材料開発プロセスの暗黙知をAIで構造化、先端モノづくり領域のバリューアップへ
「カスタムAI開発」を展開する株式会社Laboro.AI(ラボロエーアイ、東京都中央区、代表取締役CEO椎橋徹夫・代表取締役COO藤原弘将。以下、当社)は、銅ペースト※1をはじめとする導電性ペーストの研究・開発・製造を手がける株式会社マテリアル・コンセプト(宮城県仙台市、代表取締役 小池美穂。以下、マテリアル・コンセプト)への出資および業務提携契約の締結を決定したことをお知らせいたします。
本件は、当社が今後の注力領域として強化している、半導体産業をはじめとする先端モノづくり領域での取り組みに位置付けられるものであり、同社の導電性ペースト事業における開発・評価・量産プロセスに当社のAI技術を統合・導入することで、製品開発スピードの向上、顧客要求仕様への即応性強化、および生産工程の自動化・自律化の実現に向けて協働してまいります。合わせて、本取り組みにおいては、AIプロジェクトを推進するための当社独自のメソッド「ソリューションデザイン」のノウハウを集約したAIエージェント技術基盤を活用し、開発を通じて得られたフィードバックをこの技術基盤の更なる機能改善に生かすことも、当社として取り組んでまいります。
なお当社では、2026年10月1日、「第2の創業期」としての成長戦略をご説明する、中期経営計画説明会を予定しており、本件を含めた今後の展開を発表する予定です。

※1 太陽電池セルや電子機器の配線・電極を形成するために用いる、銅の粉末を樹脂・溶剤等と混合した材料。
背景
先端モノづくり領域では各工程でAIの導入が進む一方、各社の競争力の源泉は、汎用ツールが知り得ない企業固有の技術知見に集約される状況にあります。とくに半導体開発にも用いられる導電性ペーストをはじめとした材料開発の分野は、原料の配合量や焼成※2 条件といった極めて多数のパラメータが複雑に絡み合う領域です。マテリアル・コンセプトではこれまで膨大な実験・評価データや顧客の要求仕様に応じた導電性ペーストの作り込みに関する優れたノウハウを蓄積してきた一方、その物理現象の複雑さから、そのノウハウは熟練のエンジニアの暗黙知となり、モデル化や現場における測定・製造データの構造化が課題となっていました。こうした領域では、汎用的なAIツールの適用が難しく、企業固有の知見を前提としたカスタムAI開発が価値を発揮しやすい領域であることを示しています。
当社はこれまで、オーダーメイド型の「カスタムAI」の開発・提供を通じて企業固有のデータやノウハウをベースとしたAI開発に注力してきており、直近ではその知見を集約するためのAIエージェント技術基盤の開発に取り組んでいます。さらに、半導体産業をはじめとした先端モノづくり領域を今後の注力領域の一つとして位置付け、2026年9月4日には、半導体を中心とするエレクトロニクス製造サプライチェーンの国際工業会であるSEMIへの入会を発表いたしました※3。
当社は、保有するこれらのノウハウや技術基盤を活用し、熟練者の暗黙知を「モノづくりを動かす知能」へと高め、プロセスの最適化や製品開発サイクルの短縮といった価値創出に貢献するとともに、産業のキープレイヤーとなることを目指しているところです。

※2 塗布したペーストを加熱し、導電性を持つ配線・電極を形成する工程。
※3 2026年9月4日発表、「Laboro.AI、半導体の国際業界団体「SEMI」に入会。先端モノづくり領域での取り組みを強化」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000073.000027192.html
マテリアル・コンセプトについて
半導体や太陽電池セルなどの電子機器の配線・電極の形成には、現在、銀(Ag)を主成分とするペーストが主に使用されています。同社調べによれば、銀ペーストは材料コストの約3割を占め、価格変動も生じやすいことから、その代替は長年の課題とされてきました。一方、銅(Cu)は、銀とほぼ同等の導電性を持ちながら原料コストが大幅に低い材料であるものの、銅原子がシリコン中に拡散することで太陽電池セルの特性に影響を与えること、また、焼成の過程で銅が酸化して抵抗値が高まること、この二つの課題により、置き換えによる実用化は長年にわたり実現されてきませんでした。
マテリアル・コンセプトは、東北大学大学院工学研究科の研究成果を基盤に、シリコンウェハーと銅配線の間に拡散バリア層※4を形成する技術と、酸化を抑制する焼成条件を確立し、配線・電極形成用の銅ペーストの量産化に世界で初めて成功しています(2018年「大学発ベンチャー表彰2018」文部科学大臣賞受賞、2019年「J-Startup」選定)。マテリアル・コンセプトが保有する技術は、素材自体を置き換えることでコスト構造そのものに働きかけるものであり、現在は半導体・太陽光パネルの各メーカーに向けて顧客の要求仕様に応じた配合量や焼成条件を個別に調整しながら製品を供給し、銅以外の金属を用いた導電性ペーストへの展開も進めています。
※4 銅原子がシリコン中へ拡散することを防ぐために、両者の間に設ける層。
想定される協業内容とシナジー
本出資および業務提携を通じて、以下の3点を軸に協業を進める予定です。
1. 導電性ペースト製造のための材料配合レシピの最適化と開発・評価サイクルの短縮
製造プロセスや配合パラメータの最適化および品質・再現性の向上のためのAIモデルを構築し、プロセス条件と得られた特性データを構造化して蓄積し、当社の技術基盤上で条件探索を支援することで、実験の反復に依存してきた探索の一部をAIが担い、顧客の要求仕様に対する即応性を強化することを目指します。また、事業状況に応じては、同社が現在注力している太陽電池やパワー半導体領域にとどまらず、エレクトロニクス領域における多様な基板素材や異なる仕様に応じた新用途・新ラインナップへの展開を目指します。
2. フィジカルAIによる実験・製造プロセスの自動化・自律化
AIによる条件探索の成果を、物理空間での実行にまで接続していく取り組みとして、開発段階における実験・評価作業の自動化を起点に、量産立ち上げ時の製造プロセスの自動化・自律化へ展開するためのロボット・センサー等の導入に向けた戦略ロードマップを策定し、PoCを実施いたします。
3. 暗黙知の構造化と当社技術基盤の機能改善
技術者の判断の前提にある概念とその関係をオントロジー※5として整理することで、これまで言語化されてこなかった暗黙知をAIが参照・再利用できる形へと構造化する試みを実施し、ここで得られた汎用的なノウハウを当社の技術基盤のナレッジとして蓄積し、半導体をはじめとする他の先端モノづくり領域へも拡張展開することを目指します。
※5 概念や知識の構造を、コンピュータが扱える形で表現したもの。
本出資および業務提携の概要
出 資 先:株式会社マテリアル・コンセプト
取得価額:100百万円
所有株式数:304株(議決権の数:304個、議決権所有割合:5.7%)
契約締結日:2026年9月29日
株式譲渡実行日:2026年9月30日
業績への影響:本件に伴う事業開始日は2026年10月1日を予定しており、当社の2026年9月期連結業績に与える影響は軽微です。また、2027年9月期連結業績に与える影響につきましても軽微と見込んでおりますが、今後開示すべき事項が発生した場合には速やかにお知らせいたします。
提携期間:2年間(契約締結日より)
出資の意義・今後の展望
今般、単一プロジェクトではなく資本参加を伴う協業という形を選択した背景としては、次の二つの考えに基づいています。
第一に、先端モノづくり領域での成果創出は、実験・製造現場にどれだけ深く踏み込めるかに左右され、技術の確立から社会実装までの期間が長く、技術開発と事業設計を同時に進める伴走体制を必要とすることから、長期的に関与できる資本関係がより適した形態であると判断いたしました。
第二には、当社の事業モデルの拡張を目指したものです。これまで当社の事業はクライアント企業から個別プロジェクト対価を得るビジネスモデルで成り立っていましたが、出資やM&Aを通じて対象企業の事業成長の不確実性のリスクを当社自らも負いつつ、企業価値の向上から得られる果実を共創パートナーと当社の間で分かち合う枠組みを作ることを目指しています。今回の資本参加はその先駆け的な取り組みと言えます。本件を機に、今後も出資やM&A等の資本戦略を活用し、産業の本質的な価値向上に関わる取り組みを増やしていくことを目指してまいります。
なお、協業の具体的な取り組みや成果については、今後、両社共同で順次発表してまいります。
代表者コメント
<株式会社Laboro.AI 代表取締役CEO 椎橋徹夫>
「マテリアル・コンセプトが研究と事業を通じて培ってきた独自の材料開発技術には、先端モノづくり領域の可能性を大きく広げる力があると考えています。その技術と当社のAI技術を掛け合わせ、導電性ペーストの開発・評価の高度化を起点に、顧客の要求に応えるスピードを高め、新たな用途や市場の開拓につなげていくことが、私たちの目指す姿です。今回の資本参加には、技術開発から事業の成長まで長期的に関わり、挑戦と成果を共にするパートナーでありたいという意思を込めています。両社の専門家が実験・製造の現場で協働し、技術の進歩を製品の競争力と事業の成長へと結び付けてまいります。さらに、この協業で磨くAI活用の方法論を当社の技術基盤に蓄積し、より多くの企業が自らの強みをAIで伸ばせる仕組みへと育てていきます。本提携を、AIによって企業・産業の価値を継続的に高める、当社の「第2の創業期」を象徴する一歩にしてまいります。」
<株式会社マテリアル・コンセプト 代表取締役CEO 小池美穂>
「このたび、Laboro.AIを新たなパートナーとして迎え、資本・業務提携を開始できることを大変心強く感じています。当社は、銅ペーストをはじめとする導電性材料の実用化を通じて、半導体や太陽電池などの産業が抱えるコストと性能の課題に向き合ってきました。今回の協業により、当社が蓄積してきた技術・データとLaboro.AIのAI開発力を結び付け、開発から量産までのスピードと確実性を高めてまいります。両社の強みを生かし、顧客価値の向上と新市場の創出につながる事業成長を実現してまいります。」
<株式会社マテリアル・コンセプト 取締役CTO 小池淳一>
「材料開発では、組成、製造条件、評価結果の間に複雑な関係があり、技術者の経験や判断が開発成果を大きく左右します。マテリアル・コンセプトには、金属の酸化や拡散を制御し、導電性と信頼性を両立させてきた実験データと技術的知見があります。Laboro.AIとの協業を通じて、これらの知見を科学的な理解に基づいて構造化し、AIによる条件探索と実験・評価を有機的に結び付けることで、開発の精度と速度を高めたいと考えています。さらに、技術者の創造性を生かしながら、材料開発から量産に至る各段階での新しい方法論を構築してまいります。」
参考情報
■株式会社マテリアル・コンセプト 会社概要
会 社 名:株式会社マテリアル・コンセプト
所 在 地:〒980-8572 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉468-1-201 マテリアル・イノベーション・センター
代 表 者:代表取締役CEO 小池美穂
設 立:2013年4月
事業内容:銅ペーストおよび新電極材料の研究・開発・製造・販売
U R L : https://www.mat-concept.com/
■株式会社Laboro.AI 会社概要
会 社 名:株式会社Laboro.AI(ラボロ エーアイ)
所 在 地:〒104-0061 東京都中央区銀座八丁目11-1
代 表 者:代表取締役CEO 椎橋徹夫
代表取締役COO 藤原弘将
設 立:2016年4月1日
事業内容:機械学習を活用したオーダーメイド型AI『カスタムAI』の開発
カスタムAI導入のためのコンサルティング
U R L : https://laboro.ai/
株式会社Laboro.AIは、「すべての産業の新たな姿をつくる。」「テクノロジーとビジネスを、つなぐ。」をミッションに掲げ、AIによる新しいビジネス施策展開によって企業成長を図る「バリューアップ型AIテーマ」に効くオーダーメイド型AI開発「カスタムAI」を展開する、国内有数のAIスペシャリスト集団です。