こども宅食の成果を示す「インパクト・レポート」を公開
文京区内の経済的に困窮する子育て世帯へ2ヶ月に1回定期的に食品をお届けしている「こども宅食」を運営する「こども宅食コンソーシアム」(https://kodomo-takushoku.jp/)は、文京区内約700世帯のこども宅食利用家庭に行ったアンケート調査結果をもとに、事業が生み出した効果・成果に加え、事業の実施状況や利用家庭の実態やニーズを取りまとめた、第5期(2021.10~2022.9)インパクト・レポートを公開します。
インパクト・レポートは2018年度分から毎年作成しており、今回で5回目となります。
※「こども宅食」は、経済的に困窮する子育て世帯へ、企業等から提供いただいた食品等を配送しています。配送をきっかけに子どもとその家庭を必要な支援につなげ、地域や社会からの孤立を防いでいく、新しい福祉の取り組みです。文京区が先駆けとなり、全国に広がりを見せています。
(認定NPO法人フローレンスは、文京区「こども宅食」のコンソーシアムメンバーです)

支援を行うだけではなく、社会的な効果や価値を評価し、事業改善に活かす
文京区とNPO等、7つの組織が官民協働で行う文京区こども宅食は、経済的に困窮する子育て世帯に食品等をお届けし、困り事があった際には必要な支援等につなげる活動を行っています。
また、その活動がどのような効果や価値を生んでいるかを評価し、事業改善に活かすため、こども宅食コンソーシアムでは以下の2つの目的を持って「社会的インパクト・マネジメント」を行っています。
1.社会的インパクト評価により、事業が生み出す社会的価値を可視化し、検証すること
2.社会的インパクト・マネジメントを通して、こども宅食事業の運営改善をすること
インパクト・レポートでは、利用者を対象に実施したアンケート等の分析結果をもとに、ロジックモデル(事業や組織が最終的に目指す変化・効果の実現に向けた事業の設計図)を用いた事業実施によるプロセス管理や、ロジックモデル上に設定した成果の検証を行いました。
[表1: https://prtimes.jp/data/corp/28029/table/288_1_c929a470a74fd5a0eb084b4541a59385.jpg ]
[表2: https://prtimes.jp/data/corp/28029/table/288_2_9c69a3708978f9869966e37e4ee87f97.jpg ]
この調査では、1.計画フェーズ、2.実行フェーズ、3.効果の把握フェーズ、の3つのフェーズごとに評価を行っています。
[表3: https://prtimes.jp/data/corp/28029/table/288_3_f7780caa2caf35ea59dac85e2a182c77.jpg ]
1.計画フェーズにおける評価:
82.8%の家庭が物価高騰やサービスの値上げを実感
周囲に知られないかたちでのアウトリーチ型支援は効果的
計画フェーズにおけるニーズ評価では、利用世帯の約80%が生活困難層(1.困窮層+2.周辺層)に該当することが確認されました。経済的な困窮に加えて、子どもの生活面(所有物、体験)においても厳しい環境にある世帯が一定数おり、「体験の機会」や子ども向けの物品の提供もニーズに対応していることが示されています。また、利用世帯の中には経済面、生活面で様々な課題を抱えている世帯や物理的・精神的な理由で一般的な支援が届きにくい人が一定数いることから、「周囲に知られないかたちで食品を送り、定期的な見守りや状況に応じた必要な支援につなげる」というアプローチは効果的であることが改めて確認されました。
今回は物価高騰が続く中、利用世帯への影響を知るため、アンケート項目を追加し調査を行いました。82.8%の家庭が物価高騰やサービスの値上げを実感しており、光熱費、野菜・果物の値上がりを実感している人が最も多いと分かりました。

さらに、新型コロナウィルス感染症の流行により、経済面、生活面への影響を長期にわたって受けている世帯や家計が急変した世帯が一定数おり、直接食品等を届けるアウトリーチ型(※)の支援がコロナ禍においてより一層有効であることが示されました。
(※アウトリーチ:福祉分野では、「支援が必要であるにもかかわらず届いていない人に対し、行政や支援機関などが積極的に働きかけて情報・支援を届けるプロセス」のこと)

2.実行フェーズにおける評価:
LINEを活用した情報提供・コミュニケーションの強化、多様化する利用者への対応
実行フェーズにおいては、利用世帯の既存の支援制度・サービスの利用率があまり高くないことから、情報へのアクセスが高まるようLINEでの情報提供を積極的に実施しました。その結果、情報提供を行う中で利用世帯から相談や問い合わせなどが届くようになり、利用世帯との双方向のコミュニケーションが取れるようになってきています。また、利用世帯が地域の社会資源にアクセスした結果、さらなる地域資源とのマッチングや支援制度へのアクセスにつながる事例も生まれています。

引き続き、日本語を不自由とする利用者に配慮した対応も進んできています。

3.効果の把握フェーズにおける評価:
「心理的ストレスの減少」に引き続き大きく寄与
利用者の約80%が他の社会資源につながる、何らかの行動を起こしている
事業の効果(アウトカム)については、保護者・家庭の「食事内容、食に関する課題が改善される」、「心理的ストレスが減少する」、「食費の負担が軽減される」「支援者との接点が増える」などの項目において顕著な結果が見られました。特に、「心理的ストレスの減少」においては、利用者の71%が宅食の利用により「社会とのつながりを感じる」と回答し、その68%が「この変化は宅食による影響である」と回答しており、あらためて、こども宅食の主要な成果であることが確認できました。

また、回答世帯の約56%に子どもの体験や所有物の欠如があることから、こども宅食では親子で過ごす体験の時間につながるよう、様々な「体験の機会」の提供を行っています。
今年度は昨年度に引き続き、多くの企業からの協力の元、オンラインでのワークショップ等の実施を続けると共に、オフライン・来場型の野球観戦イベントなども再開。 学用品や絵本など子どもの生活や学業の助けになる物品の提供企画も含めると、提供数は16企画、延べ722世帯(1073名)となりました。
「体験の機会」の提供を通して、利用者と多様な接点が生まれることにより、ご家庭での悩みの吐露や相談につながり、利用者とのコミュニケーションやさらなるサポートにつながるケースも生まれてきています。

さらに、こども宅食事務局からのLINEでの情報配信を受けて、約80%の利用者が情報へのアクセスや制度の利用など、何らかの行動を起こしていました。「支援者との接点が増える」ことにつながっている可能性が見えています。

実際、支援サービスを知っている、利用している割合の変化を見ると、多くの項目で、宅食利用経験者の利用率が未利用者(新規利用者)よりも高くなっていることから、宅食の利用経験が社会資源の認知・利用に一定寄与していることがわかりました。

子ども・若者貧困研究センター長 阿部 彩 氏の総評
文京区こども宅食の開始時からアドバイザーを務めていただいている東京都立大学教授/子ども・若者貧困研究センター長の阿部 彩 氏からは、以下のような総評を頂きました。
阿部 彩 氏(本プロジェクトアドバイザー/東京都立大学 人文社会学部人間社会学科 教授 兼 子ども・若者貧困研究センター長)
[表4: https://prtimes.jp/data/corp/28029/table/288_4_d058693d157cbb5bceae0d8c1baa2660.jpg ]
2023年度、文京区こども宅食事業が目指すもの
私たちは、今回のデータをもとに、引き続き食品のお届けをきっかけにつながりをつくり、見守りながら、必要に応じて地域の社会資源にもつなぐことを目指して、事業の改善・進化に努めてまいります。
2023年度も、ふるさと納税の仕組みを使って文京区こども宅食の運営資金を募っています。ご支援のほど、よろしくお願いいたします。
親子を孤立させない!7年目の「こども宅食」でつながり、見守り、支えていく。【文京区】
https://www.furusato-tax.jp/gcf/2245

【文京区こども宅食】
経済的に困窮する子育て家庭を対象に、2ヶ月に1度食品等を直接配送し必要な支援に繋げる取り組みで、2017年10月に開始しました。ふるさと納税による寄附を原資に、返礼品は用意せず、全額を事業運営に充てるもので、自治体・NPO等がコンソーシアムを形成して事業展開をしています。2023年6月現在、文京区内の児童扶養手当受給世帯など約700世帯が利用しています。

【こども宅食コンソーシアム】
構成団体:認定NPO法人フローレンス、一般社団法人RCF、認定NPO法人キッズドア、認定NPO法人日本ファンドレイジング協会、一般財団法人村上財団、ココネット株式会社(セイノーグループ)、文京区
設立:2017年10月
事業内容:官民協働の取り組みで、文京区内の18歳以下の子どもがいる生活困窮世帯(児童扶養手当受給世帯、就学援助利用世帯など)のうち、希望する世帯に食品等を配送する。
URL:https://kodomo-takushoku.jp/
※こども宅食は登録商標です