
ショップ「URUSHI NOIR」の外観
能登半島地震から2年半。工房を失った輪島塗作家で、細谷忠兵衛商店の代表取締役・細谷幸夫氏は、「生業を取り戻す」復興への第一歩として、今年7月20日(月・祝)に完全予約制の「忠兵衛ギャラリー」、8月6日(木)に輪島塗を中心に伝統工芸品を取り扱うショップ「URUSHI NOIR(ウルシ ノワール)」を、石川県金沢市南町に開設した。
輪島へ戻るために、金沢に新拠点を開設
輪島塗作家で、細谷忠兵衛商店の代表取締役・細谷幸夫氏は、2024年1月1日の能登半島地震により、自宅兼工房・ギャラリーを喪失した。
震災から2年半が経過する中で、輪島は依然として復興の途上にあり、観光の目玉だった朝市や観光客向けの宿泊施設の再建が進まないなど、伝統工芸を取り巻く環境も厳しい状況が続いている。
このような中、細谷忠兵衛商店は「輪島へ戻るために、まず仕事を取り戻す」ことを目指し、金沢を新たな拠点として事業再建を進めている。

今年7月20日(月・祝)には完全予約制の「忠兵衛ギャラリー」、続いて8月6日(木)には、輪島塗を中心に伝統工芸品を取り扱うショップ「URUSHI NOIR」を金沢市南町に開設した。
これらの新拠点は、単なる金沢への移転にとどまらず、将来的に輪島へ戻るための「再建の足場」と位置付けている。これを通じて、地域に根ざした「生業」を再構築し、伝統工芸の未来を紡ぎ続けていくとしている。
細谷氏の復興への思い
復興とは、単に建物を元に戻すことにとどまらず、「生業(仕事)」を取り戻すことが不可欠だ。
能登半島地震によって全ての事業基盤を失った細谷幸夫氏は、震災後に、「伝統工芸に未来はあるのか」「輪島塗は本当に再興できるのか」と繰り返し自問したそう。
そして時間の経過とともに、復興にはインフラの復旧に加え、地域に根ざした「生業」を取り戻すことが重要であると痛感。職人が仕事を得て生計を立て、受け継がれてきた技術や文化を次世代へつなぐことがなければ、産地の復興にはつながらないと考えたという。
「URUSHI NOIR」と「忠兵衛ギャラリー」について

細谷忠兵衛商店が金沢に設けた2つの拠点は、それぞれ異なる役割を持っている。ショップ「URUSHI NOIR」は、現時点では細谷氏自身の作品は十分に取り揃えられていないが、輪島の職人仲間や他産地の工房の作品を取り扱い、伝統工芸の技術と思いを未来へつなぐ場を創出している。また、女性客に喜ばれる「カワイイ」漆器やカラフルな器を展示し、伝統工芸をより身近なものにすることを目指している。

「忠兵衛ギャラリー」内の写真
「忠兵衛ギャラリー」は、床板や天井板に弁柄塗装の上に拭漆を施すなど、能登の風土と伝統を再現した空間設計の元、

三谷吾一『青い鳥』
輪島塗の文化功労者・三谷吾一の作品を中心に展示。非日常の空間の中で、五感を通じた文化体験を提供し、輪島塗本来の価値と奥深さを堪能できる場所となっている。
売上の5%を熊本地震で被災した伝統工芸事業者に寄付
細谷氏は、今年7月28日(火)に発生した「令和8年熊本地震」に際し、能登半島地震を経験した立場として、被災者の人々に心を寄せている。
能登での震災後、多くの支援を受けた経験が、今の細谷忠兵衛商店を支えている。細谷忠兵衛商店では、店舗開設から12月末までの「URUSHI NOIR」の店舗売上の5%を、熊本県内で被災した伝統工芸事業者への復興支援として直接寄付する。
今年末には熊本県内の支援先を決定し、寄付内容について改めて公表する予定だという。細谷氏はこの取り組みを、産地の垣根を越えた新たな支援の形であると考えている。
細谷忠兵衛商店の今後のビジョン
細谷忠兵衛商店は今後、輪島の職人仲間や他産地の仲間との連携を保ちながら、金沢を拠点に能登の復興と伝統工芸の新しい可能性を発信していく。細谷忠兵衛氏の活動は、天来書院ブログ「輪島塗と螺鈿」で読むことができる。
「輪島に戻るために、金沢から始める」そして「能登で支えられた経験を、今度は熊本へ」という細谷忠兵衛商店の強い思い、そして今後の取り組みに注目してみては。
■URUSHI NOIR
住所:石川県金沢市南町5-5 南町ビル1階
営業時間:10:00〜18:30
定休日:水曜日
■忠兵衛ギャラリー
住所:石川県金沢市南町5-6 河崎文栄堂ビル3階
営業時間:予約制
定休日:水曜日
HP:https://cyubay.com
天来書院ブログ「輪島塗と螺鈿」URL:https://www.shodo.co.jp/blog/wajima
(yukari)