患者・家族の意思決定と生活支援を重視した“患者向け手引き”を紹介。日本食道学会・患者会が連携し、共有意思決定(SDM)の重要性を提言
2026年5月18日、金原出版株式会社は、厚生労働省会見室にて、『患者さんとご家族のための食道がん診療の手引き』発刊を記念した「食道がんの診療に関するプレスセミナー」を開催いたしました。
当日は、日本食道学会 理事長であり浜松医科大学医学部附属病院 病院長の竹内裕也先生、日本食道学会 副理事長であり国立がん研究センター中央病院 頭頸部・食道内科 科長の加藤健先生、食道がんサバイバーズシェアリングス代表理事の高木健二郎様が登壇。
日本食道学会理事長の竹内博也氏が食道がんの基礎・疫学・治療の概説と日本の治療成績、学会活動を紹介。続いて副理事長の加藤健氏が、医療者向けガイドライン(2022年版)を踏まえつつも患者の意思決定と生活に役立つ「手引き」として再構成した理由、患者会との協働、2024年11月アンケート結果の反映を説明。患者会代表の高木健次郎氏が、患者の孤立を背景としたチェックリスト作成、動画等メディアミックス、啓発イベントや無料冊子配布等の活動を紹介し、共有意思決定(SDM)における手引きの役割を強調。プレスセミナーに参加された記者との質疑では、患者参画の経緯、地域格差、内視鏡検診の重要性、医療者バイアスを避けた中立的情報提供の必要性についての意見が交わされました。

【プレスセミナー 開催概要】
■タイトル: 食道がんの診療に関するプレスセミナー
―『患者さんとご家族のための食道がん診療の手引き』発刊記念―
■日時:2026年5月18日(月) 13:10~14:00(受付開始 13:00~)
■会場:厚生労働省会見室(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館9階)
■登壇者:
竹内裕也 先生(浜松医科大学医学部外科学第二講座)
加藤健一 先生(国立がんセンター中央病院頭頸部・食道内科)
高木健二郎 様(食道がんサバイバーズシェアリングス)
■内容:
ご挨拶
『患者さんとご家族のための食道がん診療の手引き』発刊の経緯・・・竹内 裕也 先生
食道がん治療の変遷について・・・加藤 健 先生
手引きについて知っていただきたいこと(患者の立場から)・・・高木 健二郎 様
質疑応答
日本の食道がん治療は世界トップレベル
一方で“患者の孤立”や“情報格差”も課題に
セミナーでは、日本では年間約27,000人が食道がんに罹患し、約11,000人が死亡している現状が紹介されました。
竹内博也 氏は、食道がんの病態や治療法について解説するとともに、日本の食道切除術後30日死亡率は世界的にも極めて低く、日本の治療成績は世界トップレベルにあると説明。多職種連携や周術期管理の蓄積が背景にあると述べました。
一方で、患者側では「診断直後に何をすればいいかわからない」「主治医に何を聞けばよいかわからない」「仕事や生活との両立情報が不足している」など、“情報の空白”が存在していることも共有されました。

“ガイドライン”ではなく“手引き”へ
患者・家族の生活視点を重視
続いて、加藤健 氏は、今回の書籍について、「医療者向けガイドラインをそのまま患者へ渡しても、実際には理解や活用が難しいケースが多い」と説明。
その上で、
- 診断直後に知っておくべきこと
- 主治医に聞くべき内容
- セカンドオピニオンの受け方
- 手術・入院・退院後の流れ
- 術後合併症や食事・栄養管理
- 緩和ケアや生活支援
など、“患者の日常に直結する情報”を重視した「手引き」として再構成したことを紹介しました。
また、本書籍には、2024年11月に実施した患者アンケート(109名・216件)を反映し、「知っていて助かったこと」「知らずに困ったこと」など、当事者の声を多数取り入れたことも説明されました。

患者会と共同制作
“任せる患者”から“関わる患者”へ
患者会代表の高木健次郎 氏は、食道がん患者が抱える孤立感や情報不足を背景に、患者会設立の経緯を紹介。
現在は、
- YouTubeによる情報発信
- 患者交流会
- 啓発イベント
- 無料冊子配布
- 公式LINE(登録者1,600名超)
などを展開していると説明しました。
さらに今回の手引きでは、「食道がん患者チェックリスト」「食べるためのチェックリスト」などを掲載し、患者自身が治療や生活に主体的に関わるための支援ツールも収載。
高木氏は、「診断直後の混乱の中でも、患者と家族にとって“道しるべ”となる存在を目指した」と語りました。

『患者さんとご家族のための食道がん診療の手引き』について
編 集:日本食道学会
定 価:2,420円(2,200円+税)
発行日:2026年4月1日
ISBN:978-4-307-20508-5
体 裁:A5判・216頁・カラー図数25枚
「食道がん」の標準(=現時点における最良)的な診療について、専門家がわかりやすく解説しました。どんな病気?どんな治療?治療後にどんな生活ができるの?といった疑問や不安に、イラストも用いて丁寧に答えます。また、患者さんの経験をもとに、治療費などについての役立つ情報も盛り込みました。自分や家族が食道がんにかかったとき、正しい知識に基づいた最良の診療を選択し、より良い生活を送るための手引きとなります。

「金原出版株式会社」と「ガイドライン」について
金原出版株式会社は,1875年(明治8年)の創業より医学書の出版および販売を手掛けている会社です。これまでに「医師のための診療ガイドライン」と「患者さんとご家族のための診療ガイドライン」を多数発刊し,医療の発展と,患者様・そのご家族の心の安寧に繋がるように努めています。当社では,「ガイドラインに沿った治療を受ければ良くなったはずなのに,不確かな情報に振り回されて治療の時期を逃し,残念な結果になってしまった」ということが起きないよう,現時点での最適な治療(標準治療)がどのようなものかを正しく知っていただくことが,これから先の治療を考えて決めていく上で,とても大事なことだと考え,ガイドラインを制作・発行しております。