先端・成熟領域の二極化と需要多様化を受け、6つの計画ギャップが課題に
A.T. カーニー株式会社(東京都港区、日本代表:針ヶ谷 武文)は、半導体メーカーのサプライチェーン見直しと、半導体ファブが検討すべき領域を整理した論考「半導体サプライチェーンの強靭化」(英語論考は“Shoring up the semiconductor supply chain” )を公開しました。
本稿では、半導体産業が2021~2022年の供給不足から、2023年から2024年初頭にかけての供給過剰へと短期間で転じたことを踏まえ、回復局面に向けた設備投資・人材投資と計画機能の高度化が重要な論点になると整理しています。とくに、業界トレンド、ファブ・オペレーションへの影響、ファブの計画機能という3つの領域を検討することが、半導体メーカーのサプライチェーン強靭化における主要テーマとして示されています。
本稿ではまた、半導体がAI、自動運転・電動化、より効率的で持続可能な航空機、防衛、ハイパースケール・データセンターなどの中核を成すと整理しています。半導体産業の重要性が高まるなか、より信頼性が高く持続可能なサプライチェーンの構築が求められる一方、市場投入までのスピード、需要の多様化、顧客のカスタマイズ・パーソナライゼーションへの期待、製品の複雑化、パンデミック後のサプライチェーン変化が、対応の難易度を高めているとしています。
1. 2021~2024年初頭で需給が反転、3領域の検討が回復局面の論点に
半導体産業は、伝統的に景気循環型の性格を持つ一方で、直近では2021~2022年の供給不足から、2023年から2024年初頭にかけての供給過剰へと短期間で転じました。本稿では、企業が先行者優位を確保するため、需要回復の兆しを慎重に見極めていると整理しています。
今回の回復局面の計画においては、これまでとは異なる点も存在します。業界は先端領域と成熟領域に二極化しつつあり、単一チップへの集積と同様に、複数のチップを一つのパッケージにまとめることの重要性が高まっています。こうした変化の背景には、需要の多様化と地政学的要因があるとされています。
2. 6つの計画ギャップが障壁、3つの不足が計画達成の課題に
本稿では、ファブの計画機能において、予測モデル、需要計画、サプライヤー・リレーションシップ管理、部品・材料計画、在庫管理、生産実行という6つの領域に、計画目標の達成を阻むギャップが存在していると整理しています。これらの領域に共通する課題として、精度の高い予測、最適化のための柔軟性、迅速な変更管理の不足が挙げられています。
需要回復期に最大限の生産性を発揮するためには、その前段階から設備投資や人材投資を積み増しておく必要があるとされています。また、需要や地政学リスクの変動に対応するための強固なシステム、高ミックス・少量生産への対応、同時に稼働するプロセスノードの増加への対応が求められるとしています。日々の製造現場では、需要計画、供給計画、材料計画のすべてで高い完成度が求められると整理されています。
3. 2つの関係軸・4機能に焦点、需要・供給・材料計画の連動が論点に
本稿では、ファブの計画機能のなかでも、顧客との関係に関わる予測と需要計画、サプライヤーとの関係に関わるリレーションシップ管理と部品・材料計画に焦点を当てています。これは、需要側と供給側の双方に関わる計画機能を整理するものです。
今後の半導体メーカーには、需要回復の兆しを見極めるだけでなく、回復前から設備投資や人材投資を積み増し、需要回復期に最大限の生産性を発揮できる体制を整えることが求められるとされています。加えて、需要や地政学リスクの変動に対応するため、需要計画、供給計画、材料計画を日々の製造現場で高い完成度に保つことが重要な論点になります。

- 論考について
・ 論考名:“Shoring up the semiconductor supply chain”(英文)
・ URL
https://www.kearney.com/documents/291362523/301255868/Shoring+up+the+semiconductor+supply+chain.pdf/9ebe9b15-e717-9ce0-0f29-1398cd0eb6bb?t=1716313975685
・ URL(日本語ページ):「半導体サプライチェーンの強靭化」
https://www.jp.kearney.com/issue-papers-perspectives/shoring-up-the-semiconductor-supply-chain
- 監修者
西川 覚也 シニアパートナー
東京大学工学部卒。特許事務所を経て、A.T. カーニー入社。現在の技術軸に新しい技術軸を足して、需要を創造するM&A戦略、IoTを梃にした新しい価値の創造(ビジネスモデル、オペレーションモデル)を支援。
竹井 潔 プリンシパル
MITスローン経営大学院修了(MBA)。東芝(現キオクシア)半導体事業の経営企画部門で、事業戦略立案や海外企業との提携交渉に従事したのち、KEARNEYに入社。通信、ハイテク領域を中心に、全社戦略、事業ポートフォリオ変革、新事業開発、M&A戦略等のテーマを手掛ける。クロスボーダーのプロジェクトリードが可能。
- A.T. カーニーについて
A.T. カーニー(グローバル・ブランド名は KEARNEY)は、1926年に米国シカゴで創業、1972年に日本に進出しました。高度な専門性、目に見える成果の実現、顧客企業との密接な協働作業を最大の強みとし、現在では世界40カ国以上に拠点を有し、約5,900名のスタッフとグローバルネットワークを擁しています。あらゆる主要産業分野のグローバル1,000社や各国の大手企業・政府系機関等を中心顧客とし、戦略からオペレーション、ITにいたるまで一貫した高品質のサービスを提供しています。詳しくはWebサイトをご覧ください。https://www.jp.kearney.com/