日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、福島県旧岩代町(二本松市)を写真とともに紹介する。
Vol.274/福島県旧岩代町(二本松市)
二本松市の東に位置する、旧岩代町へやってきた。阿武隈山系に位置しており、山に囲まれた気配が強い。
まずは市街地を通って、「合戦場のしだれ桜」を目指した。その合戦とは、平安時代の八幡太郎義家と安倍貞任・宗任兄弟によるものだとされている。
八幡太郎義家は源義家のことで、源氏と安倍氏が勢力争いを繰り広げていたと。最終的には源氏が勝利し、安倍氏は滅んでしまったわけだが、単純にその結果だけではない様々な物語がほんとうはあったのだと思う。
そして、しだれ桜がついに現れた。すでに桜の時期は過ぎていたものの、太い枝がいくつも分かれ、葉が大きくしだれている様子は見事だ。桜の名所はたくさんあるけれど、「合戦場のしだれ桜」という響きに、どうしても惹かれるものがある。
再び市街地方面へ進んでいく。山の斜面に家が点在し、屋根は赤褐色のものが多い。雨上がりでしっとりした緑と家の気配からは、福島県らしさを感じられた。
岩代図書館を見つけたので、館内に入ってみると、優しい本の香りがした。図書館の雰囲気というものは、どうしてこんなにも落ち着くのだろう。地元に良い図書館があっていいな、と。
少しずつ日差しも戻ってきて、変わらない日常の風景に明るさも加わり、走っていて気持ちが良かった。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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