日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、福島県旧表郷村(白河市)を写真とともに紹介する。
Vol.245/福島県旧表郷村(白河市)
茨城県日立市から、いよいよ福島県白河市を目指した。関東地方の旅を終えて、東北地方へ入るのである。次の都道府県に移ることにも大きな感動があるが、地方による区切りというものの喜びはまたひとしおだ。移動距離は90kmほどで、道中は霧雨が続いた。霧雨は傘を差せば大したことないのだが、カブだと非常に濡れる、厄介な雨である。面倒だなあと思いながらも途中で合羽を着た。でも、ついに「福島県」と書かれた看板が目の前にあわられたときは、「わあ、福島県かあ!」と思わず声が出た。関東の旅が終わって、次の旅がはじまる。
さて。翌朝5時過ぎに向かった先は、旧表郷村だ。外に出ると、雨は止んでいるが路面はしっかり濡れていて、いつ降ってくるかわからない状態だった。合羽を着るか悩ましい…。まずは着ないでいいや。と、出発をしたのだが、やがて雨が降ってきた。それに茨城県を巡っていたときよりも寒い。やはり東北にやって来たのだと肌で感じる。
旧表郷村で自生する「ビャッコイ」という植物を見に行った。全国でも旧表郷村にだけ生息する多年草で、地球上でも北半球ではここだけだという。「白虎隊」から名前の由来がきていることも面白いし、命名はNHKの連続テレビ小説「らんまん」の主人公のモデルとなった、牧野富太郎博士だそうだ。
住宅地のすぐ近くで、木々に覆われた茂みの中に小さな小川があり、そこにビャッコイは浮かんでいた。非常にひっそりとしていて、静かだからこそ美しく感じられる。観光地化されているわけではない。でも、植物にとっても、地元の方々にとっても、そのバランス関係が、合っているのかもしれない。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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