
熊本県内で書店のない自治体が増えるなか、甲佐町の「cho-juu-park(チョージューパーク)」に、町の人が自由に過ごせる図書室「OWL(おうる)」が誕生した。
熊本と福岡を代表する書店が選書を担当

子どもも大人も自由に感性を解放できる、そんな思想をもった公園、チョージューパークに、約1,100冊の新書をそろえた図書室「OWL(おうる)」が誕生した。ちいさくもひらかれた本との出合いの場で、敷地内の森、川、遊具となじむ山小屋のようなつくりとなっている。
本の選定・納入は、明治創業の長崎書店(熊本市)と、MINOU BOOKS(うきは市・久留米市)のコラボレーションにより実現した。

長崎書店の選書は「超、自由」のコンセプトを発想のまんなかに、出合いの楽しみ・世界の広がり・思案の深まりを提供できるような書籍・シリーズをたっぷり選んだ。特に、熊本にゆかりのある作家や地域にまつわるラインナップは見ものだ。

石井 勇氏
MINOU BOOKSの選書テーマも同じく「自由」。現地調査の際、ランドスケープや遊具の配置から、利用する人や子どもたちにその選択と責任がしっかり委ねられていると感じたという。MINOU BOOKSの石井勇氏は「自由には常に責任が伴いますが、固定観念や”あたり前”を心地よく疑い、選択肢を広げられるような本を選びました」とコメントしている。
買うでも借りるでもない、本と過ごす時間
デジタル化が進み、自宅や部屋に本棚がないという人も増えている。熊本県内には書店が一軒もない自治体が約半数となり、実はチョージューパークのある甲佐町にも書店がない。
レストラン「ましら」と連動してオープンするため、レストランのオープン中は「OWL」の鍵は、いつでも開きっぱなし。室内にどれだけこもってもよく、虫や鳥の声を聞きながらツリーハウスで読みふけるもよし、レストランでコーヒーをテイクアウトして森を散策しながら読むのもOKだ。

長﨑 健一氏
長崎書店の長﨑健一氏は「何万・何十万冊という本に触れ、向き合ってきた書店人が、その知見を存分に発揮して選書させていただいた。本を間において語らう喜び、本棚と静かに向き合う喜び、それぞれの“OWL時間”を堪能してほしい」とコメントを寄せた。
たった1冊との幸運な出合いを目指して

買うでも借りるでもなく、その“あわい”。ちいさな森に誕生した図書室「OWL」は、あなたとたった1冊との幸運な出合いを目指してつくられた。
本は扉であり、まだ見ぬ本との出合いは人生にこれだけの選択肢があることを教えてくれる。今後は、本にまつわるイベントやトークショー、展示などを多数企画中で、まちの人とつくるそんな時間をここでは大切にしたいとしている。
長崎書店とMINOU BOOKSについて
長崎書店は明治22年(1889)に上通町で創業し、書籍の販売に加えてギャラリーやホールを活用した展覧会、トークイベントなど本を軸とした文化活動に積極的に取り組む、130年以上にわたり地域の人と本との出合いをつくりつづける熊本を代表する書店だ。
MINOU BOOKSは、福岡県うきは市と久留米市に店舗を構え、「暮らしの本屋」をテーマに衣食住にまつわる本から文学、アート、デザインに関する本まで日々の暮らしに、新しい視点や彩りをもたらす書籍をセレクトしている。
コピーライター福永あずさ氏

福永あずさ氏
福永氏は熊本を拠点とする編集者・コピーライターだ。
「ここではタブレットやスマホを閉じて、今日、ピンときた1冊を選んでみてください。その本を読んで感じた感情は、あなただけのものとしてしまっておいてください。そんな、誰にもじゃまされない本との時間が、この場所にたくさん生まれたらうれしいです」とコメントしている。
「超・自由」がコンセプトの公園型複合施設
チョージューパークは、甲佐小学校に隣接する元・親水公園の約5,000㎡の敷地を活用して生まれた公園型複合施設だ。
同町にある谷田(やつだ)会が運営するパークのコンセプトは「超・自由」。敷地内には高齢者デイサービス「きりん」、療育ラボ「れぷれ」、オーガニックレストラン「ましら」などがあり、福祉と日常の暮らし、自然や文化が交わる場所として整備されている。
地元の人、福祉施設を利用する人、観光で訪れる人、隣の小学校からかけ出してくる子どもたちなど、さまざまな人の自然なまじり合いの場所を目指すことで、社会のあり方をひとつの公園として形にする「取り組み」に挑戦している。

書店のない町に新たな選択肢と物語を届ける「森の図書室」へ、足を運んでみては。
■チョージューパーク 図書室「おうる」
住所:熊本県上益城郡甲佐町豊内469-1
チョージューパーク公式:https://www.instagram.com/chojuupark
(丸本チャ子)