
シー・エヌ・エスが、ろう・難聴者が日常で感じる「聞こえない・聞こえにくい世界」を疑似体験できるVRコンテンツ「Deaf VR」の体験会を全国開催する費用を募るため、READYFORにて、7月27日(月)~9月24日(木)23:00の期間クラウドファンディングを実施中だ。
ろう・難聴に関する課題
およそ9人に1人が難聴とされている現代(※1)。「聞こえない・聞こえにくい」という悩みを抱える人の存在が身近となりつつある一方で、悩みを抱える人々が「どう聞こえているか」「どう悩んでいるか」への社会的理解が進んでいないという課題がある。
ろう・難聴の当事者が感じる世界には、不便さだけでなく、不安や孤立感、社会とのズレが存在。実際、ろう・難聴の当事者の転職経験率は約40%に上るというデータもあり(※2)、職場における環境整備やコミュニケーションの壁が指摘されている。
自身の経験をもとに「Deaf VR」を開発
シー・エヌ・エス社員の牧村正嗣氏(プロジェクト担当)は、自身の先天性難聴の娘との関わりを通してこういった課題に直面。ろう・難聴の世界を多くの人に知ってもらう対話のきっかけを作るべく、2018年より360°映像と空間音響を用いた「Deaf VR」の開発を進めてきた。

「Deaf VR」は、音量を下げる耳栓型の体験とは異なり、歩道のない道を歩く場面、家族との食事の場面、カフェで店員さんから質問を受ける場面といった日常の様々なシチュエーションにおいて「どのように聞こえにくいのか、ろう・難聴者はどんな感覚なのか」を映像と音の変化を通してリアルに体験できるコンテンツ。

実際に体験している様子
これまで首都圏を中心としたイベント会場等では、累計約2,800名に「Deaf VR」を体験してもらい、「初めて(ろう・難聴の世界を)自分ごととして考えた」といった反響があったという。
一方で、関東エリア以外の人々からも「自分たちの地域でも実施してほしい」「子どもたちや職場で体験したい」という声が数多くあがっているが、機材準備や移動、設営に多くの時間と費用がかかるため、実施地域が限られているのが現状だ。
全国に気づきと対話の場を創出するプロジェクト
現在実施中のクラウドファンディングでは、全国各地での体験会開催を支援者と共に実現することで、「Deaf VR」を社会全体で育てるプロジェクトへと発展させ、全国に気づきと対話の場を創出。
集まった資金は、全国主要都市での「Deaf VR」体験会開催費用として活用され、体験会は、クラウドファンディング公開終了後約1年で、札幌・仙台・名古屋・大阪・広島・松山・福岡・那覇にて開催される予定となっている。
その他の開催地については、要望をもとに検討するそう。プロジェクトの目標金額は330万円だ。
今後の展望
今後シー・エヌ・エスは、各地での体験会実施にとどまらず、体験後の対話やワークショップの展開等も行い、「社会課題は、存在しないのではなく、認識されていないだけ。」という信念のもと、体験を通して誰もがあらゆるものを取りこぼさないインクルーシブな社会の実現を目指すとのこと。
全国主要都市での「Deaf VR」体験会開催を目指すプロジェクトを応援してみては。併せて、SNSでは「なぜクラファンなのか?」「VRの開発背景」などが発信されているのでチェックしてみよう。
READYFOR:https://readyfor.jp/
プロジェクト名:「聞こえる前提」を問い直したい!Deaf VR全国展開プロジェクト
※形式通常型/All or Nothing形式
※1 出典:日本補聴器工業会「JapanTrak 2025(ジャパントラック 2025)調査報告」
参照:https://hochouki.com/files/japan_trak_2025.pdf
※2 出典:坂本徳仁「聴覚障害者の進学と就労 ――現状と課題」2011年/立命館大学生存学研究センター『生存学研究センター報告16』より
参照:https://www.ritsumei-arsvi.org/publication/center_report/publication-center16/publication-228/
(佐藤ゆり)