アリベは、1月17日(水)、学芸員有資格者で陶磁史研究家・加納亜美子氏と、加納の実姉・玄馬絵美子氏との共著で『あたらしい日本洋食器の教科書 日本史とデザインで楽しくわかる「やきもの」文化』を翔泳社から刊行、全国の書店で販売を開始した。
初心者向けの4コマ漫画つき
これまで「日本のうつわの本」というと、こだわりの作家ものや和食器の骨董品の本がメインだった。しかし、実際に一般家庭の食器棚にあるのはそうした食器ばかりだろうか?一般家庭には、メーカーや窯元の量産品食器(プロダクト)が、もっとも多く使われているのだ。それにもかかわらず、今まで書籍でその魅力や実践的な使い方を詳しく取り上げられたことはなかった。
そこで『あたらしい日本洋食器の教科書 日本史とデザインで楽しくわかる「やきもの」文化』2,970円(税込)では、陶磁器業界がなかなか伝えてこなかった素晴らしいプロダクトの日本洋食器の魅力について、わかりやすく解説。初心者向けの4コマ漫画つきで、楽しみながら学べるところもポイントだ。
ドラマティックなストーリーを解き明かす
同書は、2022年に刊行された『あたらしい洋食器の教科書 美術様式と世界史から楽しくわかる陶磁器の世界』(翔泳社)のシリーズ第二弾でもある。前作は発売と同時に驚きの情報量と内容の深さでたちまち業界の話題を呼び、韓国、中国、台湾で翻訳本が刊行された。
同書は、前作の単なる続編や二番煎じではなく、重複する項目もすべて内容を「日本の洋食器」向けに刷新した書下ろしとなっている。明治維新のチャレンジ精神あふれる創業者の歴史、歴史人物の波乱に満ちた人間ドラマ、東洋と西洋の文化をつなぐかけ橋となったやきもの文化など、ドラマティックなストーリーを解き明かしていく。
日本の洋食器を知るための本
あまり一般には知られていないことだが、江戸時代に和食器は出島から輸出され、その和食器デザインが西洋でなんと「洋食器」となった。西洋では伊万里焼を「イマリ」、薩摩焼を「サツマ」と呼び、それを真似たデザインの西洋洋食器が19世紀に大流行した。やきものの世界では伊万里焼(有田焼)や薩摩焼が特別扱いされることはそれほどないが、西洋洋食器の世界では、当時これらのやきものは出色の存在だったそう。
同書は、文字通り「あたらしい」テーマをたくさん盛り込んだ日本の洋食器を知るための本。「あたらしい」とは、先述したプロダクトの日本洋食器の魅力発信や歴史秘話はもちろん、個別に紹介されていた食器メーカーと窯元のやきものとが、同じ「日本の洋食器」というテーマで共演したこと。これにより、今まで片方ずつの視点で表現されてきた両者の特徴やそれぞれの持ち味が、横断的にわかるようになった。
教科書としてのわかりやすさを追求
また、教科書としてのわかりやすさを追求し、オールフルカラーで豊富な写真とイラスト、図解やデザインにも細かくこだわって作りあげている。
詳細な日本の食器メーカー紹介をはじめ、製造や原料、文様やデザインといった基礎知識、やきもの文化の神髄とモダンデザインとの関わり、料理との相性や集め方など、日本洋食器の具体的な実例まで網羅。さらに、日本史を交えた陶磁史、著名人のやきもの論をかみ砕いて紹介したコラムまで、幅広い知識を1冊におさめた、まさに「日本洋食器がまるごとわかる」本となっている。
『あたらしい日本洋食器の教科書 日本史とデザインで楽しくわかる「やきもの」文化』を、この機会に手に取ってみては。
(江崎貴子)