猪熊弦一郎の画業の礎とも言える、20代・30代の頃の創作活動を紐解く「猪熊弦一郎展 画業の礎-美校入学から渡仏まで」が、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館にて、2025年1月26日(日)~3月30日(日)の期間に開催される。
観覧料は一般950円(前売り及び20名以上の団体料は760円)、大学生650円(前売り及び20名以上の団体料は520円)、高校生以下または18歳未満・丸亀市在住の65歳以上・各種障害者手帳を持っている人と、その介護者1名は無料。
なお、上の料金には同時開催企画展「『第1回MIMOCA EYE / ミモカアイ』大賞受賞記念 西條茜展 ダブル・タッチ」、および常設展「猪熊弦一郎展 立体の遊び」観覧料が含まれている。
作品からは若きアーティストの奮闘と時代背景が見える
猪熊弦一郎は、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館が果たすべき役割の一つに、若いアーティストの育成を挙げていた。2022年に開始した公募展「MIMOCA EYE / ミモカアイ」は、この猪熊の考えに沿うもの。
第1回展の大賞受賞記念にあたる同時開催の「『第1回 MIMOCA EYE / ミモカアイ』大賞受賞記念 西條茜展 ダブル・タッチ」に呼応し、「猪熊弦一郎展 画業の礎-美校入学から渡仏まで」では、猪熊自身が20代、30代の頃の画業に注目して、若い画家が独自の表現を探り奮闘するさまを紹介する。
また今回、同館で初出品となる版画作品『射的』は、1936年にナチス政権下で行われたベルリンオリンピックの芸術競技に出品されたもの。
額の裏板には「Ⅺth OLYMPIAD BERLIN 1936 Art Competition and Exhibition」と記載されたラベルが貼られており、当時の記録書からも猪熊が版画部門に出品していたことが確認できる。同作は、その後廃止されたオリンピック芸術競技の痕跡を示す、歴史資料でもある。
猪熊弦一郎の葛藤が伝わる作品も多数
東京美術学校で、猪熊は藤島武二(1867~1943年)のクラスを選択した。藤島は週に2度教室にあらわれ、どの学生にも「デッサンが悪い」とだけ言って立ち去ったそうだ。
その言葉を猪熊は自分なりに解釈し、絵画とは、ものの形をただ写すのではなく、その本質や事象を描くことだと考えるようになった。当時、日記のように描いていた自画像には、感情を絵にあらわそうとする試みがうかがえる。
1930年代、日本の軍国主義化が進むにつれ、美術にもその影響が及ぶ。1935年、政府は美術界における挙国一致をめざし、突然、帝展(帝国美術院展覧会)の制度改革を敢行した。
これを機に猪熊は官展と決別。そして、より純粋に芸術を追究したいと、1936年、小磯良平(1903~1988年)ら同世代の仲間とともに新制作派協会を立ち上げ、以後、同会を発表の舞台とした。
そして1938年、猪熊は35歳でフランスに渡り、2年間パリで活動した。滞仏中、巨匠アンリ・マティス(1869~1954年)に自作を見てもらう機会を得る。
そのときマティスから言われた「お前の絵はうますぎる」という言葉は、「自分の絵になっていない」という戒めとして猪熊に突き刺さった。この経験を起点に、猪熊は生涯を通じて、画家として「本来の自分を描き切ること」に邁進するのだ。
企画展をより楽しむためのプログラムも開催
「猪熊弦一郎展 画業の礎-美校入学から渡仏まで」会期中は、企画展を楽しむためのプログラムも用意。2025年2月9日(日)、3月9日(日)各日14:00からの「キュレーター・トーク」では、同展担当キュレーターの古野華奈子氏が展示室で来館者に見どころを話す。参加料は無料(別途、同展観覧券が必要)、申込不要。
2025年2月1日(土)・2日(日)10:00~18:00(入館は17:30まで)の「親子でMIMOCAの日」は、高校生以下または18歳未満の観覧者1名につき、同伴者2名まで観覧無料となる。
「猪熊弦一郎展 画業の礎-美校入学から渡仏まで」で、猪熊弦一郎の世界観に触れよう。
■「猪熊弦一郎展 画業の礎-美校入学から渡仏まで」概要
会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
住所:香川県丸亀市浜町80-1
会期:2025年1月26日(日)~3月30日(日)
開館時間:10:00~18:00(入館17:30まで)
休館日:月曜日(ただし2月24日(月)は開館)、2月25日(火)
楽天チケット:https://leisure.tstar.jp/event/rlikggm
美術展ナビチケットアプリ:https://artexhibition.jp/ticketapp
(佐藤 ひより)