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NEDO

2040年以降の新産業の創出に向け、「フロンティア育成事業」を6領域に拡充しました

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新たに4名のプログラムディレクターを指名し、研究開発テーマ26件を採択

 NEDOは、2040年以降の新産業の創出を目指し、国として新たに取り組むべき領域(フロンティア領域)の研究開発および事業化を推進する「フロンティア育成事業」(以下、本事業)を2026年度から6領域体制へ拡充しました。
 本事業では、2025年度に「極限マテリアル」および「地下未利用資源の活用」の2領域で取り組みを開始しました。2026年度は、これらの先行2領域に加え、新たに「海洋CDRの工業的技術開発」「海洋ロボティクス」「ブレインテック・ニューロテック」「量子センシング」の4領域を追加し、合計6領域で推進します。
 新たに追加した4領域において、研究開発課題の技術開発から社会実装に至るまでを一貫して推進するため、4名のプログラムディレクター(以下、PD)を指名しました。
 また、2025年度に先行して取り組んだ「地下未利用資源の活用」領域は、1年間のフィージビリティスタディを経て、2026年度に改めて天然水素課題の研究開発テーマを公募しました。
審査の結果、この度五つの研究開発課題において、合計26件の研究開発テーマを採択しました。
1.フロンティア育成事業の概要
 NEDOイノベーション戦略センター(TSC)は、Innovation Outlookとして、各分野の国内外の技術、市場、政策の動向を俯瞰(ふかん)し、国として新たに取り組むべき領域(フロンティア領域※1)を探索し、経済産業省に対してフロンティア領域の候補を提案することとしています。経済産業省はNEDOからの提案などを勘案し、フロンティア領域について集中的に育成します。
 本事業は、脱炭素社会の実現と新産業の創出を目指し、将来的に高い成長が期待されるフロンティア領域における初期段階の研究開発を支援するものです。NEDOは各領域にPDを配置し、研究の進捗(しんちょく)管理に加え、事業化の可能性や出口戦略の検討も行います。これにより、国家プロジェクトへの発展やスタートアップの創出など、研究成果の社会実装を加速させます。
 NEDOは本事業を通じて、日本が抱える研究開発から事業化に至る割合が少ないという課題に対応し、特に需要の不確実性が高いGX分野※2において、事業リスクへの早期対応を可能にします。2040年頃の社会実装を見据え、脱炭素と経済成長の両立を実現する革新的技術の育成と、持続可能な産業基盤の構築に貢献します。

図1 NEDOの描くフロンティア事業の仕組み

2.PDの概要
 PDは、各フロンティア領域における研究開発課題の探索・選定を行い、技術開発から社会実装に至るまでの戦略を策定します。さらに、経済産業省関係部局、NEDO関係部などの関係機関や各フロンティア領域の研究開発や社会実装に係る有識者と連携しながら、その実行から評価および見直し、国家プロジェクトの企画立案、民間投資の促進に至るまで、一貫して推進するための業務を担います。
 PDは、当該領域に関する技術、市場、政策の動向に関する幅広い知見に加え、調査分析や情報発信の能力、プロジェクトマネジメントや事業開発の経験を有し、高い指導力と交渉力を備えている者から、NEDOの理事長が指名します。
3.PD指名および採択テーマ
 本事業では、2025年度に先行して取り組んだ「地下未利用資源の活用」における天然水素課題について、1年間のフィージビリティスタディを経て、2026年度に改めて研究開発テーマを公募するとともに、2026年度から新たに「海洋CDRの工業的技術開発」、「海洋ロボティクス」、「ブレインテック・ニューロテック」、「量子センシング」の4領域をフロンティア領域として追加しました。

 「地下未利用資源の活用」では、石油、石炭、天然ガスなどの従来型の地下資源に対して、特に、天然水素に焦点を当てています。天然水素は、米国エネルギー高等研究計画局(ARPA-E)や国際エネルギー機関(IEA)などで世界的に注目される一方、地下深部での生成・移動・集積メカニズムの詳細は分かっていません。そこで、天然水素資源の活用に向けて必要不可欠な研究テーマを実施し、将来的な低炭素水素の供給源としての可能性を見いだしていきます。

図2 「地下未利用資源の活用」領域の具体的な研究開発課題の例

 「海洋CDRの工業的技術開発」では、大気の約100倍の二酸化炭素(CO2)が存在する海水に注目し、工業的に大規模かつ低コストでのCO2回収が期待される海水からのCO2除去技術(CDR)に焦点を当てました。世界ではさまざまな技術開発が進められていますが、現時点で経済合理性を備えたレベルには至っていません。日本の強みである材料技術や膜技術などを活かした研究開発によって、新たな成長領域としての展開が期待されます。

図3 CO2回収・貯留技術の除去ポテンシャル、技術成熟度および国内のさらなる研究開発によるメリット

 「海洋ロボティクス」では、労働人口減少や人材不足が深刻な海洋産業において、省人化や生産性向上に焦点を当てました。AUV(自律型無人潜水機)やUSV(水上無人機)の活用により、洋上風力発電施設をはじめとする海洋インフラの保守点検・環境モニタリングなどの作業の自動化や安全性向上が期待されます。また、海中・海上ロボットの協調によるデータ取得を通じて「海の見える化」や「海洋デジタルツイン」の実現を進めます。さらに、自律航行や無人機同士の連携技術により、運用コスト削減とCO2排出低減を図り、海洋産業の高度化につなげていきます。

図4 海洋ロボティクス技術の開発例

(出所:戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)海洋安全保障プラットフォームの構築・社会実装に向けた
戦略および研究開発計画)

 「ブレインテック・ニューロテック」は、脳・神経活動を計測・解析し、そのデータを応用する技術群です(図5)。医療・健康分野に加え、教育やエンターテインメントなどの幅広い産業分野への展開が期待され、市場も拡大が見込まれています。その中で、産業分野への応用が期待され日本が強みを有している非侵襲的な計測の高度化に焦点を当てて課題を設定しました。倫理的・法的・社会的課題(ELSI)へ十分配慮しながら産業化へ向けて事業を推進します。

図5 ブレインテック・ニューロテック領域の取り組むべきテーマ例

 「量子センシング」は、量子現象を活用し従来不可能であった対象や超高精度計測を実現する技術で、データ駆動社会を支える「未来の感覚器官」として半導体、航空宇宙、防災、ヘルスケアなどへの応用が期待されます。本課題では、センサの原理的制約に対し、日本の強みである結晶欠陥などの革新材料技術やデバイスの小型化や高感度化技術に着目し、センシングデバイスの機能向上と事業化を見据えた産業展開への道筋を切り拓くことを目指します。

図6 ダイヤモンドなどNVC※3の計測対象と応用分野

 このたび、新たに追加した4領域において、各領域における研究開発課題について、技術開発から社会実装に至るまで一貫して推進するため、4名のPDを新たに指名しました。また、五つの研究課題ごとに研究開発テーマを公募し、合計26件のテーマを採択しました。

■2026年度に新たに指名したPD
 ・「海洋CDRの工業的技術開発」領域:山田 秀尚氏(NEDO TSC アドバイザー)

金沢大学 先端科学・社会共創推進機構 教授。2006年京都大学大学院 地球環境学専攻 博士課程修了。日本原子力研究開発機構 博士研究員、地球環境産業技術研究機構 主任研究員、奈良先端科学技術大学院大学 客員准教授を経て、2021年に金沢大学 准教授。2024年から現職。専門は物理化学、化学工学。CO2分離回収技術の研究開発に15年以上取り組み、基礎研究から実用化まで多くの成果をあげる。その功績から、米国スタンフォード大学とエルゼビア社のデータベース最新版で「世界で最も影響力のある科学者トップ2%」に選定。経済産業省ネガティブエミッション市場創出に向けた検討会委員、DACワーキンググループ座長、NEDO技術委員、化学工学会 基礎物性部会部会長、CCUS検討委員会委員などを歴任。

・「海洋ロボティクス」領域:吉田 弘氏(NEDO TSC アドバイザー)

1999年、金沢大学大学院にて博士(理学)取得。2002年に海洋研究開発機構(JAMSTEC)に入構以来、海洋ロボティクスおよび海中通信分野の研究開発に従事。自律型海中ロボット(AUV)を中心とした深海・極域観測技術の開発や、海中電磁波通信など新たな海中通信手法の研究を先導し、氷下観測や未踏海域探査を可能とする基盤技術の確立に貢献している。近年は、海洋観測とエネルギー・環境分野の融合領域にも取り組み、海洋におけるCO2回収や洋上システムの高度化など、カーボンニュートラルに資する技術開発を推進している。現在、海洋システムデザイン株式会社代表取締役、長崎大学客員教授なども務め、産学官連携を通じた海洋ロボティクス分野の発展に貢献している。

・「ブレインテック・ニューロテック」領域:茨木 拓也氏(NEDO TSC アドバイザー)

2013年東京大学大学院医学系研究科にて医科学修士課程修了。2014年同大学院脳神経医学専攻博士課程を中退し、株式会社NTTデータ経営研究所に入社。神経科学を基盤とした新規事業創出・研究開発プロジェクトに従事。2020年にはニューロスタートアップVIE株式会社の創業メンバーとして執行役員・最高脳科学責任者(CNTO)に就任し、スタートアップの立場からもニューロテクノロジーの社会実装をけん引。医療・ヘルスケア、製造業、人事、金融、コミュニケーション、経営など多様な産業領域で神経科学の応用と事業化の挑戦を続ける。日本神経科学学会産学連携推進委員、日本脳科学関連学会産学連携諮問委員など産学連携活動にも取り組む。2025年からNEDO懸賞金活用型プログラム「脳由来信号を活用した新システムの開発」の審査員。著書に『ニューロテクノロジー~最新脳科学が未来のビジネスを生み出す』。脳・神経・こころの科学とビジネスの橋渡し役として、産業界におけるイノベーション創出に取り組んでいる。

・「量子センシング」領域:大島 武氏(NEDO TSC 参事)

1994年筑波大学工学研究科物質工学専攻修了(博士(工学))。日本原子力研究所、日本原子力研究開発機構を経て、量子科学技術研究開発機構(QST)。2022年よりQST高崎量子技術基盤研究所量子機能創製研究センター(QUARC)センター長。専門は材料科学、結晶工学。半導体材料・デバイスの放射線効果およびワイドバンドギャップ半導体の欠陥エンジニアリング研究に長年従事し、現在、QUARCにおいてダイヤモンドや炭化ケイ素中のスピン欠陥を用いた固体量子センシングに関する研究を主導。SIP第3期「先進的量子技術基盤の社会課題への応用促進」サブプログラムディレクター(量子センシング担当)。東北大学工学研究科特任教授、筑波大学数理物質系客員教授。


図7 PD指名式の様子(左から山田氏、吉田氏、岸本センター長、斎藤理事長、茨木氏、大島氏)

■採択テーマ
(1)「天然水素」地下未利用資源の活用/天然水素の生成増進・回収実現に向けた研究開発

(2)「海洋CDRの工業的技術開発」ネガティブエミッション技術の導入/海洋CDRの工業的技術開発(低コストCO2回収技術)

(3)「海洋ロボティクス」自律化・省人化・デジタル化/海洋ロボティクスの省人化技術

(4)「ブレインテック・ニューロテック」脳・神経機能の回復・拡張や人機協働を実現するブレインテック・ニューロテック/脳・神経活動の非侵襲的計測の高度化とその応用

(5)「量子センシング」量子センシング/光格子時計・原子時計・ダイヤモンド等NVCの産業化に資する基盤技術開発

【注釈】
※1 フロンティア領域
将来的なポテンシャルが大きい一方で、技術開発や市場の不確実性といったリスクの高さ、巨額の研究開発設備投資の必要性などの理由で、国としては重点投資していきたいにも関わらず、個社だけでは投資が進みにくい領域です。
※2 GX分野
(1)脱炭素成長型経済構造移行推進戦略を踏まえて、二酸化炭素(CO2)の排出削減に向けた野心的な目標を掲げるなど世界規模でのカーボンニュートラルの実現および日本の産業競争力の強化のためのイノベーションを創出しうるものを対象とします。そのうち、太陽光・風力・水素などの非化石エネルギーの開発および利用の促進、次世代のリチウムイオン電池、非化石由来の原料に転換する革新素材、その他省エネルギー実現に資する半導体・革新素材・人工知能(AI)の開発などのエネルギー利用の高度化の促進。または事業所などから排出されるCO2の排出の抑制に係る事業であること。(2)脱炭素成長型経済構造移行推進戦略にある「国による投資促進策の基本原則」に則したものであること。以上を満たすポテンシャルを有する事業を含む分野です。
※3 NVC
Nitrogen-Vacancy Center(窒素-空孔中心)の略。

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