9月24日の九州電力を皮切りに、北海道電力、東北電力、四国電力から、相次いで再生可能エネルギー(再エネ)の連系接続申込みに対する「回答の保留」が発表されました。安定供給という電力会社の責務が強調されていますが、以後の動きのようにその根拠には疑問があり、今後の対応次第では再エネ普及にとって 大きなマイナスとなることが懸念されますので、以下のとおり、再生可能エネルギー普及に取組む生活クラブ連合会として見解を表明します。
一部電力会社による系統連系「回答保留」に対する生活クラブ連合会の見解
2014年11月11日
1.まずはじめに、国や電力会社は、再生可能エネルギーに関する様々な情報を、きちんと国民に公開し、説明責任を果たすべきです。
今般の電力会社による接続申込「回答保留」の表明は、国民への十分な説明がないまま唐突に行なわれ、再エネを普及させていこうという国民的な機運に冷水を浴びせました。拙速に回答保留とするのではなく、公開で課題を検討するテーブルを発足するなどのやり方もあったはずであり、旧態依然とした垂直統合による “上から目線”の発露と言わざるを得ません。電力自由化を進めるためにも、電力事業者としてのアカウンタビリィティを果たすことが求められます。
個別的に九州電力管内だけを見てみると、再エネの取組みは20%を超えて群を抜いています。今回の問題は、消費量(需要)が少ないために発生している面もありますので、来年発足する広域的系統運用機関を機能的に稼働することで調整することが重要と言えます。
一時的にも再エネでピーク電力を賄えるのであれば、新エネルギ-基本計画で「ベース電源」と位置付けられた原発は不要ではないかとの声も聞かれています。 果たして、再エネ普及のためには何が課題であり、どのような対策が必要なのか。系統を連携するための費用はいくら必要で誰がどのように負担すべきなのか。 こうした問題について国民的な議論ができるように、国と電力会社はきちんと説明責任を果たすべきです。
2.国家目標である、再生可能エネルギーを普及するためにはどうすればよいのか、という観点から検討を進め、再エネ導入の目標数値を明らかにすべきです。
国家目標として再エネに取組むドイツでは、まず発電コストが安く発電量の多い風車から普及し、一定レベルに達した後に太陽光を普及させるという戦略的な政策をもち、地域別の再エネ発電ポテンシャルとの相乗効果により普及していきました。日本でも、そうした戦略的な導入施策が必要です。
仮に、再エネによる発電が一時的に余剰となった場合でも、揚水発電や水素製造などで調整することも可能であり、あるいはコストのかからない出力抑制というしくみも選択肢のひとつです。国家目標である再エネをいかに普及させるのか、という観点から検討を進めるべきです。
そのためにも、国は廃棄制約のない再エネの数値目標を一日も早く設定すべきです。はからずも、気候変動を防止するため、世界では2015年3月までに2020年以降のCO2削減目標を表明することになっています。しかも、今回は中国や米国も意欲的な目標を表明すると言われており、このままでは日本は世界での発言権を失い、先進国から取り残されてしまいます。可及的速やかに再エネ数値目標を表明すべきです。
3.国は、発送電分離を確実に、かつ可能な限り速やかに実行する見通しをつけるべきです。
今回の件は、改めて系統連系の課題を浮かび上がらせましたが、このことは固定価格買取制度(FIT)の発足時から有識者により指摘されてきたことです。この問題について、まったく手つかずにしてきたことは国の怠慢であると言わざるを得ません。再エネ普及を進める欧州などでは、再エネの導入目標を決めたら、 その目標達成を進めるためにインフラ整備を行なうことを実施しています。つまり、再エネの導入に連動させる具体的な施策を決定し、併行して行なうことが常識化しています。FITで急速にふえた太陽光が悪いのではなく、予めわかっていたのに対応していない不作為が問題です。
東日本と西日本の周波数が異なることは明治以来の大きな宿題ですが、これとは異なり、系統の連系については、電力自由化を成功させるためには不可欠な解決課題です。仮に、FITと同時に実現していれば、今般のような回答保留の問題は発生しなかったと考えられます。
日本は、再エネの普及と電力自由化を確実に実行することを世界に意思表示し、国内外からの投資を呼び込み、地方を活性化させるためにも、政府は発送電分離を確実、かつ可能な限り速やかに実行する見通しをつけるべきです。
以上
*「厚田市民風力発電所」、「生活クラブSOLAR群馬発電所」、「生活クラブSOLAR栃木発電所」の系統接続については、既に電力会社と需給契約を済ませているので問題ありません。