2027年2月・4月、松屋銀座デザインギャラリー1953にて優秀作の企画展を実施
日本デザインコミッティーは1964年以来、約60年に渡り「デザインギャラリー1953」
を運営してきました。45平米のコンパクトな空間でありながら、銀座の一等地に位置し、
開催した展覧会は800回を数え、現代の日本のデザインの潮流を切り開いてきました。
この歴史ある空間で、デザインの思想・領域・品質を未来志向で前進させるために、
第一回「DESIGN GALLERY AWARD」を開催し、このたび優秀作品を決定いたしました。
その発表として2027年2月および4月の2期にわたり、松屋銀座7階デザインギャラリー1953
にて企画展を開催いたします。

第一回「DESIGN GALLERY AWARD 」選考結果
個人・団体を合わせて全106件(個人応募:70件/団体応募:36件)に及ぶ意欲的な作品・提案が集まりました。
選考にあたっては、日本デザインコミッティーの選定委員(深澤直人、原研哉、内藤廣、佐藤卓、須藤玲子)により、デザインの美しさや機能性のみならず、その提案背景にある思考の深さや社会に対する問いかけ、将来的な展開可能性などを多角的な視点から厳正に審査しました。
熟考を重ねた結果、次代のデザインのあり方を象徴する特に優れた2作品を「優秀作」として選出しました。

展覧会概要
受賞した優秀作は、デザインギャラリー1953の企画展として二会期に分けて順次展示、発表いたします。
【第一期展示】
2027年2月17日(水)-4月12日(月)
第802回デザインギャラリー1953企画展
「小野栞・空間の輪郭展」
デザインギャラリー 1953 に「何もない」と感じられる空間をつくります。
私は、「何もない」と感じる余白のある空間は、居場所になると考えています。
なぜなら、特定の用途や誰かのためではない空間は、多くの人が自由に関わることができるから
です。本企画では、空間からものを取り除いて空っぽにするのではなく、「何もない」と感じられる作品を展示することで、その余白を生み出します。
展示する作品は、ステンレスワイヤーを一本の糸のように用い、手編みによってギャラリーのシルエットを象った大型の立体作品です。
ギャラリーという空間そのものを「かたち」として捉え直すことで、「何もない」と感じられる空間を立ち上げます。
その「何もない」と感じられる空間は、「誰か」や「何か」を受け入れる余白となり、それぞれの居場所のひとつになることを目指します。




小野栞 アーティスト/デザイナー
1本の糸から編みや織りなどのテキスタイル技法を用いた作品を制作。国内外での作品展示の他に、テキスタイルや衣服のデザイン・制作を行う。第57回日本クラフト展経済産業大臣賞・日本クラフト大賞受賞。
主な展覧会、2025年「DESIGN LIVE EXHIBITION」東京ミッドタウン、2023年「Material, or 」21_21 DESIGN SIGHT、他。東京造形大学非常勤講師。
「小野栞・空間の輪郭展」選定委員からのメッセージ
(深澤直人)
資材が何であろうと糸という。糸は限りなく細くなりたいという願望があるのがわかる。
それを織ったり紡いだりするとそれは布になる。布も糸も空気のように漂うことは空気の流れが視覚化されたもののように感じるがそれは煙ほど繊細ではない。作者が言っている輪郭というのは空気の視覚化で、目に見える空気の比喩のように聞こえる。人は重力から逃れて空気のような存在になりたいと思っていると思う。
(内藤廣)
表現することは、必然的に「有ること」を主張する。あらゆる作品が「有ること」を際立たせようとするのに対して、この作品は「無いこと」や「不在」を作品化している。その「無いこと」の表現を、執念とも言える手作業で実現しているところが凄い。個人的な感想だが、この儚さと純粋さと白さは、ハン・ガンの小説が生み出す空気に重ねられるように思った。この「美しさ」を見てみたい。
(原研哉)
「余白」の捉え方に評価が集まりました。おそらくは、目に見えないほどの微細な編み物をギャラリー空間に配することで生まれる、未知なる気配に、これまでの展示にはない感覚が息づいてくると感じます。手で編むことでしか実現できない、きわめてあえかで物質感の希薄な「膜」のようなものを生み出そうとする姿勢に、この作家が見ようとする造形の姿があります。すでに衣服の形をしたオブジェクトを通して緻密な仕事をしていますが、ここではさらに一歩踏み込んだ編み物のあり方を通して、新しい空間のリアリティを目指そうとしているように感じます。ギャラリーにおける展示のあり方を更新する意味で、このアワードにふさわしいプロジェクトではないでしょうか。
(佐藤卓)
この展示の企画書には、「何もない」と感じられる空間をつくることと書かれていた。そんなことがはたしてできるのだろうか。この企画は0.06mmという極細のステンレスのワイヤーを使い、手編みで生地をつくり、それにより空間をつくるという試みである。以前にも作品は拝見したことがあり、コンクリート壁を背景にしたその空間は、信じられないほど繊細で美しかった。確かにそこは、存在がないようなあるような、不思議な空間だったのを覚えている。それを百貨店の中の小さなギャラリーで展開した時、どんな空間になるのか見てみたいという衝動が、私がこの提案を選出した理由である。1つ1つの展示を丁寧に見てもらうという既存の展示とは全く異なった実験的な提案を、このアワードが受け入れたということだ。
(須藤玲子)
「編み」という原始的な構造を、丁寧な手仕事と考え抜いたコンセプトにより、高い次元の表現を拓いてきた作家である。かつて、「美しさと素材の密接な結びつき」「繊細さの中にある強さ」と評された彼女の表現は、本企画では「空間の輪郭」へと拡張された。 ギャラリー空間を包み込む構造体により、「何もない」余白を創出する本作は、視る人に何かの姿勢は求めない。理屈を超え、「作りたい」という熱量が生むモノ作りの原点が、手仕事による空間の新たな可能性を切り拓く。卓越したクリエイティビティを高く評価した。
【第二期展示】
2027年4月14日(水)-6月7日(月)
第803回デザインギャラリー1953企画展
「鈴木結菜・Structure as package 補完し合うかたち展」
本展は「卵つと」がはらむ合理性・造形性を見つめ直す展示です。
「卵つと」とは、かつて高価な食材であった卵を
藁という日常的に入手可能でかつ廃棄される素材を使い、保全性に優れた状態で合理的に卵を運ぶために編み出されたパッケージです。
現代では藁は高価になってしまったため、代用品として紙紐を用い、紙紐の伸縮性を活かしつつ、卵を運ぶことを目的とした包む造形を再検討します。
「包むこと」に実直に向き合うと合理性にぶつかりますが、それは必ずしも装飾性がなくなることには繋がらないように感じています。
「包むこと」を考えた末での新しい造形を、鑑賞される方に投げかけたいです。




鈴木結菜 デザイナー
1994年静岡県生まれ。
京都市立芸術大学美術学部デザイン科ビジュアルデザインコースを卒業後、2021年に武蔵野美術大学大学院造形研究科基礎デザイン学コースを修了。
同年より株式会社日本デザインセンターに入社。
グラフィック・プロダクト・展示空間などのプロジェクトに関わる。
「鈴木結菜・Structure as package 補完し合うかたち展」選定委員からのメッセージ
(深澤直人)
卵が線状のもので包まれるとやや不気味な物体が助長される。卵が白かった時代よりも茶色くなった方が気味悪さがなくなった。この作品には不気味さがある。包むという機能だけではなく存在が顕になる。気持ち悪さの探求と誤解してしまうほど美しさもある。
(内藤廣)
「卵」というのは特権的な素材だ。誰でも手に取ったことがあり、その硬さも重さも脆さも、我々の手の感触が知っている。それを紙紐で包み、それがそのまま造形になっている。ユニークな発想と造形力は、多くの人を驚かせるだろう。「卵」を介在させることによって、創作者が生み出す造形とそれを見る観客との間の感情のやり取りを豊かなものにするだろう。
(原研哉)
わかりやすく、そして美しい。「なってきたかたち」のその後を探究する姿勢を応援したいと感じました。暮らしの中で育まれた民芸的な包装のかたち「卵つと」に触発されての研究だと思いますが、紙紐と包まれる対象物との相関で生まれる「包む/包まれる」関係を丁寧に見つめ、さらなる可能性を追い求め、食い下がっていく視点と姿勢に共感を覚えます。作者が語っている通り、包装の合理性は外観の魅力を考慮しないことではなく、包む/包まれるという様相そのものが見ごたえのある造形物として立ち現れてくる点に「卵と紐」のかたちの妙があります。人の手による工夫と、先細った長楕円の相剋は、現代においても、見る者の目を釘付けにする何かを持っています。
(佐藤卓)
藁を使った伝統的な卵のパッケージ「卵つと」を、紙紐を使ってさらに可能性を探る展示は、素直に美しいだろうと思った。そして企画書では簡単に触れられていたが、包むことの合理性と装飾性の関係についての指摘は、実は奥深い。ガウディーの建築がただ単に装飾的ではなく自然の摂理に基づいて造られているという話は有名である。現代はとかくシンプルでモダンな生活空間が推奨されがちだが、味気ない空間やデザインが心地よいかと問われれば、そうではない気がする。モダンデザインだけが生活空間を豊かにするのかという問いともに、この展示に期待したいと思う。
(須藤玲子)
鈴木結菜氏は「組む」という手仕事の構造的・造形的可能性を、極めて高い完成度で探求する作家である。本企画では、米作の藁から生まれた生活の知恵「卵つと」が持つ合理的な機能と美しい構造に着目し、素材を現代の紙紐へ置き換え、その本質を再解釈している。 驚愕すべき手仕事により産み出される造形は、単なるパッケージの領域を逸脱している。小作品からギャラリー空間を構成する巨大な立体展開に至るまで、理にかなった構造を形成している。手仕事が持つ、新たな建築構造、立体表現への展開の気配と可能性を強く予感させた。
【主催者メッセージ】日本デザインコミッティー理事長 田川欣哉より
第一回「DESIGN GALLERY AWARD」に、106件もの応募をいただきました。まずは、ご応募くださった皆さまに心より感謝申し上げます。
どの作品にも、つくり手の高い熱量と、独自の視点から立ち上げられたオリジナリティの高い提案が込められており、一つひとつを拝見しながら、日本のデザインの現在地とその厚みを実感いたしました。選定委員のあいだでも、それぞれの作品をめぐって白熱した、実に充実した議論が交わされました。
このアワードはまだ始まったばかりですが、800回を超える展覧会を重ねてきたデザインギャラリー1953という場を起点に、つくり手の皆さんとともに、デザインを一歩ずつ前へ推し進めていきたいと考えています。優秀作の企画展にご期待ください。
【優秀作受賞者来場 取材会実施予定】
2027年2月17日(水)第一期展示初日前に受賞者をご紹介させていただく予定です。詳細は後日ご案内いたします。
■デザインギャラリー1953について
松屋銀座7階・デザインギャラリー1953(〒104-8130 東京都中央区銀座3-6-1)
1964年に松屋銀座7階に開設されたデザインのためのギャラリーです。企画から運営までメンバーが手がけ、現在、年間5本のペースで開催。
バラエティー豊かな展覧会は毎回多くの人びとの関心を集めています。



Photo by Nacasa & Partners Inc.
■日本デザインコミッティーについて
日本デザインコミッティーは、戦後の日本デザイン界を牽引したデザイナーや建築家、評論家らによって1953年に設立されました。創立メンバーには、岡本太郎、丹下健三、柳宗理など、日本のデザイン史を築いた錚々たる顔ぶれが名を連ねています。
以来73年にわたり、『デザインの啓蒙』という理念のもと、松屋銀座を拠点に、各分野の第一線で活躍するデザイナー、クリエイターたちが自主的に活動を続けている、他に類を見ない組織です。

Photo by Yoshihiko Ueda
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