第8回WOWOWシナリオ大賞の受賞作が決定いたしました。応募総数482編の中から、大賞1編、優秀賞3編が選出されました。結果は以下の通りです。
<第8回WOWOWシナリオ大賞 受賞作一覧>
大 賞 :「双葉荘」 川崎クニハル氏
優秀賞:「タクハイ・ドライバー」 大谷洋介氏
「駱駝色の女」 ネオ・ポフスキー氏
「姐さん」 堀脇れいく氏
大賞の川崎クニハル氏には賞金500万円、優秀賞の大谷洋介氏、ネオ・ポフスキー氏、堀脇れいく氏には、それぞれ賞金100万円を贈呈いたします。
また、今回の大賞受賞作「双葉荘」については、2015年度内のドラマ化に向けて制作に入る予定です。
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<第8回WOWOWシナリオ大賞 選評>
選考委員長 崔 洋一氏(映画監督)
第8回の選考を終わり、見果てぬ夢、と言えばやや大仰ではあるが、この大賞は野心と希望に満ちた書き手、そして、私たち選考委員との真剣なコラボレーションであったのは言うまでもない。同時に、現在そのものを照らし出すエンターテインメントへの新しき扉たる自負を自覚しつつ、良質なプロダクト・アウトを目指し続けるものである。
大賞「双葉荘」(川崎クニハル氏)は、ふとした弾みで画家のゴーストと同居してしまう若い夫婦の物語である。曰くありげなメゾンが舞台なのであるが、これが魅力的だ。隣人の所在なさげな女もまた、どこか妖しい。現在が追憶へとワープし錯綜し、夫婦の齟齬と乖離は深まる。サスペンスからファンタジーへと昇華する展開はロマンチック・ホラーの面目躍如である。
優秀賞「駱駝色の女」(ネオ・ポフスキー氏)の屈折した男と女のネオ・ロマネスクは陰影深い大人の物語。独特のエロチスムが人間関係の希薄さと裏腹の執着を混在させ、現代を照射する。
同じく優秀賞「姐さん」(堀脇れいく氏)は異彩を放つ時代劇。実在の隠れキリシタンの少女をその原像とするが、少女の神への不信が物語を圧倒的に引っ張っていく。同じく優秀賞「タクハイ・ドライバー」(大谷洋介氏)の青春物語は爽快であり喜劇性も高い。ある種のルーティンなのだが、エンターテインメントの分かりやすい方法論としてこの道をより深く進化させて欲しい。
来季への期待も高まるところだが、より一層、オールジャンルなおかつオリジナリティーあふれる物語を希求し、総評とします。
選考委員 大石 哲也氏(脚本家)
作家の思いや語り口の個性が、昨年ほど感じられませんでした。テーマの考察や物語のスタイルもありきたりで既視感のあるものばかり。この程度でいいのでは?と最初から高を括ってるような気がしてなりません。大賞に推せる作品は正直ありませんでした。斬新な切り口と勢い、ありきたりですけど次回の応募作品に求めるのは、その二つです。
大賞の「双葉荘」は上質な短編小説のような、味わい深いファンタジックミステリーでした。話の奥行きがもっと広がれば、更に面白く出来るのではないでしょうか。「姐さん」はとても完成度の高い作品で、ヒロインのキャラクターがとても魅力的でした。要所要所を的確に、効果的なエピソードで描いており、作家の力量を感じました。「タクハイドライバー」は不発弾の誘拐、脅迫というアイディアが秀逸で、それぞれのキャラもチャーミングでした。それなりに面白くは読めましたが、テーマも展開もステレオタイプという印象を拭えませんでした。「駱駝色の女」は面白くなる要素が多々ありましたが、どれも消化しきれておらず、非常に勿体ない気がしました。
選考委員 渡辺 千穂氏(脚本家)
残念ながら、「絶対にこの脚本を推したい」という作品がなかった。せっかく面白くなりそうなテーマや視点をみつけているのにシナリオが追いついておらず、小さくまとまり、その結果、印象に残らないという惜しい本が多々……。こちらは結末を予想しながら読み進めていくわけですが、やはり予想通りの本が多く、良い意味での裏切りがない。せっかくのチャレンジなのだから、最後にもう一捻り、二捻りのアイデアを頑張って頑張って絞り出して欲しい。それこそが、「この本を書こう!」と思ったあなたの原動力に足される最後のスパイスとなり、全体の魅力を増してくれるはずです。
今回、大賞となった「双葉荘」は、基本的なプロットが面白かった。
この本がどう修正され、映像化されてゆくのか、楽しみです。
全体を通し、タイトルが勿体ないという本も多々あった。名は体を現す。タイトルは掴み。大切です。パワフルな本、キュートな本、心が揺さぶられるような本に出逢いたいです。
選考委員 野村 正昭氏(映画評論家)
大賞受賞作「双葉荘」は<現在と過去が同一の生活空間で繋がっている>という趣向が面白かった。オチも洒落ているし、作者は若い人かと思っていたら、実年齢を知って驚いた。感性の若さは年齢じゃないんだなあと改めて思い知らされた。優秀賞3作も甲乙つけがたい出来栄えで、「タクハイ・ドライバー」の軽快なテンポの良さ、「姐さん」の浦上天主堂の史実を背景にした重厚な語り口、「駱駝色の女」のヒロインの女教師のミステリアスな二面性は、それぞれ難点はあるにせよ、技術的には申し分なく、力作揃いという印象が残った。最終選考に残った10作は、そのままとは言わないが、どれも十分映像化可能なものばかりだった。例年に比べて、応募作全体の水準は確実に上がっていると思う。
但し、題名は作品の顔なのだから、受賞作を含めて、どれも、もう一考してほしかったし、これだけは譲れないという作者の志が、もう少し見えれば何もいうことはないのだが。
以 上