日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、茨城県旧真壁町(桜川市)を写真とともに紹介する。
Vol.221/茨城県旧真壁町(桜川市)
朝6時半の空は、ここ数日間の雨が信じられないぐらい、スカッとした青空だった。いざ晴れると、雨の日のことは忘れてしまうもので、人間は都合がいいなあとも思ってしまう。でも、今日は青空に身を任せよう。
と、最初に向かった先は、桜川市の旧真壁町だ。ここには戦国時代末期から江戸時代にかけてつくられた町並みが、今も残っている。町並みへ着くと、建物同士の間隔は狭く、街灯が並んでいるものの、電柱や電線の本数が少ないので、昔の風景の中にいるよう。何より、建物が朝の日差しを浴びて、静かな気配に包まれている様子が、真壁の日常を表しているようで、とても好きだった。
町並みを散策していたところ、ひとりのおじさんと挨拶をして、「まあ、コーヒーでも飲んでいきなよ」と、家にお邪魔することになった。エネルギーに満ち溢れていたそのおじさんは、頭の回転がとても早かったが、75歳と聞いて驚いた。真壁町に移住してきた経緯をはじめ、かれこれ1時間ぐらい話し込んだ。「いいか、色即是空なんだよ」とおじさんは最後に言った。
出会いは偶然か必然か。どちらを思うも自由だが、ぼくはきっと、誰かとの出会いはロールプレイングゲームの物語のように捉える方が、自然だと感じられる。ストーリー上、設計されているし、でも、絶対に必要なストーリーかどうかはわからない。少なからず、小さな出会いは何かを育ててくれるきっかけになる。そのように感じながら。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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