「生活者発想」を起点に、生活者がモビリティに求める「生活価値」に着目 ~第1弾として、8か国におけるモビリティに関する行動&意識調査の分析結果を読み解く~
株式会社博報堂DYホールディングス (本社:東京都港区、代表取締役社長:西山 泰央、以下 博報堂DYホールディングス)の研究開発部門であるマーケティング・テクノロジー・センター(以下 MTC)は、「生活者発想」を起点に、未来を見据えて生活者がモビリティに求める「生活価値」に着目し、未来を見据えた「グローバル次世代モビリティ研究」を開始したことをお知らせします。
本研究は、技術の進化だけでは捉えきれないモビリティの未来を、生活者の価値観や行動、社会文化的な背景などから捉えなおしながら、モビリティ関連領域における新たな価値創造に寄与することを目的としたものです。
第1弾の取り組みとして、インダストリアルデザイン(※1)をはじめ、モビリティ関連分野でも優れた実績を持つ中国湖南大学設計芸術学院(所在地:中国湖南省長沙市岳麓山、学院長:季鉄)傘下のIntelligent Equipment & Mobility Design研究群(馬超民准教授)またはFuture Devices & Services Design研究群(劉夢非准教授)との産学連携(※2)により、8か国(日本、中国、米国、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア、インド)の20代~50代有職男女を対象とした「モビリティに関する行動&意識調査」を実施いたしました。
■ 第1弾の取り組みの背景
近年、世界各国では社会環境の変化や技術の進歩を背景に、モビリティのあり方が大きく変化しています。電動化・知能化・コネクテッド化の進展に加え、働き方やライフスタイル、価値観の多様化を受け、モビリティは「交通手段」から、「時間の有効活用」や「心身の健康」、「自己表現」など、生活価値を支える存在へと広がっています。
こうした変化を踏まえ、本研究では、中国の研究機関との産学連携を通じて、モビリティ分野の専門知見と博報堂DYホールディングスの生活者発想を融合し、調査対象8か国における生活者・市場への理解を深化させます。第1弾では、今後の研究の基盤となる基礎データの整備と研究フレームの構築を進めます。
■ 主な調査項目およびデータ分析プロセスの概覧
本調査で得られた定量データをもとに、「世代別」「国別」「モビリティ、ライフスタイルの変化や技術進化関連意識クラスター別」との3つの分析軸で集計・分析を行いました。さらに、産学連携によるモビリティ分野の専門知見を取り入れて生活者の価値観やモビリティ関連行動の変化を読み解きながら、生活者発想に基づく未来シナリオを構築します。

<調査結果サマリー(一部抜粋)>
- モビリティにおいて「自分に合った移動体験を主体的に設計・選択できること」を求める一方、効率性や快適性の実現は依然として重要事項となっている。
- 自動運転やAIの活用に対して総じて前向きであり、利便性や効率性の向上への期待は高い。一方で、最終的な判断や責任は人間が持つべきという意識も根強く、「AIを活用しながらも人間が主導する移動」を望む傾向がみられた。
- 移動手段を選択する際には、「安全性」を最も重視する傾向が共通してみられたほか、「天候」、「移動コスト」や「移動距離・時間」なども重視されていることが見て取れた。
- マクロ環境の変化や社会・経済環境の変動が発生した場合、全体的に「移動を減らす」「コストを意識する」「代替手段を活用する」「安全性を重視する」方向へ意識や行動を変化させる傾向がみられた。一方で、その変化への感度や対応の仕方には国ごとの差が存在する。
- 未来のモビリティには、安全・健康・快適性を基盤としながら、AIによる利便性や効率性を取り入れた生活価値の向上への期待が高いことが分かった。一方で、革新的な技術や新しい移動手段そのものよりも、日常生活に役立つ実用的な価値を重視する傾向がみられた。
<調査結果(一部抜粋)>
■ モビリティに関連する価値観
全体では、「公共・シェア交通」より「自家用車志向 65.4%」、「位置情報共有拒否」より「位置情報共有受容 63.1%」、「現地発見重視」より「事前調べ重視 56.7%」を選ぶ人が多く、自分に合った移動体験を主体的に選択したいという意識が共通してみられました。また、「最短ルート重視 54.0%」、「時間効率重視 51.1%」、「快適性優先 50.7%」が5割程度を占めており、効率性や快適性の実現も依然として重要事項となっていることが明らかになりました。
本調査では、生活者のモビリティに対する価値観は、「所有か共有か」「効率か体験か」といった二項対立ではなく、状況に応じて最適な選択ができることを重視する傾向が示唆されました。次世代モビリティには、多様な選択肢を提供するとともに、安全性・効率性・快適性を統合した移動体験が求められます。
Q. モビリティに関連する価値観について、ご意見は A と B のどちらにより近いですか。
(それぞれ単一回答)

全体:N=3,200
■ 自動運転・AI に関連する価値観
全体では、運転をAIに任せる「AI先回り支援志向 55.1%」、自らの走行データを記録・分析する「走行データ活用受容 54.4%」、システムの判断による「経路最適化受容 53.5%」がいずれも過半数を占めています。生活者には、自動運転やAIを活用したサービスを受け入れる傾向がみられ、移動の利便性や効率性の向上への期待がうかがえます。
他方、「完全AI運転支持 38.1%」に対して「人間主導・AI補助 61.9%」、「人間運転廃止支持 41.8%」に対して「運転権利保持 58.2%」といった結果から、生活者はAIを人間に代わる存在ではなく、移動を支援するパートナーとして捉えており、自動運転時代が到来しても「AIを活用しながら人間が主導する移動」が期待されていることが見て取れます。
Q. 自動運転・AI 関連のモビリティ価値観について、ご意見は A と B のどちらにより近いですか。(それぞれ単一回答)

全体:N=3,200
■ 移動手段選択の判断基準
全体では、移動手段を選択する際に「安全性 67.7%」を最も重視しており、一部の調査対象国では7割を超える高い水準となりました。また、「天候 62.2 %」や「移動コスト 60.2%」、「移動距離・時間 59.8%」も重視されており、安全性を基本としながら、経済性や効率性など複数の要素を総合的に考慮して移動手段を選択していることが読み取れます。
Q. 以下の各要因が、あなたの移動(日常・非日常問わず)判断にどの程度影響しますか。(それぞれ単一回答)

全体:N=3,200
※数値は「影響が非常に大きい」「影響が大きい」の合計。
■ マクロ環境変化によるモビリティ関連行動・意識の変化
マクロ環境や社会・経済環境の変化が生じた際、調査対象8か国の生活者には、移動手段や移動行動を見直し、安全性や経済性をより重視する傾向がみられました。
例えば、「エネルギー・交通サービス価格の大幅な変動」を想定した場合、「コスト・経済性重視」について、ベトナム(39.8 %)、マレーシア(39.3%)、インドネシア(37.3%)ではコストへの意識が特に高く、価格変動時には経済性を重視した意思決定を行う傾向がうかがえました。また、インドでは、「不要不急の移動削減 41.0%」や「デジタル・リモート代替 38.3%」が調査対象国の中で最も高く、移動そのものを見直す傾向が他国より顕著にみられました。
Q. 過去に経験した、または今後発生する可能性のある以下の出来事や不可抗力の影響により、移動手段や移動に関する考え方にはどのような変化がありましたか(または起こると思いますか)。(それぞれ複数回答)

全体:N=3,200
■ 生活者が期待する未来のモビリティ像
現在実用化されている技術から将来のコンセプトまで、未来のモビリティに対する生活者の期待を探りました。
未来のモビリティ形態では、「ワイヤレス給電インフラ 58.8%」、「ゼロエミッション移動 57.8%」、「車路協調による危険予知 56.3%」への期待が高い結果となりました。生活者は、革新的な移動手段そのものよりも、安全性・利便性・持続可能性を高める実用的なモビリティの実現を期待されていることがうかがえます。
また、AIを活用したモビリティサービスでは、「事故状況の3D再現 61.1%」、「体調異変時の自動通報 60.3%」、「故障時の自動整備予約 60.0%」への期待が高く、安全性や利便性を高める機能が支持を集めました。一方、娯楽性や演出性を高める機能への期待は比較的低く、AIには移動を支える実用的な役割が求められていることが分かりました。
さらに、移動中の健康管理・快適性向上機能では、「車内空気質の自動管理 61.3%」, 「体調異変時の救援連携 61.2%」、「乗り物酔い軽減 60.3%」への期待が高いことが確認されました。そして、「快適な仮眠空間 58.1%」、「車窓の自動調光 57.7%」や「座席ごとの温度自動調整 57.4%」など、移動時間そのものの質を高める機能も上位に挙げられたことから、モビリティには移動を支えるだけでなく、健康や快適性を支える空間としての価値も期待されていることが示唆されました。
Q. 「将来のモビリティのありかた」に関する以下の構想について、どの程度期待するかをお答えください。
(それぞれ単一回答)
Q. 「モビリティ分野において人工知能(AI)が実現する以下の機能・サービス」について、
どの程度期待するかをお答えください。(それぞれ単一回答)
Q. 移動中の「健康」に関連する以下の機能・サービスについて、どの程度期待するかをお答えください。
(それぞれ単一回答)

全体:N=3,200
※数値は「非常に期待する」「やや期待する」の合計。
MTCは今後も、産学民の多様なパートナーと連携しながら、「グローバル次世代モビリティ研究」を推進するとともに、研究成果の発信や社会実装を通じて、モビリティ分野における新たな価値創造に取り組んでまいります。
(※1)出典:Shanghai Ranking 2026中国大学専攻ランキング
https://www.shanghairanking.cn/rankings/bcmr/2026/080205
(※2)MTCでは、積極的な産学連携を実施しています。
産学連携を通じて、アカデミアが持つ先端技術や学術的知見の社会実装を加速させると共に、
社会課題解決への貢献も目指しています。
https://hakuhodody-mtc.com/academia/
<8か国におけるモビリティに関する行動&意識調査の概要>
・調査対象国・都市:日本(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)、中国(上海)、米国(ニューヨーク、ロサンゼルス)、タイ(バンコク)、
ベトナム(ホーチミン)、マレーシア(クアラルンプール)、
インドネシア(ジャカルタ)、インド(デリー)
・調査対象者:20歳~59歳までの有職男女
・サンプル数:合計3,200人 ※各国400人、性年代別均等割付
・調査期間:2026年2月12日~3月24日
・調査手法:インターネット調査
・調査機関:Dynata