“熱中症ゼロ社会”を目指した官民合同の取り組み
環境省は、昨今の猛暑で熱中症リスクが増大する現状を踏まえ、環境省が提供する熱中症予防情報を活用して、熱中症対策につながる民間の新しいビジネスを考えるアイディアソン(デザイン・シンキング・ワークショップ)に参加しました。当アイディアソンは、関係官庁がSAPジャパン株式会社(東京都千代田区)の協力を得て企画し、2月18日(月)に、ビジネスイノベーションスペースとして開設されたInspired.Labで開催されました。民間企業13社、大学5校、関係府省等を含め36名が参加しました。環境省は、「暑さ指数(WBGT)」をオープンデータとして提供するとともに、参加者としても協力しました。
環境省は、昨今の猛暑で熱中症リスクが増大する現状を踏まえ、環境省が提供する熱中症予防情報(オープンデータ※1)を活用して、熱中症対策につながる民間の新しいビジネスを考えるアイディアソン※2(デザイン・シンキング・ワークショップ)に参加しました。当アイディアソンは、関係官庁がSAPジャパン株式会社(東京都千代田区)の協力を得て企画し、2月18日(月)に、ビジネスイノベーションスペースとして開設されたInspired.Labで開催されました。民間企業13社、大学5校、関係府省等を含め36名が参加しました。環境省は、「暑さ指数(WBGT)※3」をオープンデータとして提供するとともに、参加者としても協力しました。
■様々な「立場・視点・アプローチ」から斬新な発想が生まれたアイディアソン
今回のアイディアソンには、様々な企業の事業開発担当者21名、大学生6名を含む36名が参加しました。20歳代の若手半数を含む、業種・経験・年代・性別の多様な混合6チームに分かれました。SAPジャパン株式会社のファシリテーターのリードのもと、オープンにアイディア創出を競い合い、チーム内、チーム間のコラボレーションを高めあう形で進行しました。
参加者は、熱中症対策に取り組むオピニオンリーダーの講演と、環境省の取り組みとオープンデータに関する説明をインプットとして受け取った後に、チームに分かれて解決すべき課題を抽出し、アイディア創出を行いました。
参加者は、まず解決すべき問題点にフォーカスをあてたディスカッションを行い、課題を抽出。続いて、児童や高齢者と言った熱中症弱者や労働現場にフォーカスしてターゲット像の「ペルソナ」を設定し、ブレインストーミングに取り組みました。チームごとに白熱した議論が展開され、積極的なアイディア創出が行われました。アイディアの発表では、試作品の制作や、想定されるシーンを登場人物になりきって実演するなど、個性的な発表を繰り広げました。発表を基に、審査員が採点を行いました。
審査の結果、最優秀賞は、建設現場で働く従業員のための熱中症対策商品として、ウエアラブルで体調管理が可能なシステム「涼々名人」を発表したチームが獲得。チームリーダーは、「とても楽しかったです。今回のような考え方を会社でのグループワークでも活用していきたいです」と語ってくれました。
■アイディアソンへのインプットのため、各分野のオピニオンリーダーが「暑さ対策」や「オープンデータ活用」について講演
アイディアソンに先駆け、参加者へのインプットを目的とした講演が行われました。内閣情報通信政策監の三輪 昭尚氏が、社会のデジタル化推進の重要性と、デジタル化がもたらすビジネスチャンスについて、大阪府 吹田市長の後藤 圭二氏が、吹田市の取り組みなどを踏まえた「暑熱災害から命を救うビジネスモデル」について、帝京大学 医学部教授の三宅 康史氏が、「熱中症とは-データを活用し病態を理解する-」をテーマに講演しました。環境省は、「熱中症と暑さ指数(WBGT)」について、大気生活環境室長の吉川 圭子から説明を行いました。参加者はインプット情報をもとに、熱中症対策につながる新しいビジネスモデルについて議論をしました。
■アイディアソン開催の背景~社会問題化する熱中症について、「オープンデータ」を活用して対策を考える~
昨今の猛暑で熱中症リスクが増大し、2018年夏期の熱中症による搬送者数は約95,000人(例年同時期だと5万人前後)に達しました。熱中症は、個々人が予防法を知ってそれを実践することで、防ぐことが可能なものです。環境省がオープンデータとして提供している、熱中症の発症しやすさを示す暑さ指数(WBGT)についての認知度が上がり、ビジネスとしても活用することで、予防行動を促進していただきたいのです。
さらに、日本では、今後数年の間に、ラグビーワールドカップ、東京オリンピック・パラリンピック、ワールドマスターズゲームズ、万国博覧会と、世界中の方々が来日するビッグイベントが行われます。競技関係者や観客の熱中症対策に取り組み、それらを取り巻く経済活動を、円滑に進める必要があります。
昨今、内閣官房IT総合戦略室では、政府や地方公共団体が広く公開する公共データである「オープンデータ」の活用を推進しています。環境省が、今回のアイディアソンへ参加したのは、社会問題化する「熱中症」に対し「オープンデータ」を活用した対策を考えることで、国民生活の向上、企業活動の活性化を図るための活動を積極的に行っていきたいという観点からです。環境省は、これからも熱中症対策をはじめ、地球環境などの問題解決のために様々な提言を行い、国民の皆様とともによりよい地球環境の創生に努めてまいります。
■発表されたアイディア
ソリューション1. 最優秀賞受賞アイディア「涼々名人」
<ペルソナ>
真夏の建設現場で働く男性従業員。日々熱中症に注意しながら作業に従事。
WBGT(暑さ指数)とウエアラブル端末で計測した体感温度を用いて、涼しさを数値化した「涼々値(りょうりょうち)」を考案。建設現場の従業員がウエアラブル端末を装着することで、「涼々値」を計測し、ランキング化。ランキングの高い従業員を表彰することでインセンティブを与え、作業効率向上を図るというシステムを考案しました。
ソリューション2.
小学校で熱中症の危険のある児童が出た場合に警告を発するAI型ロボット「Tell me cool Answer」。
ソリューション3.
教員に、屋外の授業などで熱中症の疑いのある児童を判別する「暑さ見えるSMARTサンスクリーム」。
ソリューション4.
一人暮らしの78歳女性のお年寄りが、熱中症にならないように呼びかける電話モニター「セルウォッチみまもるくん」。
ソリューション5.
高齢者の水分補給と、孫とのコミュニーケーションを促す水筒型AIデバイス「MAGOCUP」。
ソリューション6.
建設現場の作業員の方の心拍数や体温を測定し、熱中症の危険が高まったときに警告を行うデバイス「エゼキエル」。
- オープンデータ活用ビジネス創出の”アイディアソン”実施概要 -
日時:2019年2月18日(月)9:20~18:30
開催場所:Inspired.Lab(東京都千代田区大手町1-6-1 大手町ビルディング6階)
参加者数:36名(企業の新規事業担当者、官庁職員、学生など)
審査基準:1.ペルソナにとっての望ましさ、2.ビジネス性、3.オープンデータの有効活用、4.熱中症予防への貢献
当日の模様(動画): 環境省動画チャンネル https://youtu.be/2Pudli21V68
※1 オープンデータとは
日本政府は、公共データを広く公開することにより、国民生活の向上、企業活動の活性化等を通じ、我が国の社会経済の発展に寄与する観点から、機械判読に適したデータ形式を、営利目的も含めた2次利用が可能な利用ルールで無償公開する「オープンデータ」の取り組みを推進しています。(官民データ活用推進基本法[平成28年法律第103号])オープンデータへの取組により、国民参加・官民協働の推進を通じた諸課題の解決、経済活性化、行政の高度化・効率化等が期待されています。
※2 アイディアソンとは
アイディアソンとは、アイディアとマラソンを組み合わせた造語で、新しいアイディアを生み出すために行われるイベントです。IT業界のベンチャー企業を中心に広まりましたが、現在では地域の課題解決など地方創生につながるテーマの事例も増えており、多くのジャンルで注目を集めています。
※3 暑さ指数(WBGT)とは
暑さ指数(WBGT[湿球黒球温度]:Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標です。 単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されますが、その値は気温とは異なります。暑さ指数(WBGT)は人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい 1.湿度、 2.日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、 3.気温の3つを取り入れた指標です。