日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、福島県旧伊南村(南会津町)を写真とともに紹介する。
Vol.254/福島県旧伊南村(南会津町)
旧舘岩村の前沢曲家集落から国道352号線を進むと、途中で旧伊南村に入った。そのまま道を進み、突き当たりで左へ折れる。「大桃の舞台」と呼ばれる歌舞伎舞台を訪れた。奥会津の農民歌舞伎の舞台といえば、まずは「檜枝岐の舞台」が有名かもしれない。大桃の舞台のある大桃地区から伊南川を上流へ進んだ先に、檜枝岐村はある。ぼくが日本の市町村をすべて巡った中でも、檜枝岐村は指折りの秘境だった。ここにも暮らしがあるのだという驚きと、農民歌舞伎という文化があるのだという驚き、いずれもあった。檜枝岐の舞台も見に行っていた。だから、大桃の舞台は通り過ぎてしまっていたのだ。今、旧市町村という括りで訪れたことで、知ることができた。深い木々に囲まれた中に浮かぶ大桃の舞台は、茅葺き屋根から柱まで、柔らかな光に包まれて堂々たる佇まいだった。
さらに、檜枝岐村に入る直前に広がる、屏風岩という自然の奇岩も見に行った。柱状節理の岩が不規則にならび、その間を伊南川が流れる。大きな急流の音に囲まれて、同じく訪れていた女性はじっとその流れを見ていた。写真には写らない、自然のエネルギーというものがある。五感が察知する畏怖のようなもの。自然が生み出す光景に人間は圧倒される生き物だ。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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