KOTARO NUKAGAでは、4月8日(土)~6月3日(土)の期間、アメリカ、ハワイ島生まれのアーティスト、マイケル・リキオ・ミング・ヒー・ホー氏による個展「SOMETHING SO BEAUTIFUL IS SO EASILY FORGIVEN」を開催している。
ギャラリーの白い壁を剥がして作品制作
「SOMETHING SO BEAUTIFUL IS SO EASILY FORGIVEN」は、ホワイトキューブと言われるギャラリーの壁に直接介入するカタチで作品が制作されている。
また、ギャラリーの壁に直接描いた「フレーズ」をドライボードごと剥がしたペインティングと、壁面内部に直接「フレーズ」を描いたペインティングの組み合わせによって構成されている。
壁面内部のペインティングは、展覧会終了後、壁の修復とともに半永久的に壁面内に残り続ける。
ホワイトキューブからも逃走するZ世代アーティスト
「フレーズ」をギャラリーの壁に直接描き、引き剥がすというアーティストの行為は、1929年にニューヨーク近代美術館(MoMA)が公共性に支えられた近代美術館制度を目指し導入した、ホワイトキューブという制度からも逃走するZ世代のアーティストの態度でもある。
それは言語を扱う表現の一部、つまり言語による非領域化の姿勢として見ることもできる。
ダークで不条理なユーモアを含むミームカルチャーの影響
同氏が様々なメディアから抽出したテキストによって作り出した「フレーズ」は、インターネットやソーシャルメディアなどに溢れるダークで不条理なユーモアを含むミームカルチャーの影響を受けている。
インターネットやソーシャルメディアを使いこなすZ世代は、インターネット上に広がる様々なミームを共有することで共感を生み、異なる世代から押し付けられる別の価値観に対する不満や未来への失望、幻滅といったものを皮肉やダークなユーモアによって自らの価値観や感性として表現。ミームはその言語が指し示す直接的な意味だけではない、非言語的な領域がSNSなどを通じて伝えられている。
言語でありながら絵画
ひとつの「フレーズ」にはいくつかのデザインのフォントが使われ、言語でありながら絵画であり、テクスチャーをもっている。
あえて混在したアメリカ英語とイギリス英語など文法的・言語的な不自然さがあり、言語を非領域化させることで意味の先へと向かわせる。同氏は、上の世代の人々によって領域化された世界の構造を自分たちの世代の言語によって非領域化し、創造の可能性を広げている。
言語を扱う現代アーティスト、マイケル・リキオ・ミング・ヒー・ホー氏による個展「SOMETHING SO BEAUTIFUL IS SO EASILY FORGIVEN」をチェックしてみて。
■SOMETHING SO BEAUTIFUL IS SO EASILY FORGIVEN
会期:4月8日(土)~6月3日(土)
開廊時間:11:00~18:00 ※日月祝休廊
会場:KOATRO NUKAGA(天王洲)
住所:東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 3F
公式サイト:https://kotaronukaga.com/
(角谷良平)