― テクノロジーとの向き合い方から見えた生産性向上の本質 ―

株式会社TRAPE(本社:大阪府大阪市、代表取締役:鎌田大啓)は、横浜市から受託した「令和7年度 横浜市介護事業所業務改善支援事業」において、市内8つの介護事業所に対する伴走支援を実施しました 。
「いつもバタバタしている」「業務に追われてケアに向き合えない」「新しいテクノロジーを導入したが使われない」
本事業の伴走支援では、そんな介護現場の切実な声に対し、外部からいきなり解決策を押し付けるようなことはしていません。
今回何よりも重んじたのは「現場の主体性」です。支援が終わった後も、現場が自律して改善を続けられる組織になることを目指し、現場の職員全員で「対話」を重ね、課題と解決策を導き出し、チーム一丸となって取り組みを実践してもらいました。
その結果、残業時間の削減や休憩時間の確保などの「職員の負担軽減」だけでなく、「新規利用者の受け入れ増加」や「ケアの時間の創出」といった、利用者と職員双方のウェルビーイングを大きく向上させる成果が、現場の方々自身の力によって生み出されました。本事業で介護現場の皆さんが自ら切り拓いた、リアルな変化をお伝えします。
本事業で大切にしたこと
超高齢社会を迎え、介護人材の不足が叫ばれる中、「生産性向上」や「ICT化」が急務とされています。しかし、現場からは「介護ソフトを導入したけれど、結局紙と二重記録になっている」「インカムはあるけれど誰も使っていない」「日々の業務に追われすぎて、改善策を話し合う時間すらない」といった悲鳴が上がっています 。
実は、介護現場の本当の課題は、テクノロジーを導入していないことではなく、「職員同士が現状の課題を共有し、同じ方向を向いて解決策を考える“準備”がないこと」にあります。つまり、テクノロジーを導入する前に「現場が自ら変わるための土台づくり」が必要不可欠なのです。
そこで本事業では、横浜市の介護事業所の中から8事業所のモデル事業所を選定し、単なる機器導入にとどまらない、ICT機器や介護ロボットの活用、介護助手の活用、多様な働き方の推進等を通じた本質的な生産性向上の取り組み支援を実施しました。
さらに、本事業の活動内容や成果についてSNSや成果報告会等を通じて横浜市の介護事業所に発信することで、介護事業所における生産性向上の取り組みへの理解促進を図り、その取り組みを拡大・推進しました。
現場のリアルな変化を生んだ事例紹介 (一部)
事例1:【訪問介護】「もう新規は受けられない…」からの脱却!記録の“ムダ”をなくし、売上増と対話の時間を創出
【現場の課題】
訪問記録を「紙」と「介護ソフト」で重複して記入しており、さらに「余分な記録をしてしまっている」等、記録内容自体に無駄があった。その結果、1人あたり1日平均51分も記録に時間がかかっており、時間的な余裕がなく新規の利用依頼を断らざるを得ない状況であった。
【アプローチ】
できる限り介護ソフトへの入力に一本化し、敬遠されがちだった「スマートフォンの音声入力」の活用をチーム全員で実践。記録の書き方のルール(事実のみを簡潔に)も対話を通じて再定義した。
【生まれた変化】
記録時間が1人あたり1日12分へと大幅に削減(39分の減少)。生まれた時間で職員間の対話が18分から44分へと26分増加した。さらに新規利用者の受け入れが可能となり、利用者数は19人から24人へ、訪問件数も月286件から341件へと右肩上がりの増加を実現し、事業所の売上向上にもつながった。

事例2:【老健】「コール対応の重複」と「バラバラな動き」を解消!マスターラインとインカムで生まれた“チームの一体感”
【現場の課題】
1日の業務の流れや役割分担が不明確で、職員によって優先順位がバラバラになっていた。結果として動きが非効率になり、コール対応に複数の職員が向かってしまうなどの無駄が生じていた。
【アプローチ】
1日全体の業務の流れと役割分担を明確にした「マスターライン」を、現場リーダーの叩き台をもとに全員の意見を踏まえて作成。さらに、インカムを導入し、コール対応時などの使用ルールを明確化した。
【生まれた変化】
インカムを活用した連携により、「コール対応が他職員と重なる回数」が37%減少し、「コール対応の役割分担が明確だ」という感覚も82%増加した。インカムでリアルタイムに繋がることで、「全員で業務を行っている」というチームの一体感が生まれ、働きやすさと働きがいが大きく向上した(ほぼ全ての職員が向上を実感)。

事例3:【通所リハ】「お風呂のバタバタ」を誘導表とトランシーバーで解消!利用者が安心して声をかけられる空間へ
【現場の課題】
入浴業務において、誘導の順番や役割が不明確なため常にバタバタしていた。また、職員が浴室とフロアを行き来しており、利用者が職員に声をかけづらい環境であった。
【アプローチ】
これまで曖昧だった「誘導担当」を明確にし、順番や準備を効率化する「誘導表」を作成した。また、浴室とフロアの職員がトランシーバーを携帯し、持ち場を離れずに連携をとるルールを運用した。 【生まれた変化】
トランシーバーにより「他職員を呼びに行く回数」が28%減少。無駄な移動が減ったことで入浴のバタバタ感が解消され、「利用者のペースで過ごしやすくなった」と回答する職員が26%増加した。利用者が自分のペースで過ごしやすく、気軽に職員に声をかけられる穏やかな環境へと生まれ変わった。

モデル事業所の経営層の声

エヌアイ在宅サービスステーション
事務長 嶋野 由美子様
今回、横浜市の伴走支援に応募したのは、日々の業務の中で当たり前になっている作業を一度立ち止まって見直し、私たち自身が気づけていない課題を明らかにしたいと考えたからです。
実際に取り組んでみると、現場の声を中心に改善が進み、記録時間の短縮によってケアに向き合う時間が増えるという大きな変化が生まれました。これは現場にとっても経営にとっても価値のある成果でした。
今回の取り組みを通して、職員一人ひとりが「より良くするにはどうすればよいか」を考える姿勢が育ち、意識改革が進んだことも大きな成果だと感じています。この伴走支援は、今後の業務改善に向けた確かな一歩となり、このような機会をいただけたことに心から感謝しています。

介護老人保健施設こもれび
事務次長 小林 照幸様
当施設ではこれまで生産性向上の委員会を立ち上げ現場主導の改善を推進してきましたが、既存の視点や慣習に縛られた自力での活動は、日々の多忙さに呑まれやすく、客観的な指標に基づいた持続的な改善サイクルを確立することに限界を感じていました。
今回、横浜市の伴走支援を得て、全フロア共通の難所である「入浴業務」に挑んだことは、施設全体にとって極めて意義深い経験となりました。「準備が8割」という助言に基づき、多忙な業務の中でも立ち止まり、対話を重ねた現場の姿勢は高く評価できます。結果として、職員の欠員等の厳しい局面においても、誘導表の活用等で利用者満足度の向上という成果を導き出しました。
今回得た「改善の手応え」を停滞させず、さらなる波及効果を目指し、現場職員の意見を正しく吸収し、施設全体として全力でバックアップしていきます。

特別養護老人ホーム みなもの桜
施設長 水越 洋二様
当施設は見守り機器やインカムなどのICT機器を法人内でも先駆的に導入し、入居者の皆様が安心して穏やかに生活できる環境づくりに取り組んできました。
しかし、日々の業務を進めることに追われ、ICT機器を活用する本来の目的や意義を十分に意識できていない面もありました。その結果、業務改善や入居者の生活の質の向上につなげる視点が十分ではなかったと感じています。
こうした状況を改善するため、生産性向上への取り組みを実践し、伴走支援を受けながら進める今回の機会は、当施設にとって大変意義のあるものとなりました。職員一人ひとりが主体的に課題を考え、意見を出し合いながら取り組むことで、業務を分解して見直す視点や改善への意識を持つことができました。
生産性向上の取り組みはまだ始まったばかりですが、今回得られた経験を今後の施設運営に活かし、継続的な業務改善と入居者サービスの向上につなげていきたいと考えています。

医療法人社団若葉会
理事長 中野 和嘉様
今回、横浜市の伴走支援を受ける中で、まず取り組んだのが現場業務の棚卸しでした。日々の業務を一つひとつ可視化していくことで、これまで当たり前になっていた作業の中に多くの課題や無駄があることが明らかになりました。
課題を整理する過程で、職員間の情報共有や移動に時間がかかっていることが分かり、その改善策としてインカムの導入を進めました。
実際に導入してみると、職員同士がリアルタイムで情報共有できるようになり、これまで発生していた移動や伝達の手間が大きく減少しました。その結果、業務の効率化が図られ、現場の負担軽減と生産性の向上につながっていると感じています。
今回の伴走支援を通じて、業務を見直し、ICTを活用することで現場の働き方を改善できることを実感しました。今後も職員がより働きやすく利用者の皆様により良いサービスを提供できる環境づくりに取り組んでいきたいと考えております。

特別養護老人ホーム ひかり苑
施設長 片瀬 敦史様
当施設では以前から委員会を作り、「介護現場の時間的負担を軽減し、ご利用者様と接する時間を確保するなど、サービスの質を上げる」ことを目的にマニュアルの見直しやICT機器を導入してきましたが、経営者層も現場職員も手探りの状態であり、効果的な方法を見つけられずに苦慮しておりました。
そのような時にこの伴走支援を知り、専門的な知見から支援していただくために応募致しました。施設長自らその目的を語り共有すること、アンケートによってボトルネックを探すことなど、担当者様の指示は具体的で、やるべきことが明確化されていたので、迷うことなく取り組むことができました。この取り組みのおかげで、朝の見守りを効率的に行うことができ、職員の負担を軽減できたことは大きな成果でした。
また、それまでは新しい取り組みにどこか否定的な空気がありましたが、そうしたことに対する拒否感が減り、少しずつですが積極性が見られるようになりました。業務改善の取り組みは行動だけでなく、意識も変えるものだと改めて気づかされました。

すいとぴー金沢八景
施設長 椎名 正和様
当施設は、生産性向上の取り組みとして、2025年2月に眠りスキャンを全居室に導入いたしました。それに伴い現行4名だった夜勤者を3名へ減員することとなりました。そのため各フロアで行っている夜勤業務の内容と時間を明確にする業務時間調査の実施や夜勤者の休憩時間の変更の確認など行っておりました。しかしスムーズにはいかず、これからどう進めていけばよいか悩んでおりました。
プロジェクトを進めていく中で、課題に向かってアンケート実施、結果の報告と改善案のトライアル、再びアンケートを何度も繰り返し行うことで、職員からのポジティブな意見が増え、ネガティブな意見が減っていきました。
この取り組み通じて、生産性向上とは単なる「効率化」ではなく、経営側と現場が同じ目線で同じ目的に向かって課題を一つ一つ解決していく、その結果がご利用者にとってより良い環境の構築に繋がっていく、という事を実感しました。

特別養護老人ホーム ラポール三ツ沢
施設長 鈴木 正貴様
今回、横浜市業務改善支援事業に応募した理由は、内部資源のみで課題を解決しようとすると時間と労力がかかり、前進が難しい場面があるためです。外部の専門的な視点を取り入れることで、効率的かつ客観的に課題解決を進められると考えました。
実際にプロジェクトが始まると、現状把握や課題の整理が進み、職員間での共有も円滑になりました。その結果、課題解決に向けた議論が活発化し、主体的に取り組む姿勢が生まれたと感じています。
今回の事業を通じて、私たちは自ら課題を解決する力を培う貴重な経験を得ました。この取り組みはまだ第一歩ですが、この経験が今後の変化への対応力を高め、課題解決に強い事業所へと成長していく礎になることを期待しています。
横浜市高齢健康福祉課からのコメント
横浜市では、令和6年度より「介護事業所業務改善支援事業」を実施し、介護現場における業務改善(生産性向上)に対する理解促進を図るとともに、これまで取り組んできたICT機器や介護ロボットの活用のほか、介護助手の活用や多様な働き方等を通じた業務改善を支援しております。
令和7年度は、令和6年度に引き続き(株)TRAPE様と業務委託契約を締結し、介護現場における業務改善の取組に対する理解を深めるため、7月に市内介護事業所を対象として、介護現場の業務改善(生産性向上)推進セミナーを開催しました。その後、業務改善に取り組みたいと考える市内事業所の中からモデル事業所を選定し、令和6年度の4事業所から8事業所へと拡充のうえ、伴走支援を開始しました。
約半年間にわたる伴走支援においては、(株)TRAPE様が対面やオンラインで細やかにご助言をいただき、各モデル事業所は対話やアンケートを通じて把握した課題解決に向けて、試行錯誤を繰り返しながら改善活動に取り組んでいただきました。
年度末に実施した業務改善成果報告会では、モデル事業所から「職員一人ひとりが『より良くするにはどうすればよいか』を考える姿勢が育ち、意識改革が進んだ」「業務の効率化が図られ、現場の負担軽減と生産性の向上につながった」等の声をいただき、一定の成果を得ることができたと感じています。業務改善に取り組んでいただいた8事業所の皆様、そして伴走支援いただいた(株)TRAPE様に、感謝申し上げます。
令和8年度は、新たに8事業所を伴走支援するとともに、令和7年度の好事例の横展開を図るため、セミナーの開催やモデル事業所見学会の実施など、事業所の業務改善に資する支援を継続的に実施する予定です。
引き続き、横浜市では「新たな介護人材の確保」、「介護人材の定着支援」、「専門性の向上」、「介護現場の業務改善」を4本柱に、介護人材施策を推進していきます。
【都道府県・市町村の担当者の皆様へ】
<株式会社TRAPE(トラピ)の生産性向上における取組み概要>
株式会社TRAPEは、2017年の介護業界において生産性向上という言葉が用いられた黎明期から、以下の活動を行ってきました。
- 厚生労働省の事業所向け「生産性向上ガイドライン」および自治体向け「生産性向上ガイドライン」の作成・改編に深く関与
- 全国の介護生産性向上総合相談センター(ワンストップ窓口)が活用する「設置・運営に係る手引き」の改編にも参画 2020年~2025年にわたり、厚生労働省主催の介護事業所向け生産性向上全国セミナーにて講演を担当
- 全国で伴走支援を行う企業向け研修の講師を2年連続で担当 生産性向上に関する研修・ワークショップ・伴走支援を通じて、13,000を超える介護事業所の経営者・ミドルリーダーと対話を重ねる
- - 施設サービスから在宅サービスまで幅広い介護事業所に対して伴走支援を実施
- 生産性向上、働きがいの向上、自律的な人材育成の3つを同時に実現する支援を展開
- 介護ロボット相談窓口(厚労省プラットフォーム事業)における業務アドバイザーとして活動
- - 2022年:全国17窓口中6窓口を担当
- - 2023年:全国16窓口中6窓口を担当
- - 2024年度:全国11窓口中7窓口を担当
- 2023年以降、全国の都道府県におけるワンストップ窓口と業務締結し、先進的な取り組みの設計・支援を実施
- 介護助手や協働化事業のモデル地域づくり事業を全国で実施
- 「ケアプランデータ連携システム」の普及に向けた地域モデル事業の構築支援を、全国の都道府県・市町村に対して実施
- 2025年、弊社代表の鎌田が委員として参画した厚生労働省の調査研究事業(障害福祉分野における生産性向上)において、今後の土台となる「障害福祉における生産性向上の定義」を策定し、「障害福祉現場における生産性向上の基本的な考え方」として取りまとめました
■地方公共団体による『ケアプランデータ連携システム』活用セミナー
【2023年12月6日(水)開催】
(モデレーター:株式会社TRAPE 鎌田大啓)
https://youtu.be/HSjxEQKTxyI?si=0LNQJ5sb99oigAkT
■全国自治体向け『地域が取り組むケアプランデータ連携のいま』オンラインウェビナー
【2024年12月4日(水)開催】
第2部:TRAPE の鎌田氏と聞く!新たな普及施策と事業者の声
https://youtu.be/bMWKwkF5SFY?si=zm4w7UIw-5cLKc4R
■ケアプランデータ連携システム フリーパスキャンペーンオンライン説明会
【2025年3月14日(金)開催】
利用者の立場から考えるケアプランデータ連携システムへの期待
https://youtu.be/D-oOSOJcePM
■地方公共団体及び国民健康保険団体連合会様向けオンラインセミナー
【2026年1月14日(水)開催】
(モデレーター:株式会社TRAPE 鎌田大啓)
https://www.youtube.com/live/IaM6JXWRWxo?si=Nl3s_JJMaGvV7MTH
【株式会社TRAPE(トラピ)について】
代表:鎌田大啓
本社:大阪市淀川区西中島5-11-9 新大阪中里ビル3F
URL:https://trape.jp/
設立:2015年9月
事業内容:
「生産性向上くん(R)︎」
介護現場の生産性向上は、いきなりICTや業務改善ではうまくいかず、チームで課題を共有し目線を揃える“準備”が鍵となる中、「生産性向上くん(R)」はその“準備8割”を現場で実行できる、委員会運営から課題の見える化・分析までを一体で支援する完全無料のオンラインツールです
「Sociwell ソシウェル」
介護職員の働きやすい職場環境づくりを実現し、内閣総理大臣表彰受賞施設を生み出してきた実績を持つ、フルオンラインで「生産性向上」「働きがい向上」「リーダー育成」を同時に実現する伴走支援サービスです。
「介護経営者クラブ」
介護経営者クラブは、TRAPEの伴走支援を通じて生産性向上を実践してきた事業所が集い、組織の枠を超えて経営者同士が対話を重ねながら実践知を共有し合うとともに、外部の方々も参加できる会員制コミュニティです。
「厚生労働省・自治体関連事業」
人手不足や社会環境の変化に直面する中で、各種モデル事業の立ち上げ(0→1)から既存施策の発展(1→10)までを一気通貫で支援し、地域に新たな価値を生み出し続ける、高齢者支援セクションにとっての信頼できる実行パートナーです。
【お問合せ・ご質問・取材のお申込みはこちら】
株式会社TRAPE 広報担当 宛
E-mail:info@trape.jp
https://trape.jp/contac