―原料・燃料・食料の高速バイオ生産に繋がる新触媒技術―
大阪大学大学院基礎工学研究科の大学院生の田畑裕さん(博士後期課程3年)および同附属太陽エネルギー化学研究センターの中西周次教授らの研究グループは、産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 環境生物機能開発研究グループの加藤創一郎上級主任研究員および株式会社豊田中央研究所の長谷陽子主任研究員(太陽エネルギー化学研究センター特任教授を併任)らとの共同研究により、“生物が食べられる糖”を中性条件下で化学合成する触媒プロセスの構築に世界で初めて成功しました。
グルコースやフルクトースなどの糖は、人類の食料生産を支える基幹物質として、また化学品のバイオ生産技術における基質として極めて重要です。一般に、糖は水とCO2を原料として光合成によって作られます。しかし、光合成、つまり農業によって糖を大量生産するには、多くの水と栄養塩(リン、窒素など)ならびに大面積の土地が必要であるため、プラネタリー・バウンダリー※1の観点から、その供給の持続可能性に懸念が持たれています。
今回、研究グループは、タングステン酸ナトリウムなどの金属オキソ酸※2塩が中性条件下における糖の合成触媒として機能することを見いだしました。そして、化学合成された糖が微生物により資化されること、すなわち生物が食べることができ、またバイオ生産における原料として利用可能であることが示されました。糖の化学合成は、光合成と比較して少なくとも数百倍と高速であり、水や栄養塩もほとんど必要としません。したがって将来的には、本技術がCO2を原料として“生物が食べられる”糖を高速・オンサイト生産可能なシステムへと発展し、環境調和性の高いバイオ生産技術の一層の拡大に貢献することが期待されます。
本研究成果は、英国王立化学会が発行する Chemical Science 誌への掲載に先立ち、Accepted Manuscript として2023年10 月 9 日に公開されました。
DOI:https://doi.org/10.1039/D3SC03377E
ポイント
・糖は全ての生命の活動を支える物質で、化学品等のバイオ生産技術においても極めて重要だが、光合成による糖の大量生産はその持続可能性に課題があった
・開発した触媒プロセスをもとに、光合成の機能を代替する可食糖を中性条件下で化学合成することに成功した
・糖の高速・オンサイト生産が可能なシステムの実現により、バイオ生産技術の一層の拡大への貢献が期待される
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https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2023/pr20231108/pr20231108.html