日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、岩手県旧前沢町(奥州市)を写真とともに紹介する。
Vol.345/岩手県旧前沢町(奥州市)
旧衣川村は山に囲まれた風景だったけれど、旧前沢町まで向かうと、北上川の胆沢平野に変わった。空も広く感じられるし、同じ奥州市でも雰囲気が大きく変わるのはとても面白い。平野部では米作りも盛んで、岩手有数の米どころでもある。市街地に向かうまでの水田の風景はとてもうつくしかった。
そして、旧前沢町は東北本線の前沢駅も通っていて、一本南側にある駅は「平泉駅」だ。中尊寺も近く、ここが奥州街道や北上川の舟運として栄えた理由も頷けると思った。
駅近くの通りを散策していく。何より気になったのは「前沢牛」の文字。あちこちのお店の看板のみならず、街灯の絵も牛がモチーフになっていた。前沢牛って、聞いたことがある気がするなあと。いつかテレビで見たのかなあ。でも、まだ直接食べたことはない。ぼくのような旅人にはまだまだ不相応だと気持ちを律する。商店街では定期的に催事もひらかれているようで、ハレとケの日々があるのだと思う。
また、小屋のバス停を通ったときに、バス停のベンチでそのまま横になって寝ているおじさんがいて、一瞬ドキッとした。ぼくのせいで起こしてしまうのは、と静かに通過したつもりだったけれど、数分経って復路を歩いていたとき、ムクっと起きて立ち去っていくのが見えた。自由だ。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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