写真家の「過去・現在・未来」を紐解くトークシリーズ「TRINITY 瞬間と永遠 ── Past, Present, Future」第1回を開催。奥山氏の作品を、写真評論家の鳥原学氏が読み解きます。

誰かの「選択」に触れるとき、あなたの輪郭が立ち上がる。シャッターが切られる瞬間の背後には、作家たちが積み重ねてきた膨大な時間と、無数の選択が存在します。
本トークシリーズでは、写真家の過去・現在・未来を紐解きながら「どう生き、何を見つめ、何を未来へ手渡そうとしているのか」を探ります。作家が秘める心の声に耳を傾ける。あるいはその視線や思想を、時代背景を踏まえながら専門家が読み解く。「時間」を切り口としながら、ひとりの表現者の軌跡に迫ります。
今回取り上げるのは写真家・奥山淳志氏。人間の「生きること」をテーマに東北の風土や文化を撮影しながら作品制作を行っている作家です。奥山氏がこれまで撮りためてきた作品たちを、写真評論家で本校講師の鳥原学氏が、作家の「過去・現在・未来」を辿りながら読み解いていきます。

奥山淳志『弁造 Benzo』より
奥山氏は、20年以上にわたってひとりの人間の暮らしを撮り続けた『弁造』を始め、限られた被写体を長年かけて撮影することをライフワークとされています。
その作品や生き様に触れたとき、私たちには2つの問いが浮かびます。「時間をかけて撮るからこそ見えてくる世界とは何か?」「何を伝えるために、そこまでして撮り続けているのか?」。すなわち過去と未来、そしてその両極を揺れ動きながら作家に「選択」を迫る現在--三位一体(TRINITY)の時間がはらむ謎です。

奥山淳志『弁造 Benzo』より
奥山淳志『弁造 Benzo』より
ここで語られるのは、写真の話であって、写真だけの話ではありません。一枚の写真の向こう側にある、プロフェッショナルとしての生き方や価値観。それに触れることは、私たち自身の見えない未来を照らし出すことでもあります。無数の選択の軌跡をたどり、次の一歩を考える。そんな時間がここにあります。
写真を学ぶ方はもちろん、表現やものづくり、人生の選択について考えたい方にもおすすめのトークイベントです。皆さまのご参加をお待ちしております。
奥山氏による作品コメント
『弁造 Benzo』
「他者の生きること」を知りたいという思いから、北海道で自給自足の生活を続ける井上弁造さんのもとに通うようになった。
撮影は弁造さんが逝去するまで14年間続いたが、その後も、画家を目指していた弁造さんの絵や庭を対象にした撮影を続けることになった。
「他者」という存在について答えが出たわけではないが、人がこの世界で「生きること」の手触りは、うっすらではあるが掴めたのではないかという気がしている。

奥山淳志『弁造 Benzo』より
奥山淳志『弁造 Benzo』より
『カナシイホトケ』
25歳のとき、東北の岩手に移住した。
以来、この土地がどのように変わっていくのかを知りたいと考えてきた。もちろん、変わるのは土地だけではなく自分という存在も変化のなかにあると感じていた。
いつしか、人も含めた土地の移り変わりを「祭礼」という窓を通してみるようになった。
そこで見たのは、人がどう生きて死んでいくかということであり、それらを前にしたときの共同体や個人の営みの姿だった。

奥山淳志『カナシイホトケ』より
奥山淳志『カナシイホトケ』より

奥山淳志『カナシイホトケ』より
奥山淳志『カナシイホトケ』より
登壇者情報
■鳥原学氏(写真評論家) メッセージ
「撮り続けることに意味がある」と語る写真家は多い。その意味をみごとに示したのが、奥山淳志さんの「庭とエスキース」展と写真集『弁造』である。
奥山さんは20年以上にわたり、北海道で自給自足の暮らしを営んだ井上弁造さんを撮り続けてきた。当初は庭や暮らしを記録することから始まった撮影は、やがて一人の人間の内面へと向かい、「生きることの質感」を見つめる表現へと深まっていく。
繰り返しのなかで撮る意味を問い、それでも撮り続けたからこそ見えてきたものがある。その「しつこさ」こそが、一人の人間に内在する豊かな世界を掘り起こした。その健やかな人間についての探求心に、敬意を払わずにはいられない。
今回のトークショーでは、彼の一見おだやかで、しかし、熱い情熱がこもった写真をみなさんと解き明かしていこうと思います。


TRINITY 瞬間と永遠── Past, Present, Future
日程:2026年8月1日(土)
時間:13:00-14:30
主催:日本写真芸術専門学校
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