福武財団は、2025年春、香川県・直島町本村地区近くの高台に、新たに「直島新美術館(仮称)」を開館する。新美術館は、ベネッセアートサイト直島における安藤忠雄氏設計のアート施設として10番目になる。

個々の施設から美術館群へ

直島には1990年代初頭より、ベネッセアートサイト直島が企画・運営する作品、施設が数々設置されてきた。瀬戸内海に面した南部には、安藤忠雄氏の設計による「ベネッセハウス ミュージアム」や「地中美術館」、「李禹煥美術館」が位置する。

島民の生活や行政の中心的な地区である本村地区では、空き家となった古い家屋などを改修しアーティストが空間そのものを作品化する「家プロジェクト」や「ANDO MUSEUM」が公開されている。

島の玄関口の宮ノ浦地区では、実際に入浴できる直島銭湯「Ｉ♥湯」や、旧パチンコ店をギャラリーに改修した「宮浦ギャラリー六区」などで、瀬戸内の島々の歴史、文化、民俗に新たな視点で触れることができる。

このように、数々の施設が島内に点在し、美術館群が形成されるなか、新美術館はこれらを有機的に結びつけるものとして機能する。

アジアのアート展示をはじめ交流・連携・発信拠点に

新美術館では、日本も含めたアジア地域のアーティストによる社会や環境、時代に対する独自の批評精神を感じさせる作品を中心に展示・収集する。また、企画展示の開催や、トーク、ワークショップといったパブリックプログラムなど展示以外のより幅広い美術館活動にも取り組む。こうして、これまで以上に多様な視点や表現、時代や社会に対する多義的なメッセージを発信するとともに、繰り返し人々が訪れ、島内外の多種多様な人々が出会う交流・連携の場として機能させていく。

新美術館が島の数々のアート施設をつなげることで、より一層自然や集落と一体化したアート体験を創出するとともに、アートと建築、自然、そしてコミュニティの調和・融合のさらなる発展形を目指す。

ベネッセアートサイト直島で10番目となる安藤建築

新美術館の建築は、1992年開館の「ベネッセハウス ミュージアム」以降、30年以上にわたり直島の数々の建物を手がけてきた安藤忠雄氏が設計を担当。

丘の稜線をゆるやかにつなぐような大きな屋根が特徴的な建物は、地下2階、地上1階建て。トップライトから自然光が入る階段室は地上から地下まで直線状に続いており、階段の両側に4つのギャラリーが配置されている。地上フロアの北側にはカフェを併設し、瀬戸内海を臨むテラスから、豊島や行き交う漁船など、瀬戸内海らしい景観を眺めることができる。

美術館の外観は本村の集落の景観になじむよう、焼杉のイメージに合わせた黒漆喰の外壁や小石が積まれた塀などを予定しており、美術館までのアプローチや建築からも直島の歴史や人々の営みと体験が緩やかに繋がるようデザインされている。

新美術館が誕生する直島で、より自然や集落と一体化したアート体験を楽しんでみては。

■直島新美術館(仮称)
住所：香川県香川郡直島町3299-73

ベネッセアートサイト直島：https://benesse-artsite.jp/

(山本えり)