大阪・泉佐野市にある就労継続支援B型事業所を経営するHEMは、事業所の利用者と一緒に取り組んだこおろぎの成虫を商品化することとなった。ガイヤ社と連携し、ECサイト開設やパッケージデザインなど商品化準備を開始した。また、販売に先駆け、泉佐野市にある居酒屋「いろり」にて成虫の料理が提供される。
障がいのある人と相性が良いこおろぎ飼育
HEMは、2022年3月から泉佐野市で就労継続支援B型事業所を開所。こおろぎの飼育・管理、商品化作業が障がいのある人と相性が良いことから、こおろぎの飼育に取り組み、利用者が生き生きと働ける環境作りを目指している。
知的障がいや精神障がいを抱える人は、まだまだ働く機会を得にくいのが現状だ。そして、こおろぎなどの昆虫は、人によっては触ることに抵抗があり、誰でも抵抗なく作業できるとは言い難い。しかし、知的障がいを抱えている人の中には、年齢を重ねても感性が豊かで昆虫採集や飼育に興味を持つ人が多く見られる。そのような感性を持つ人にとって、こおろぎの飼育・管理は楽しみながらできる作業だ。また、精神障がいを持つ人は、ひとつのことに集中して知識を吸収する特性がある。
このような特性を活かして、こおろぎの餌や水飲み場所の開発・作成から餌やり・水やり、糞の掃除といった日常的なお世話まで、利用者6名が担当している。
食料として注目されるこおろぎ
日本は食料自給率が高くなく、世界的な食糧難や異常気象が発生すれば食料が手に入りにくくなる可能性があるなか、こおろぎは雑食であることから、日本の食料自給率の低さをカバーできる可能性があると言われている。こおろぎは何でも食べるため、廃棄物を使って飼育することが可能で、飼育コストが低く廃棄ロスの削減にもつながる。
また、生産における水の使用量が少ないことも注目の理由だ。牛は100gを生産するのに2万2,000リットルと多くの水を必要とするが、こおろぎはわずか4リットルの水で生産可能。今後食肉の消費量の増加が見込まれ、動物性タンパク質の確保が課題となるなか、こおろぎの食料としての活用は資源を守りながら動物性タンパク質を確保することができる。
成虫だからこその豊富な栄養素
「こおろぎ牧場」で販売するこおろぎは、基本的に“成虫”の状態で食べることができる。牛や豚、鶏100gあたりのタンパク質が20g前後のところ、こおろぎは60g近くを含有している。成虫のまま食べることで、こおろぎの豊富なタンパク質をしっかりと摂取することができる。
また、雑食のこおろぎは、与える餌によって味が変化する。同事業所では農家の廃棄物を活用し、大阪の米ぬか、京都の出汁、青森のソースを使って育てており、複数のテイストを楽しめる。「こおろぎ牧場」では、「米こおろぎ」「玉ねぎこおろぎ」「胡麻こおろぎ」などを1,480円から販売していく。
さらに、同事業所のこおろぎの成虫が、居酒屋「いろり」にてメニューに採用された。同店は、もともと「かえるの唐揚げ」や「蜂の子」などめずらしい食品を提供している。居酒屋「いろり」で、ひと足早くこおろぎの成虫を味わってみては。
こおろぎ牧場HP:https://korogi-farm.com/
居酒屋いろりHP:https://robatayakiirori.owst.jp/
【出典】JAICAF「世界の農林水産」:https://www.fao.org/3/ax299o/ax299o.pdf
(山本えり)