映像学部「映画制作論」成果作品『嵐電界隈 人もよう』上映について
映像学部の「映画制作論」(※1)を受講した学生が、家族をテーマに扱ったオムニバス映画『嵐電界隈 人もよう』(※2)を制作しました。
映像学部では、日本を代表する映画監督の一人である中島貞夫氏を2011年度より客員教授として招き、「映画制作論」を立ち上げました。本講義では、中島監督の指導のもと、各年毎に受講学生約10名が主体となり、実践的な企画立案からシナリオ制作、講義終了後に撮影を行い、4年かけて計5本の短編作品を制作しました。今回はその中から、家族をテーマとする作品3本をまとめ、一本の作品として公開します。立命館大学映像学部の学生が描くオムニバスヒューマンドラマの第2弾です。
映画は、優しい両親に見守られ、何不自由ない生活を過ごしている女子高生に突きつけられた“家族”を描いた『見えない繋がり』、強制退去を余儀なくされた3人のホームレスと彼らの担当者である市役所員のそれぞれの“家族”を描いた『オーブラザー』、下町で酒屋を営む“家族”の絆を描いた『こたつ』の3本で構成されています。作品は、現代の学生たちが抱く、人と人とのつながりに対する主張を、嵐電沿線で繰り広げられる人間模様に照らして表現しています。ナレーションには、俳優・内藤剛志さんのご協力をいただいています。
本作品は下記の日程で上映を予定しています。
記
【京都会場】
会 期:2015年11月7日(土)・8日(日) 18:45開場 19:20開演
場 所:MOVIX京都 シアター6(京都市中京区新京極三条下ル桜之町400番)
スケジュール:13:00 MOVIX京都内 専用ブースで入場券配付開始(先着順)
18:45 開場/19:20 開演/21:20 上映終了予定
【東京会場】
会 期:2015年11月14日(土)・15日(日) 14:00開場 14:15開演
場 所:秋葉原UDX THEATER(東京都千代田区外神田4-14-1 4階)
スケジュール:14:00 開場/14:15 開演/16:25 上映終了予定
入場料:無料
申込み:不要 ※先着順(満席の場合、ご入場いただけないことがあります。)
主 催:立命館大学映像学部
協 力:京福電気鉄道株式会社、株式会社松竹撮影所
(※1)「映画制作論」について
2011年度からスタートした映像学部特殊講義。2011年度に客員教授に着任した中島貞夫監督の指導のもと、映画制作のために必要な準備作業を習得、プロジェクトを実行できる人間性の育成を目的に、「映画制作のために何が必要か」をテーマに置き、特に準備段階を中心にシナリオ制作など実践的な作業を行う。講義終了後の春期休暇中には、準備を進めた映画の制作を行う。
特徴としては、受講生たちが社会に対して感じている感情を追求させてテーマを生み出している点、それを映画化する際に安易な作業ではなく徹底した調査や準備をおこなう点、さらに映画の基礎文法に沿った表現手段を意識する点などが挙げられる。
中島貞夫(なかじまさだお)氏 プロフィール
映画監督・脚本家。1934年8月8日生まれ。千葉県出身。1959年東大卒。同年東映に入社。
1964年「くノ一忍法」で監督デビュー。その後、現代劇・時代劇問わず多種多様な作品を世に送り出してきた。
2001年に京都市文化功労賞、2002年に京都府文化賞功労賞を受賞。京都映画祭総合プロデューサーも務める。
(※2)『嵐電界隈 人もよう』について (全116分間)
京都で100年以上の歴史をもつ嵐電(京福電鉄)を基軸に、「家族」をテーマに展開される3つの物語をまとめたオムニバス映画。それぞれ繰り広げられる人間模様を通して、学生から見た家族のあり方を表現。嵐電の声役を内藤剛志氏が務める。
1.「見えない繋がり」(2013年4月/45分間)
■監督:高崎信久(映像学部4回生)
料理上手の父、尚治。気の強い母、真希。この2人を両親にもつ高校生のゆり。優しい両親に見守られ、友達にも恵まれて何不自由ない生活を過ごしていた。ゆりの趣味は幼い頃、父から譲り受けたフィルムカメラで写真を撮ること。ある日、フィルムを探しているとあるものを見つけてしまう。これによって、ゆりの日常は一変してしまうのであった。家族とはなにか、人との関わり方をサスペンス調で描く物語。
--【作品の背景】------------------------------------------------------------------------
離婚、貧困、育児放棄、DVといった家庭問題が世の中に当然の如く溢れている。その当事者の方々は、人との繋がりに今日も苦しんでいる。しかし、それを自分たちとは違う、遠い存在であるとして目を向けようとしない人もたくさんいる。この物語は、それまで当たり前だと信じて疑わなかったものが崩れていく様を描いている。本作品を通じて、広い視野で世の中の様々な人の繋がりに目を向け、思いを巡らすきっかけになれば幸いだ。
2.「オーブラザー」(2012年4月/25分間)
■監督:野中淳(映像学部2013年3月卒)
鴨川の橋架下に住むホームレスの平川、田内、石田は、市役所職員・正治から、立ち退き勧告をつきつけられる。3人は嵐電を使って、引越しを行うが・・・強制退去を余儀なくされ、それぞれの忘れられない過去と未来への不安を交錯させた3人のホームレスと彼らの担当者である市役所員の心の交流を描く電車ムービー。
--【作品の背景】------------------------------------------------------------------------
嵐電の車窓から見える住み慣れた町並みやそこに住む人々の景色を見て、大学卒業を次年度に控えた監督の野中淳が、京都を離れることへ想いを馳せたことが「人とのつながりを忘れられずに生きる」というテーマに行き着くきっかけとなった。住む家を失ってもなおその土地に留まり、家族とのつながりを捨てきれないホームレスが強制退去を命じられ、過去と向き合う中で心の中が変化していく様を通して、故郷を離れ生活している人々に家族の大切さを思い出し、そのつながりとどう向き合い進んで行くかを伝えたいと考えた。
3.「こたつ」(2014年6月/45分間)
■監督:中島悠作(映像学部3回生)
とある下町に小田家は父の宗幸、母の蓉子、長男の昌平の三人で暮らしている。宗幸と蓉子は家業である酒屋を切り盛りしている。昌平は高校に通っているが学校生活全般に馴染めず、息苦しい毎日を過ごしている。祖父の死をきっかけに上京していた長女、文子が帰省してくる。しかし、法要を終えても文子は留まったまま。理由を話さない文子に苛立つ昌平。やがてある問題が発生する。
--【作品の背景】------------------------------------------------------------------------
この社会において社会的地位に縛られず、何があっても味方であるまたは味方になれる存在は何かと考えた。そこで思いついたのが家族という一つの共同体であった。そこで本作品では社会的には問題であるニートの長女を抱えてしまった家庭の崩壊と再生を弟の視点で現代社会における家族のあるべき形を考え成長する作品である。この家族に対して学生が今考える家族の在り方を描く。
【映画制作の流れ】
「映画制作論」受講学生が、企画立案、シナリオ作成、オーディションによる俳優の選定、ロケ地の確、演技指導、撮影、編集、宣伝活動など、映画制作に関わるありとあらゆることに取り組んだ。2011年度に2本、2012~2014年度に各1本ずつの短編作品を制作し、今回3作品を「嵐電界隈、人もよう」というオムニバス映画にまとめた。
中島監督には、脚本執筆や撮影場所の選定、美術などの装飾品の飾り方、俳優への事前演技指導など被写体を深めていく作業、編集方法などを中心に指導いただいた。
※主な取材先およびロケ地
<取材先>
『見えない繋がり』
りんくう総合センター 広域母子医療センター長 産婦人科部長 萩田和秀様
→医療関係資料、母子手帳についての書き方についての取材。
『オーブラザー』
京都市役所
→河川敷での不法占拠者に対する対応と、市役所員の服装について取材。
『こたつ』
小田政酒店と柏木産婦人科
<主なロケ地>
『見えない繋がり』
立命館高校、京都西郵便局、京都芸術高校、(主人公の自宅は立命館大学松竹スタジオ)
『オーブラザー』
嵐電車内、嵐電沿線(四条大宮駅、嵐山駅)
『こたつ』
小田政酒店、柏木産婦人科、(主人公の自宅は立命館大学松竹スタジオ)
【映画を通して伝えたいこと】
「家族」とは私たちにとって最も身近な存在です。そんな「家族」には様々な形があり、正解はありません。制作者である私たちは、私たちが考える「家族」を何度も話し合い、答えを見出すのではなく、「家族のつながり」を映画として描くことにしました。私たちが描いた「家族」を見て、観客の皆さんにも改めてご自身と家族とのつながりを感じて頂けると幸いです。