著者・落合由佳氏の切実な願い、この作品に書かれていることが「『古い』と思われる日が早く来てほしい」に、作家・福田隆浩氏(特別支援学校元教員)も共感。読書感想文を通じて社会の地続きにある問いを考える。

「きょうだい児」の葛藤を描いた作品『君の火がゆらめいている』(落合由佳・作)
講談社が運営する読書と子育てのWebメディア「コクリコ」( https://cocreco.kodansha.co.jp/ )は、第72回(2026年度)青少年読書感想文全国コンクールの「中学校の部」課題図書に選出され、各方面から高い関心を集めている『君の火がゆらめいている』(落合由佳・作)の背景と、本作に込められたメッセージについて記事を公開いたしました。
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障害のある兄弟姉妹を持つ子ども「きょうだい児」を主人公に描く作品。著者のコメント、現場を知る識者にも話を聞きました。
潜在化する「きょうだい児」の孤独
近年、家族のケアを日常的に担う「ヤングケアラー」への支援や実態調査が進む一方、障害のある兄弟姉妹がいるために家庭内で悩みを抱え込みやすい「きょうだい児」の心理的ケアは、まだ十分に認知されているとは言いがたい現状があります。
本作は、この「きょうだい児」である主人公が、思春期特有の多感な時期に家族のあり方や自身のアイデンティティに悩み、揺れ動く姿をリアルに描いた作品です。
現代の教育現場や社会が直面するテーマに深く切り込んだ背景について、著者・落合由佳氏のコメント、そして現場を知る識者である作家・福田隆浩氏の視点を交えてご紹介します。
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『君の火がゆらめいている』があぶり出すリアル
課題図書の選定にあたり、著者の落合由佳氏は、この作品で書かれていることが「古い」と思われる日が早く来てほしいという、現実社会を見据えた切実な思いを明かしています。
【著者・落合由佳氏 コメント】
「いつまでも古びない物語を書きたいと常に思っています。でも今作は読者のみなさんに『古い』と思われる日が早く来てほしい。『障害のある人や、そのきょうだいがこんなに大変な時代があったんだね』 そんな感想が聞こえる未来へ、この物語につながりますように」
専門家はどう見るか。30年以上の特別支援教育経験を持つ作家・福田隆浩氏の視点
子どもたちがこのテーマにどう向き合うべきか。かつて著書『ふたり』が同コンクールの課題図書に選定され、長年特別支援学校の教員として障害児支援の現場に身を置いてきた作家の福田隆浩氏は、本作を次のように評します。
【福田隆浩氏 コメント】
「特別支援学校の現場でご家族と関わる中で、きょうだい児が抱える複雑な思いに何度も直面してきました。本作は、姉を大切に思う気持ちと、自分の人生を歩みたいという葛藤が、当事者の生々しい本音として描かれていて、深く胸を打たれます。
また、家族だけで抱えこまずに医療や福祉などのチームを頼る大切さが、中学生の目線で描かれている点も、これまでにない画期的な切り口だと感心させられました。
迷いながらも他者の痛みに寄り添い、自分の中にある良心の火に気づいていく主人公の姿は、きょうだい児に限らず、未来を選ぶすべての子どもたちの背中を温かく押してくれるはずです」
読書感想文という「対話の場」がもたらす、他者への想像力
多感な時期に、社会の地続きにある葛藤に触れることは、他者への想像力を養う上で大きな意味を持ちます。
読書感想文は、単なる宿題ではなく、本を通して自分自身の生きる世界を捉え直す営みでもあります。
『君の火がゆらめいている』という一冊が、今年、日本中の中学生の心にどのような問いを投げかけ、どのような感想を生み出すのか。その行方に今、大きな注目が集まっています。
○プロフィール
落合由佳(おちあいゆか):1984年、栃木県生まれ。東京都在住。法政大学卒業後、会社勤務などを経て、2016年バドミントンに打ち込む中学生たちを描いた『マイナス・ヒーロー』で第57回講談社児童文学新人賞佳作に入選。翌年、同タイトルのデビュー作を出版。著書に、『流星と稲妻』『おはなし日本文化 和食 ぼくらのお祝いごはん』『天の台所』『要の台所』『君の火がゆらめいている』(すべて講談社)などがある。