ユニセフ、人道支援の資金不足に警鐘

※ 本信はユニセフ本部が発信した情報をもとに、日本ユニセフ協会が翻訳したものです。
※ 原文は、http://www.unicef.org/media/media_83168.htmlでご覧いただけます。
【2015年9月10日 ニューヨーク発】
ユニセフ(国連児童基金)は10日、もし長引くシリアの紛争を終わらせ、暴力の被害を受けた何百万もの人々が必要とする人道支援を届けるため、一層の努力をしなければ、ヨーロッパへの難民・移民の問題は悪化をたどるであろうと述べました。
「私が話を聞いたシリアの人々はみな、口をそろえてこう言っていました。もし安心して平和に暮らすことができ、尊厳をもった扱いを受けられていたなら、シリア国内に留まっていたでしょう、と。しかし、彼らは自分自身の命も、子どもたちの命さえも危険に晒してでも、ヨーロッパに逃れようとしています。なぜなら、それ以外の道がなかったからです。シリアには、彼ら自身の、そして子どもたちの未来はないと判断したのです」とユニセフ中東・北アフリカ地域事務所代表のピーター・サラマは語りました。
シリアの紛争によって、およそ1,600万人が基本的な保健ケア、安全な水や衛生環境、教育といった命を守る支援と保護を必要としており、そうした人々の半数は子どもです。
ユニセフの報告では、シリア国内では現在200万人の子どもが学校に通うことができない状況にあります。さらにこの数カ月は、シリア国内で暮らす最大で500万人が、長期にわたる、また時には意図的に行われる断水に苦しめられてきました。WHO(世界保健機関)によると、シリア中の半数以上の公立病院が、十分に機能できていないか、完全に閉鎖しています。

一方で、5年近く前に紛争が始まって以来、シリア国外に逃れた人は400万人を超え、その半数は子どもです。EU(欧州連合)発表の最新のデータでは、今年ヨーロッパにたどり着いた最大の難民グループは、シリアからの人々であったことを示しています。ヨーロッパを目指して、またヨーロッパ内を危険な旅をするシリア難民たちの緊急ニーズへの対応は拡大されつつありますが、シリア周辺の国々では今も相当な支援ニーズがあります。現在トルコが一時的な保護の形で受け入れている難民は200万人近くに達しており、その数は2014年はじめの時点から3倍以上。一つの国のシリア難民受入数としては最大です。また、人口480万人のレバノンも、110万人のシリア難民を受け入れており、ヨルダンでは63万人が難民として登録されています。
紛争の被害を受けている人々の前には大変な困難が立ちはだかっているにもかかわらず、人道支援のための資金はそのニーズの大きさに対応できていません。ユニセフは、2015年のシリアとその周辺国での活動のため、9億300万米ドルの資金支援を呼びかけていますが、確保できた資金はその半分にも達していません。
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■ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。(http://www.unicef.org/)
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する36の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています
■日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国36の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 (http://www.unicef.or.jp/)