMSFの活動>
MSFは1983年から南スーダン(当時のスーダン)で活動し、同国最大の医療・人道援助団体の一つであり続けている。現在7つの州と2つの行政区で活動し、2025年には83万件以上の外来診療、1万2000件の手術を含む9万3000人以上の入院治療、10万7000人の子どもの栄養失調のスクリーニング検査を行ったほか、国全体で重症患者の搬送を行った。