
表具専門工房の江原小林堂は、越谷市日本文化伝承の館「こしがや能楽堂」にて、古裂(こぎれ)をテーマにした展示会「古裂と表具の展示」を12月13日(土)・14日(日)に開催する。
同展では、表具師・江原小林堂が手がけた古裂帖と、それら古裂で仕立てた掛け軸を展示。また、両日とも11:00と14:00から展示の解説も行われる。
端裂を綴った宝箱、「古裂帖」の世界
「古裂と表具の展示」でフォーカスされるのは、古裂のなかでも「名物裂」とよばれる織物だ。「名物裂」の本歌は、室町時代を中心に中国などから分かってきた裂地である。
金襴、緞子、間道、などの種類があり、利休など当時の茶人達に選ばれたものが名物茶器の仕覆や唐絵の表具裂として用いられてきた。それらはいつしか個別の名称で呼ばれるようになり、現在まで写し裂が作り続けられ愛されてきたという。

手鑑は貢を繰るたび楽しい
今回展示される「古裂帖(裂手鑑)」は、端裂を集めて貼りこんだアルバムのような折り帖のこと。
そのはじまりは、仕覆や表具に多く携わっていたため数多くの裂地を扱っていた大名茶人・小堀遠州が、そこで出た小さな端裂を大事にとっておき一帖にまとめ「文龍帖」と名付けたことがはじまりといわれている。

表具で余った数々の端裂
同展では、遠州公にならい、集めていた端裂で仕立てた裂手鑑を公開。
煌びやかな金襴や渋い緞子、重厚な印金やモダンな間道など、小さな帖に好きなものを好きなように詰め込んだ宝箱のような「古裂帖」だ。
経年のさびが一体感ある表具に

富士江の島図画賛
古裂を使用した時代表具(掛軸)も展示。
今回は、江原小林堂が日頃から気をつけて探し集めているという古裂により仕立てられた時代表具から、「詞花集切 伝寂蓮」「和歌短冊 細川忠興筆」「和歌小色紙 小堀遠州筆」「和歌色紙 冷泉為満筆」「富士江の島図画賛 狩野伊川院筆」、さらに江戸時代に仕立てられた「松花堂昭乗の墨竹図」も併せて展示される。

整理した古裂を選ぶ
江原小林堂は古裂を使用した掛軸について、「作品の書かれた頃に仕立てたような掛軸が理想です。」とコメントを寄せている。
古書画を表装するときは、現代の裂地よりも書画作品が書かれた時代にふさわしい古裂を使うとしっくりと馴染んだ仕上がりになるからだ。年月を経ることで宿る「さび」により一体感のある表具となるそう。
手に入れた古裂は、傷みを補修したうえで選びやすいように整理をしておく。いざという時、作品を裂地にあててみて相応しい裂地を選び出すのだ。会場では、昔の掛軸と今の掛軸を見比べられる。
時代を超えて受け継がれた裂と表具の世界に触れながら、「古裂と表具の展示」でひとときの静かな美を味わってみては。
■古裂と表具の展示概要
開催日時:12月13日(土)・14日(日)10:00~16:00
開催場所:越谷市日本文化伝承の館 こしがや能楽堂
住所:埼玉県越谷市花田6-6-1
入場料:無料
「こしがや能楽堂」公式HP:https://nohgakudou.kosi-kanri.com
江原小林堂公式HP:http://www.shourindou.org
(Kanako Aida)