障がいのある人と健常者が共にアート鑑賞を楽しめる横浜の2月、3月のアート・イベントを紹介します。
横浜は芸術分野でもノーマライゼーション(障がいの有無にかかわらず誰もが等しく生活できる社会実現)に取り組んでいます。
今年15回目を迎える横浜能楽堂「バリアフリー能」。大臣表彰優良賞を受賞
障がいのある方もない方も一緒に能・狂言を楽しんでもらおうと、平成12年から始まった「バリアフリー能」。
解説時の手話通訳、点字パンフレット、副音声など、公演鑑賞時のはからいだけでなく、事前の施設見学会、市内の障がい者団体からのフィードバック、公演終了後の意見交換会などを実施し、障がいのある方の生の声を取り入れることで、回を重ねるとともに、さまざまなサポートの試みがなされてきました。
その取り組みが評価され、横浜能楽堂は平成27年度のバリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰の「内閣府特命担当大臣表彰優良賞」を受賞しました。
今年は、昨年から実験導入している、特に聴覚障がいの方を対象とした字幕配信用のメガネ型ウェアラブル端末を、座席限定ではなく見所(客席)全体で試行することになっています(端末は限定20台、予約制)。
この試みは、昨年まで客席後方に限定していた字幕席を利用した聴覚障がいの方の「演者の口の動きを近くで見たい」という意見から生まれたものです。
それらの意見を反映して「バリアフリー能」は、「共生社会」の実現を目指し、多く人々が楽しめる理想のかたちに年々近づこうとしています。
[表1: http://prtimes.jp/data/corp/14302/table/65_1.jpg ]
みんなで一緒に作品を語る。「アートなピクニック」at 横浜市民ギャラリーあざみ野
視覚に障がいのある人とない人が一緒にアート作品や写真を鑑賞するこのイベントは、企画展の関連イベントとして定着し、すでに10回ほど開催されています。
今年も1月30日からの「あざみ野フォト・アニュアル 考えたときには、もう目の前にはない 石川竜一 展」で実施されます。
まず学芸員が展覧会の説明をした後、参加者たちがグループとなって自由に作品を鑑賞していきます。
晴眼者が作品について説明し、視覚障がいのある人が質問して、お互いに意見を述べる…。
考えていることを全て言葉に置き換えること、他の人の意見や思いをくみ取ること、想像力に訴える表現を探すことなど「伝える」ことに集中する時間はとても濃密だと参加者は語ります。
活発に意見が交わされるにつれ、「見えていても、見えないこと」「見えなくても、見えること」があると、感じ方には境界線がないことに気づいた、という人もいました。
視覚障がいのある人からは、作品や他の鑑賞者との語らいを楽しみ、施設、そして作家にもメッセージや希望を伝えることのできるいい機会だとの感想が寄せられています。
ノーマライゼーションの実現には「コミュニケーションと相手に寄り添う想像力」が大切なことなのだと実感できる貴重なイベントです。