「譜面通り演奏するのが全て正解と決めつけない」「曲想を考え、自分の感性で」

母校でのドラム・クリニック全体練習で、打楽器の生徒たちに、鮮やかなスティックさばきを見せた長谷川さん
福井県坂井市丸岡町出身のプロドラマー長谷川清司さん(73 )=都内在住=が、7月28日、母校となる丸岡中学校(坂井市丸岡町寅国)を訪れ、後輩たちに当たる吹奏楽部の生徒たちに対し、打楽器の演奏指導を行った。また全体練習と称し、約50名の部員たちと合奏も行い、母校に迫力あるドラムの音を響かせた。
今回のクリニックは、「吹奏楽のためのドラム・クリニック プロ直伝 感じる演奏講座」と題し夏休みを利用した指導会で、坂井市教育委員会と丸岡中学校が企画し、丸岡中の吹奏楽部員48人と坂井中の打楽器担当の3人が参加した。
長谷川さんは1990年と2005年の2度、母校での演奏披露はあるが、吹奏楽部の部員に絞っての指導は初めて。今回は3年ぶりとなる古里でのライブでの帰福を利用してのドラム・クリニックで、自身のドラムセットを音楽室に持ち込んだ。
はじめに、打楽器担当の生徒を集め基本練習。丸岡中の6人と坂井中の3人に対して、まず小太鼓(スネアドラム)の叩き方やスティックの持ち方を指導。「ドラムの高さは大切、スティックは打面に対し水平に叩くことを意識して」「スティックも、無理やり力を入れて叩くとせっかくの弾む音が出ない。握る場所は一番弾む位置を探して」などとドラムの鳴らし方の基本から丁寧に教えていた。 また波のような響きを生み出すプレスロールの叩き方では「布に例えるなら絹のように美しい音を出して」「スケートで、すっーと滑るような感じで」などと生徒がイメージしやすいようにアドバイス。「力んで叩かない、自然に弾ませて」「うまい、うまい、それなら1週間ぐらいでできるようになるよ」などと実技を交えながら、生徒に話しかけるように教えていた。このほか「テンポキープ」や「裏打ち」などの練習法も教えていた。

打楽器担当の指導では、坂井中の3人も加わった。「スティックは、打面対し水平を意識して」と長谷川さん

「いいよ」「いいよー」丸岡中のドラムやパーカッション、木琴担当らに大きな声が響く。
吹奏楽部全員と合奏も。「ドラムは、演奏をリードする役割。それを忘れないで」
後半は吹奏学部全員との合奏が行われた。クラリネット、トランペット、ホルンなど多彩な楽器に囲まれながら、長谷川さんも力強くドラムを響かせた。「学園天国」や「マツケンサンバ」などアップテンポの曲で、ハーモニーを奏でた。途中、「せっかくサックスがいいメロディを奏でているから、そこは(打楽器の)音を抑えよう」などと、気になる部分を指摘しながら、一時間余りにわたって合奏を繰り広げていた。

長谷川さん(右)のドラムを真ん中に、「学園天国」「マツケンサンバ」など3曲の合奏が音楽室に響き渡った。
指導を受けた3年生の大杉あさひさんは「とにかく、プロの演奏に圧倒された。普段の私たちの練習に比べ、あんなにドラムの響きが大きく、はっきりと聞こえるとは思わなかった。全体練習でも長谷川さんにはオーラを感じた。面に水平になど細かい基本がとても参考になった。またぜひ指導に来て欲しい」と話し、ドラム担当だけでなく吹奏楽部全員に、長谷川さんの指導はいい刺激になった様子。
長谷川さんも終了後に笑顔を見せ、「いや、短い時間だったが、楽しかった。ポピュラー音楽を演奏する場合、特にドラムやパーカッションは譜面の叩き方がすべて正しい、指定のテンポでやらないと駄目だと思いがち。バンドの土台となるようにリズムをアレンジしたり、自分たちが気持ちよく演奏できるテンポでいい。この曲はどんな曲想なのかを考えながら、自分の音が出せるようにしてほしい。特にドラムは、吹奏楽の中では全体の曲調を引っ張っていく役割がある、それが少しでも分かってもらえたら嬉しい」と話していた。
長谷川 清司さん略歴
プロ歴53年 森山良子さんら有名歌手のバック演奏は延べ4000人を数える
福井県丸岡町(現坂井市)生まれ。丸岡中学校時代に、福井駅前の楽器店で見たドラムセットに一目惚れしてドラマーを目指す。
尚美高等音楽学院、東京藝術大学別科卒。クラシックを塚田靖氏、ジャズをMarvin “Smitty”Smith、キューバ系をFrank Malabe、ブラジル系をPaulo bragaに師事。ダン・池田とニューブリードを経て1980年フリーランサーとなり、初レコーディングは、ドリフターズの「ドリフの早口ことば」で、レコーディング総数は4000曲を超える。ジョン・海山・ネプチューン(尺八奏者)のアルバムに参加し、NY(フィッシャーホール)、ハワイ、マレーシアなどのジャズフェスティバルに出演。
NHK交響楽団、札幌交響楽団、仙台フィルハーモニーなどで「ウエスト・サイド・ストーリー」に客演し、2004年には世界中のオーケストラの名演奏者達によるスーパー・ワールド・オーケストラに参加。TV番組“夜のヒットスタジオ”、“ふたりのビッグショー”など20本のレギュラーを26年間勤め、伴奏した歌手は延べ4000人を超える。また、佐渡裕指揮“題名のない音楽会”、“ミュージックフェア”に多数出演。伊東ゆかり、江利チエミ、鳳蘭、河村隆一、栗原小巻、西郷輝彦、さとう宗幸、菅原洋一、タイム・ファイブ、倍賞千恵子をはじめ、森山良子を18年間サポートし、1992年セビリア万博、1998年長野冬期オリンピックセレプションに出演。江草啓介、エリック宮城、島健、羽田健太郎、日野皓正、前田憲男、宮川泰、渡辺貞夫などの著名人と共演。(敬称略)
1983年、Drum Schoolを開催し、23回のセミナーやライブを行う。
1991年、自己のグループ “On a Roll”結成。
2000年、“tickStick”を結成し、2001年に「tickStick」をリリース。
2023年、全作曲・編曲の「Step by Step」をリリース。
著書として、「ひとつの主題でテクニックを磨く 101ドラム・エクササイズ」、「My Warm Up for hands」の教則本2冊がある。現在はレコーディング、自己のバンドを中心に活動中。