栃木県佐野市の佐野藍復活プロジェクトは、市内で生産されている藍染原料の藍草と染料の「すくも」の生産について紹介するwebサイトをオープンした。
衰退した伝統的な正藍染めを復活
栃木県佐野市(旧安蘇郡田沼町)における「藍」の歴史は古く、江戸後期に多くの藍農家が存在し、明治30年代までは藍葉を買い入れて藍玉(すくも)に加工する安蘇郡藍同業組合員が、61名在籍したとの記録がある。しかし、明治37年に安価な合成藍が輸入されたことをきっかけに、日本の伝統的な正藍染めは衰退の道をたどり、佐野市からも藍は消滅した。
100年以上も前に滅びた佐野藍を復活させようと、佐野市民の有志が立ち上がり、2012年から佐野藍復活プロジェクトがスタート。佐野市の藍染師・故大川公一氏を中心に藍農家6軒によって藍草の栽培からすくもを作り、ついに伝統的な正藍染めの復活を果たした。この藍染の原料を作る活動は、現在も佐野市内で脈々と続いている。
「佐野藍」を紹介するサイトをオープン
古来の藍染は、独特の風合いや色合いから現在でも多くの人に親しまれているが、馴染んでいるのは衣料製品として存在する藍染であり、どのような過程を経て製品となるのかはあまり知られていない。
春の種蒔き後、真夏に刈り取られた藍草は、すくもとなる葉の部分のみを手作業で丁寧に選り分け、
冬の間約100日毎日天地を返しながら高温で発酵させることで、藍染の染料となる「すくも」が完成する。
藍草は、2度の刈り取り後きれいな花を咲かせ、次のシーズンに向け採種。佐野市で生産されたすくも(佐野藍)を用い、市内で日本古来の藍染製法である「正藍染」を行う工房「正藍染 大青」の佐野工房にて藍染生地となる。
自然の力により作られる藍染は、藍草という原料があるから存在し、さらに多くの手間暇をかけて作られるすくもという染料がなくては美しくできあがらない。佐野藍復活プロジェクトは、「佐野藍」について多くの人に知ってもらい、将来に渡って生産が続くことを願い、ウェブサイトを新設した。
NYのファッションショーでも披露
大きな手間暇をかけて作られるすくもの製造量はまだ多くないが、生地は日本国内で販売されている。また、日本の伝統素材を海外のデザイナーに繋げる活動を行うSAKURA COLLECTIONのプロデュ-スにより、ミラノコレクションにも出展を果たしているイタリアのファッションブランド「Florania」がデザインし、本年2月にはニューヨーク・ピエールホテルでのファッションショーで披露された。
藍の生産量を増やし、すくもによる藍染製品が消費されれば、地域で小さな経済が循環する。また、休耕地が活用されることで地域の景観が保たれ、コミュニティが継続する。そして、化学に頼らない天然藍による日本古来の美しい藍色が、国内外の人々の目を潤すことに繋がっていく。
佐野藍復活プロジェクトのwebサイトで「佐野藍」に触れて、日本古来の美しい藍染めについて学んでみては。
佐野藍復活プロジェクトURL:https://sano-blue.jimdosite.com
(山本えり)