~支援の「前提」を問い直す対話と、子供の行動を「研究者の才能」と翻訳したRAKUGAKIアーティストの言葉に、会場中が涙した温かい一日~

仕切りのない空間で、大人も子供も笑顔に。講演会終了後、熱気冷めやらぬ会場で撮影された集合写真。(2026年1月18日 ビッグ・アイにて)
日本理化学工業株式会社(本社:神奈川県川崎市、代表取締役社長:大山隆久)は、2026年1月18日(日)、大阪府堺市の国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)にて開催された講演会『この子たちが“自慢”になる ~支援の在り方と前提が変わる講演会~』(主催:キットパスつなぎ隊×虹色ぴーすの木)に登壇いたしました。
当日は、親子連れや支援関係者など100名を超える参加者が集結。講演会場と子供たちの遊び場を隔てる「仕切り」を一切設けない空間で、子供たちの声を温かく受け入れながら進行する、まさに「共生社会の縮図」のような時間となりました。以下、当日のプログラム詳細とハイライトをご報告します。
■ プログラムレポート:支援の「前提」が変わる瞬間【オープニング】坂本千賀氏(虹色ぴーすの木 代表)
「社長の覚悟は、私たち親の『逃げられない覚悟』と同じだった」 主催者の坂本氏は、自身の娘が3歳で自閉症と診断された際、絶望で20日間泣き続けたという原体験を語りました。「ある日、娘の満面の可愛い笑顔に気付く。不幸だと思っているのは私。この笑顔を大切にすると決めた」。その笑顔を守りたい一心で走り続けてきました。 しかし、教育現場で20年以上支援に携わる中で、言葉だけが先行し変わらない社会の現実に直面します。そんな時、日本理化学工業の工場見学で目にしたのは、支援員もいない中で社員たちが誇りを持って働く姿でした。 大山社長の『私はこの人たちと一緒に会社をやると決めている』という言葉を聞いた時、それは私たち親が子育てから逃げられない覚悟と同じだと感じ、震えました。今日は、そんな『覚悟』と、困りごとを『現代アート』と捉え直すような新しい視点を皆さんと共有したい」と語り、会場は静かな感動に包まれました。

「弱さも含めて全てがつながっている」と語り合い、会場の共感を呼んだ坂本千賀氏(左)と新宅涼介氏(右)。
【クロストーク】坂本千賀氏 × 新宅涼介氏
「何もできない妹だと思っていた。でも、彼女は多くの人に愛と影響を与えていた」 新宅氏は、自身の妹(5番染色体欠損、5歳下)が2年前に他界した際の経験を語りました。 「重度の障がいがあり、家族や周囲に『迷惑をかけている』『支援される側』としか思っていなかった妹。しかし葬儀には何百人もの人が訪れ、彼女のために涙を流してくれました。その光景を見た時、何もできないように見えても、彼女はこんなにも多くの人に影響を与え、愛されていたのだと気づかされました」と告白。 さらに、かつて自身が職場で受けたパワハラや、やりたくない仕事を我慢していた過去にも触れ、「妹の死が『人生はいつ終わるか分からない。だからやりたいことをやる』という勇気をくれました。辛い経験も含め、全てがつながって今がある」と語りました。 「人は生きているだけで価値がある」--理論ではなく実体験から紡ぎ出された新宅氏の言葉に、会場からは深い共感の拍手が送られました。
【特別講演】大山隆久(日本理化学工業株式会社 代表取締役社長)
「『できない』のではなく『合うやり方がない』だけ。環境を人に合わせれば、誰もが戦力(職人)になれる」

「人間の幸せは、人に必要とされること」--特注の定規(治具)のエピソードを交え、環境を人に合わせる大切さを熱く語る日本理化学工業・大山隆久。
メインプログラムでは、大山隆久が登壇。「社員の約7割が知的障がい者ですが、彼らは守られる対象ではなく、会社を支える『職人』です」と断言。 その背景には、創業家から受け継ぐある信念がありました。「誰かに仕事を教えて、その人ができなかった時、それは彼らの能力不足ではなく『教え方が悪い』と私たちは考えます」。 大山は、数字が苦手な社員のために考案された「色で識別する重り」や「○×で判断できる特注の定規(治具)」の実例を紹介。「マニュアル(環境)に人を合わせるのではなく、その人の理解力に合わせて環境側を変える。そうすれば、彼らは驚異的な集中力を発揮する戦力になります」。 そして講演の最後をこう結びました。「人間の究極の幸せは、人に愛され、必要とされ、『ありがとう』と言われること。働くことは、その幸せを得るためのチケットです。私たちはこれからも、誰もが『ありがとう』と言われる居場所を作っていきます」。
■ 【ワークショップ】「たった1本のキットパス」で描く夢
講演の熱気が冷めやらぬ中、会場では参加者全員によるワークショップ「キットパスで夢を描こう」が行われました。 ツールは、入場特典として一人ひとりが選んだ「好きな色のキットパス」1本のみ。参加者は「絵馬」が印刷された用紙に、それぞれの夢や願いを自由に描きました。 その後、描いた夢を周りの人とシェアし合い、代表者2名が全員の前で発表。「1本のキットパス」がきっかけとなり、初対面の参加者同士が笑顔で夢を語り合う姿は、大山が語った「人が活きる社会」そのものでした。
■ ハイライト:子供の行動を「才能」に変える“翻訳”の瞬間
イベントのクライマックスは、ワークショップの後に行われた、子供たちによる「お絵かきコーナー」の作品発表会でした。 一人の参加者の子供が、一度描いた絵の上から色を塗りつぶし、さらにそれを濡れふきんで拭き取ることで、下の絵柄を浮かび上がらせる独特な表現を行っていました。一般的には「せっかく描いたのに」「汚している」と捉えられかねない行動です。

子供たちの自由な発想が爆発したお絵かきコーナー。「問題行動」に見える瞬間も、視点を変えれば「才能」に変わることを実証しました。
自由に描く子供たち。見守ることでのびのびと描く子供たちの才能に気づかされた私たち。
しかし、ゲストであるRAKUGAKIアーティストであり“わかりづらい子どもの翻訳家佐藤きみあき氏は、その様子を見てこう解説しました。
「この子は、絵を描いているのではありません。色の重なりや、拭き取った時の変化を実験しているのです。彼には『研究者』の才能があります」
この言葉が発せられた瞬間、会場には驚きと共に温かい空気が流れました。「困った行動」に見えることでも、視点(前提)を変えれば「素晴らしい才能」になる--本イベントのテーマである「支援の前提が変わる」が、まさに目の前で実証された瞬間でした。
■ 開催の様子:「静かに聞く」ではなく「共に過ごす」講演会
本イベントでは、講演エリアとお絵かきコーナーの間にパーティション(仕切り)を一切設けませんでした。「子供たちが騒いでも、走っても、それはこの場のBGM」という共通認識のもと、誰もそれを咎めることなく、むしろその活気を感じながら大人が学びを深めるスタイルは、多様な人々が混ざり合う未来の社会像を提示しました。
■ 参加者の声(アンケートより)
「できない」ではなく「活かす」視点に感動 「大山社長のお話から、『できない』ではなく『活かす』という視点がどれほど人の人生を輝かせるのかを痛感し、胸が熱くなりました。子供たちの自由な表現を見て、この子たちには無限の力があると改めて確信しました」(福祉事業所経営者)
手作りの「1本」の重み 「『1本1本、社員さんが手作りしています』と聞いて受け取ったキットパス。誰かが一生懸命作ってくれたんだと思うと、ただの画材ではなく、温かい想いのバトンのように感じました」(参加者)
親としての切実な願い 「20歳を過ぎた発達障がいの息子が家にいます。社会に出ることに強い不安を持っていますが、今日のお話を聞いて希望が見えました。大山社長のような考えを持つ方が増え、日本中に『働きやすい会社』が増えることを強く願います」(保護者)
■ 代表コメント:大山隆久(日本理化学工業株式会社 代表取締役社長)
「子供たちの声がBGMとなるこの空間こそ、私たちが目指す『皆働社会』の原風景です。 『できない』のではなく『合う環境がない』だけ。佐藤きみあきさんが子供の行動を『研究者』と翻訳したように、私たち大人が視点(前提)を変えれば、誰もが社会の戦力になり、幸せに働ける未来が作れる。そう強く確信した一日でした」
■ 主催者コメント
紺 紗実(キットパスつなぎ隊 リーダー)
「この講演会を企画した時、『みんなが笑顔で、あたたかい空間ができたら大成功!』と、イメージしました。 終えてみたら、予想を遥かに超える幸せが会場いっぱいに広がっていました。ご来場者様のあたたかさ、絵を描く子どもたちの笑顔、登壇者の想い、スタッフの心遣い、全てが優しさで溢れていました。これは紛れもなく、私が日本理化学工業の工場で感じた空気そのもの。1本のキットパスに込められた社員さんのエネルギーが大阪まで伝わったのだと感じました。ありがとうございました。」
坂本 千賀(虹色ぴーすの木 代表)
「『この子たちが“自慢”になる』。そう信じて開催した本イベントでしたが、蓋を開けてみれば、ありのままの姿で遊ぶ子供たちが、私たち大人に『そのままでいいんだよ』と教えてくれているようでした。 会場に溢れた笑顔と、大山社長の『覚悟』に触れ、私自身が一番勇気づけられました。この『前提が変わる』体験を、ここ大阪・堺から全国へと広げ、誰もが役割を持って輝ける循環を作っていきたいと思います。」
■ 撮影
フォトグラファー:kayo Nakamura
Instagram:@photo.by.kayo
URL:nakamurakayo.com
■ イベント概要(終了)
イベント名:この子たちが“自慢”になる ~支援の在り方と前提が変わる講演会~
開催日:2026年1月18日(日)
会場:国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)
参加者数:100名超(親子参加含む)
主催:キットパスつなぎ隊 × 虹色ぴーすの木
後援:堺市教育委員会
■ 会社概要
日本理化学工業株式会社
所在地:神奈川県川崎市高津区久地2-15-10
URL:https://www.rikagaku.co.jp/