アニコム ホールディングス株式会社(東京都新宿区、代表取締役 小森 伸昭、以下 アニコム)は、グループをあげて2017年よりペットの遺伝病撲滅・管理に取り組んでいます。主にブリーダー様や取引先のペットショップ様に向けて、遺伝子検査の提供と、その結果にもとづく適切なブリーディングや販売の提案を行ってまいりました。当該取り組みの現時点での成果と現在の状況についてお知らせいたします。

■『ペット』には、そもそも遺伝病が多い
かつて、遺伝病を原因に車いすで生活するコーギーの姿は、決して珍しいものではありませんでした。
近年、そうした姿を目にする機会が、以前に比べて少なくなってきたように感じます。
犬種や猫種といったペットの品種は、その遺伝的特徴をより際立たせるべく、人間が交配(ブリーディング)を繰り返すことで生み出したものです。その結果、ペットは、他の生き物と比べて非常に血が濃くなっていると同時に、病気の原因となる遺伝子も色濃く受け継いでしまいました。この遺伝子により引き起こされる病気が遺伝病です。アニコムは、これまで遺伝病によって多くの犬猫が苦しんできた現実と向き合い、遺伝病を減らすことはペットを生み出した私たち人間の責任であると考え、これまで遺伝病検査の提供に取り組んでまいりました。
■2021年、『防ぐべき遺伝病の撲滅・管理宣言』を発表
アニコムでは2017年より行ってきた取り組みの成果として、2021年4月に発表したリリースにて、防ぐべき遺伝病の撲滅を宣言いたしました。
同リリース内では、「撲滅」もしくは「管理」すべき遺伝病と位置づけた疾患のうち、計3疾患について、現状の検査体制を継続することにより、特定の犬種においてこれらの遺伝病が発生しない「撲滅」可能な状況もしくは、ペット業界として適切に「管理」可能な状況に至ったと判断いたしました。なお、本リリースにおける「撲滅」「管理」は、アニコムグループが遺伝子検査を提供しているブリーダー様・ペットショップ様における引渡し状況等に基づく定義に基づき使用しています。
ペット保険のアニコム、防ぐべき遺伝病の撲滅を宣言
■遺伝病検査の成果と現状
2021年の宣言以降も、引き続きアニコムでは遺伝病検査に取り組んでまいりました。
主な疾患における現在の取り組み状況についてご報告いたします。
・犬の疾患
1.変性性脊髄症(Degenerative Myelopathy:DM)
DMは、10歳前後の中・高齢期から、後肢麻痺などの神経症状が出始め、次第に全身に広まり、最終的には呼吸筋の麻痺などにより死に至る病気です。ウェルシュ・コーギー・ペンブロークやジャーマン・シェパード・ドッグに多いことで知られています。検査事業開始以来、下図(※1)のようにアフェクテッド(※2)の割合は全体的に減少傾向にあります。

また、DMにおける近親交配レベル(遺伝的な近さ)を経時的に調べたところ、遺伝的多様性への影響はみられなかったことが分かり、2024年にアニコム社員著の研究論文として英国学術誌にて発表しています。
イヌの致死性遺伝性疾患『変性性脊髄症(DM)』撲滅に向けさらに前進
※1 掲載しているグラフは、いずれもアニコムグループが遺伝子検査を行っているブリーダー様・ペットショップ様のデータに基づいています。
※2 アフェクテッドとは、遺伝子検査の結果として示されるものの1つで、ほかに「クリア」「キャリア」が存在します。検査対象の遺伝病が発症する原因遺伝子を持っていない場合を「クリア」、原因遺伝子を片方の親から受け継いだ場合を「キャリア」、原因遺伝子を両親から受け継いだ場合を「アフェクテッド」といいます。多くの遺伝病では、アフェクテッドの個体で発症のリスクがあります。
2.進行性網膜萎縮症(Progressive Retinal Atrophy:PRA)
PRAは、網膜が徐々に変性することで視力が低下していく進行性の病気です。いずれも主に初期の夜盲症(薄暗いところで目が見えにくい)から始まり、やがて進行性に視力が低下し最終的に失明に至ります。犬では多くの品種でこの疾患のリスクが知られています。中でもリスクの知られているミニチュア・ダックスフンドにおけるPRAに関して、アニコムグループの研究により、遺伝子検査の普及後、疾患リスクの高い個体の割合が明確に減少していることが確認されたこと、および近交係数の変化は見られなかったことを明らかにしました。
「遺伝子検査の普及が犬の「進行性網膜萎縮症(PRA)」リスクを大きく低下」

・猫の疾患
1.多発性嚢胞腎(Polycystic Kidney Disease:PKD)
PKDは、腎臓に多数の嚢胞(液体の入った袋状の構造)が形成され、時間とともに大型化することで腎臓が圧迫され、腎機能が低下し腎不全を起こす病気です。明らかな症状が現れる時期は個体によりばらつきが大きく、多くの場合は中高齢になってから顕著になります。PKDはキャリアでも発症リスクのある「優性遺伝(顕性遺伝)」の遺伝形式をとります。また、アフェクテッドの場合は胎児の時点で死亡してしまうため、生体の遺伝病検査にてアフェクテッドが検出されることはないとされています。アニコムの検査においても、アフェクテッドは検出されず、検査を開始した2017年より後に生まれた猫ではキャリアの割合に明らかな減少がみられました。

PKDの経時的な遺伝子変異の頻度を調べたところ、一部の品種において2019年以前と2022年以降で有意な減少がみられ、また系統的なゲノム解析の結果、遺伝的構造や近交度レベルへの影響はみられていないということも分かってきています。こちらは今後、アニコム社員著の研究論文として学術雑誌へ掲載予定です。
Widespread genetic testing control inherited polycystic kidney disease in cats | bioRxiv
※外部サイトに移動いたします。
2.ピルビン酸キナーゼ欠損症(Pyruvate Kinase Deficiency:PK欠損症)
PK欠損症は、ピルビン酸キナーゼと呼ばれる酵素が生まれつき欠損することで、赤血球がうまくはたらかなくなり、通常に比べて赤血球の寿命が極端に短くなる病気です。主な症状は持続的な貧血で、運動耐性の低下や頻脈、粘膜が蒼白になるなどの症状を示します。また臓器(特に肝臓)の機能障害が現れます。多くは4歳齢頃までに死に至ります。こちらの疾患も図のように、経時的なリスクの減少がみられました。

3.肥大型心筋症(Hypertrophic Cardiomyopathy:HCM)
HCMは、心臓の壁が内側に向かって厚くなり、心臓の容積が狭くなることで、心機能が徐々に低下する病気です。運動耐性の低下や、肺などに水が溜まることによる呼吸困難がみられ、特に猫では嘔吐や食欲不振が多くみられます。また血栓症が生じるリスクが高く、後肢麻痺や腎不全など、血栓による塞栓の起こる部位により多彩な症状が現れます。
こちらの疾患についても、検査開始以降、リスクを保有する個体の割合が大きく減少しました。

*1 以下の9品種。アビシニアン、エジプシャン・マウ、サイベリアン・フォレスト・キャット、シンガプーラ、ソマリ、ノルウェージャン・フォレスト・キャット、ベンガル、メイン・クーン、ラグドール
また、HCMに関するアニコム社員著の研究論文が2023年に米学術誌に掲載されました。この研究では、特定のネコの品種にのみ存在すると考えられていたHCMの原因遺伝子変異が、これまで見つかっていなかった品種においても存在することを明らかにしました。このことから、広範囲な品種においてHCMのリスクを調べていく重要性が示唆されます。
ネコの肥大型心筋症に関する遺伝子変異の存在を新たな品種で発見
いずれの疾患も、検査の普及に伴い、変異遺伝子を持つ個体の割合が減少していることが各グラフより見て取れます。これらのデータは、アニコムグループが遺伝子検査を行っているブリーダー様・ペットショップ様のデータに基づき、検査結果を踏まえたブリーディングが行われることにより、遺伝病リスクが着実に低下していることを示唆しています。遺伝病は、いわば生まれた瞬間から苦しみを抱える可能性を背負ってしまうものです。アニコムでは、検査を通じて、そのような未来を少しでも減らすことができると考えております。今後も関係者の皆様と連携しながら、科学的根拠に基づいた遺伝病対策と動物福祉の向上に継続して取り組んでまいります。
アニコムはこれからも、命を生み出す責任と真摯に向き合い、どうぶつと人とのよりよい共生社会の実現に貢献していきます。