〈HRダダ〉レポート第六号 無駄な研修だと、もう現場に言わせない。 研修効果を測定し、人を育てるHR へ。【後編】研修の効果を高めるためには、何が求められるのか?
株式会社Maxell's HOIKORO(マクスウェルズ ホイコーロー、代表:前山匡右、本社:大阪府大阪市西区)は、「本当の人的資本経営を実現する唯一のサーベイアプリケーション」を標榜する「TSUISEE(ツイシー)」を提供するスタートアップ企業です。この度、コンサルティングファームの株式会社Consulente HYAKUNENと共同で行ったオンラインイベント「HRダダ」にて公開した「研修効果」の調査内容をレポート化し、その後編部分を公開しました。
「無駄な研修」への違和感 【後編】
HRダダレポートの第六号では、前号に引き続き「研修効果」を特集します。
現場から「無駄だ」と言われる研修だったとしても、経営や人事部の観点から教えなくてはならない内容の研修ならば、それを廃止するわけにはいかず、だからといって、そのままにしておくわけにもいきません。そこで求められるのは、忙しい現場にとって助けになる研修を創り上げること、経営や人事部門として感じる研修の必要性を、「効果」というかたちで具現化することに他なりません。そのためには、研修の効果を説得力あるかたちで明らかにする「効果測定」を行うこと、そして、効果測定に留まらず、「どうすれば研修の効果を高め、無駄ではない研修に変えられるだろうか」という課題に取り組むことです。
このような課題に対しては、私たちに既に馴染み深いPDCAサイクルを活用することが効果的です。PDCAは、1950年代に、アメリカの統計学者であるW・エドワーズ・デミングが、品質管理のために提唱したフレームワークで、プロジェクト・マネジメントや業務改善など、ビジネスにおける様々な分野に応用されてきました。
しかし、人事領域、特に教育研修に関しては、このPDCAサイクルが殆ど機能していないのが実際です。階層別研修や個別テーマによる研修など、企業は多くのカリキュラムを実行していますが、その効果を測定せず、やりっ放し状態になっている企業も未だに多くみられます。研修実施後に自作のアンケートを行い、次に活かそうとはしているけれど、参加者の感想や要望を集める程度のことしかできない。結果、研修効果は分からぬまま、なんとなく研修を続けている・・・といったケースも多いのではないでしょうか。せっかくの人材への投資は、その願いとは裏腹に、モヤモヤとした違和感をぬぐえぬまま、惰性で繰り返されていってしまうのです。
前回のHRダダレポート第五号のテーマは、PDCAのCheck(評価)に焦点を置いたものでした。そこでは、「研修内容に満足したか」といった質問によって、研修が持つ本来の強みを測定することはできず、研修の効果を正しく測定するために何が必要なのかをしっかりと理解することの重要性を詳述しました。ここで研修の効果を正しく測定せず、うわべの研修満足度を測定してしまうことをCheckと称するならば、私たちは更に別の問題を抱えることになってしまいます。
例えば、ある研修において「満足度が低かった」というアンケート結果が得られたとします。しかし、そのデータ自体からは、何をどうすればよいかのヒントを得ることはできません。具体的な改善点が分からないのですから、感覚や経験で対応するしか仕方ありません。「体験型の研修が流行っているので、採り入れてみよう」「大手の研修会社が進めることなので、一度やってみるか」等、大味で行き当たりばったりなActionを取る以外に方法はないのです。場合によっては、「参加者側にも問題がある」といった議論の下で、事実上アンケート結果が無視されることで「その研修を継続する」という、実際には何もしないという「Action」が選択されるかもしれません。
いずれにしても、これらの「PDCA」は、デミングが想定したような、「実行(Do)の結果を振り返りながらパフォーマンスに影響を与える要因を丹念に検討(Check)することで改善に繋げる(Action)」というPDCAとは全く異なるものなのです。
では、正しい効果測定に基づくActionとは、いかなるActionなのでしょうか?今回のレポートでは、この問いについて、議論しています。
〈HRダダ〉レポート第六号「研修効果」【後編】
研修の効果を高めるためには、何が求められるのか?
現場から離れた場で学ぶ研修という形式が持つ意義や強みとは、まさに現場では学べない、もしくは日々働く中ではあえて学ぼうとすら思わない内容を教えることにあります。それは、中長期的な視点の下では学ぶことが必要だけれども、明日すぐには役に立たないような学び、例えば、これからの企業戦略を支えていくようなコンピテンシーやモノの見方を獲得すること等が、その目的になります。
「中長期的には決定的に重要だけれども、誰にでも分かり易いかたちで明日から使えるものではない」ことを教えるところに、Off-JTである研修が競争優位の源泉である「人づくり」の中心に君臨する所以があります。
だからこそ、研修を通して、「学んだことを応用すれば現場で評価される」といった外発的な動機を高めることや、「学んだ内容を現場で応用できる自信がある」といったエフィカシーを高めることは容易ではないのです。現場から離れた研修が、誰でも「簡単に」「分かり易く」「すぐ使える」ものを教えるものではないのですから、これは当然のことでしょう。
実際、私たちの行った調査においても、外発的な動機とエフィカシーの2つの要素は研修効果を高める上で決定的に重要であるにもかかわらず、多くの研修において低い水準にあるというデータが示されました。
だからといって、今すぐ簡単に応用でき評価されるようなスキルや知識を教える研修に置き換えることは、「現場で自主的に“学ぼうとしないこと”を教える」という研修が持つ強みを捨てることを意味するため、本末転倒な対応になってしまいます。
研修が本質的に抱えているこのような課題に対して、研修デザインや教え方等を変えることを通して、研修の中で対応するという方法がまずは重要です。しかし、様々な既存研究で明らかになってきたのは、研修効果を高める上では研修外の要素が大きな役割を担うという事実です。具体的には、上司や先輩といった、研修参加者を取り巻く現場の環境が、研修効果に大きな影響を与えるのです。
本レポートでは、まず、研修効果に関する近年の実証研究の成果を紹介しながら、研修外の要素が持つ影響について議論していきます。その上で、前述した外発的動機とエフィカシーが低くなってしまうという、研修がその性質上不可避に抱える問題が、研修外部の要素である上司や先輩などのサポートの在り方を整えることによって対応できることを、私たちが行った大規模調査の結果をもとに示しています。
ここでは詳述できませんが、レポート本編では、研修の効果に影響を与える研修外の要素に注目し、議論を進めています。今回のHRダダレポート第六号は、下記のURLよりダウンロード可能です。
ぜひご参照ください。
【レポートのダウンロードはこちらから】
https://tsuisee.com/report/
株式会社Maxwell’s HOIKORO
Chief Development Officer
武蔵野大学 経営学部経営学科准教授
宍戸 拓人
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