金沢大学×ダイセル バイオマスバリューチェーン実装を加速
金沢大学(石川県金沢市,学長 和田 隆志)と株式会社ダイセル(本社:大阪府大阪市北区,代表取締役社長 榊 康裕,以下, ダイセル)は,国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する「官民による若手研究者発掘支援事業/契約学科型」に,連携して申請した「バイオマスバリューチェーン実装を加速する物質分離・変換・機能化技術の研究開発」が採択されました。
本事業は,実用化に向けた産学連携体制での研究開発の実施を支援することにより,次世代のイノベーションを担う人材と新産業の創出に貢献することを目的とした最大6年間の事業です。
金沢大学とダイセルは,これまで,バイオマス資源の高度利用に関する研究開発を継続的に推進してきました。令和5年には共創型の研究開発拠点である「金沢大学バイオマス・グリーンイノベーションセンター(以下,BGIC)」が稼働し,産学が一体となった研究開発体制のもと,持続可能な循環型社会の実現に向けた取り組みを深化させてきました。
本事業の採択を受け,研究開発と人材育成に一体的に取り組み,新産業の創出に貢献するとともに,地域産業をけん引し,国際社会で幅広く活躍できるイノベータ型専門人材の養成を推進し,「真の循環型社会の実現」という世界共通の社会課題解決を目指します。
【実施機関】
金沢大学 https://www.kanazawa-u.ac.jp/
金沢大学は,ダイセルから支援を受けて,循環型社会実現と社会課題解決を目指す共創研究拠点である金沢大学バイオマス・グリーンイノベーションセンター(BGIC)を創設しました。本施設では,バイオマス(天然由来素材)による脱石油社会の実現,森林資源の活用への転換,生産プロセス自体の革新など持続可能な循環型社会の実現を目指しており,異分野融合,異業種連携など産学官,業界の壁を越えた共創により,新たな価値の創造,研究成果のスピーディーな社会実装を推進しています。
株式会社ダイセル https://www.daicel.com/
株式会社ダイセルは,本年5月22日に発表した新中期戦略「Accelerate 2030」においてバイオマスバリューチェーン(木材原料を余すことなく利用し高付加価値化)と環境に優しいソリューション(CO2をCOへ還元/太陽光超還元(R))の提供を,重点取り組み(夢を実現するアイテム)として位置付けています。
本事業を通じ,金沢大学との連携のもと,研究成果の社会実装を加速するとともに,研究から開発,市場開発,工業化へとつながる一貫した価値創出プロセスを推進し,その過程を担う高度人財の育成に貢献します。
【本事業の目的】
本事業では,BGICで展開してきた産学連携を軸に,「真の循環型社会の実現」という世界共通の社会課題解決を目指し,バイオマスバリューチェーン実装を加速する物質分離・変換・機能化技術の研究開発と人材育成を一体的に推進します。
【研究開発の内容】
BGICでは,以下の目標を掲げ,持続可能な資源循環の実現を目指しています。
・森林資源の活用
・環境に優しいプロセスによるバイオマスの機能化とその製品化
・CO2再利用によるカーボンニュートラルへの貢献
この目標を実現するために3つの研究課題を設け,10年先を見据えた技術の継続的な改良と,それを支える次世代の専門人材育成を統合した,柔軟かつ強固な事業基盤の確立を目指します。
研究課題1.セルロース系高選択性金属吸着材の開発
金沢大学・ダイセルの共同研究によって,セルロースに化学的な加工を施すことで,有用金属や有害金属を選択的かつ高効率に吸着できる材料を開発してきました。これらは,金属を吸着させた後に燃焼するだけで有用金属を回収することができるだけでなく,廃棄物の発生量を大幅に低減することが可能です。
本事業では,これまでの研究開発成果を体系化するとともに実用化に向けた低コスト化,プロセス最適化,市場開拓を行います。
研究課題2.新規イオン液体と酵素・発酵技術を利用したバイオマスの成分分離と利用法開発
金沢大学は,酵素や微生物の働きを維持したまま,セルロース等の多糖類を溶解可能な新規イオン液体の開発に成功しています。本イオン液体は,従来両立が困難であった「バイオマス成分の溶解」と「酵素反応・発酵の適用」を同じ工程内で行える点に大きな特徴があります。これにより,バイオマスから多糖類を選択的に溶解し,イオン液体中で酵素糖化及びアルコール発酵を行い,温和な条件で1つの容器でエタノールを生産するプロセスを構築することが可能です。
本事業では,この新規イオン液体の研究成果をベースに溶解・分離・利用一体プロセスの開発を行います。
研究課題3.太陽光超還元(R)によるCO2変換技術基盤の開発
金沢大学・ダイセルが共同で開発を進めてきた太陽光超還元(R)は,太陽光を反応駆動源とし,電極表面から電子を自発的に放出させ,極めて高い還元力を有する溶媒和電子を生成する独自の反応スキームを特徴としています。この手法は,外部電力への依存を大幅に低減しつつ,従来は熱力学的に還元が困難であった対象物質を還元し得る点で,革新的なアプローチとして注目されています。
本事業では,この太陽光超還元(R)を産業実装するための研究開発を行います。
【産学一体による人材育成】
BGICが目指す真の循環型社会の実現には,要素技術にとどまらず全体プロセスを俯瞰し,社会実装までを見据えて研究開発を推進できる高度研究者・専門技術者が不可欠です。
本事業では,金沢大学大学院自然科学研究科にて,産学連携によるカリキュラムを設け(令和10年4月開始予定),株式会社ダイセルの研究者が教育・研究指導に参画し,社会実装まで見据えた実践的な教育を実施します。
【本事業の効果】
・金属資源の循環とバイオマスの全成分利用,CO2の資源化により,環境負荷の低減と資源の有効活用に繋がります。
・国内で完結する国際競争力の高いバリューチェーン構築に寄与し,国際情勢といった外部環境に左右されない産業基盤の確立に繋がります。
・本事業で開発された技術を幅広い分野で活用できる基盤技術として展開することで,ライセンス収入の創出,地域経済への貢献と雇用創出,高度人材の育成をはじめとした,経済的・社会的価値の最大化に繋がります。
※「太陽光超還元(R)」は株式会社ダイセルの登録商標です。
事 業 名:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
「官民による若手研究者発掘支援事業 /契約学科型」
事業概要:企業が資金及び人的資源の提供等を通じて,大学等の研究に主体的に参画し,学位プログラムを大学等と協力して設置・運営する(契約学科)ことで,産学連携による目的志向型の創造的な基礎又は応用研究を実施しつつ,産学連携を志向する若手人材もあわせて育成する枠組みについて補助を行う。
事業期間:2026年度から2031年度(最大6年間)
Webサイト:https://www.nedo.go.jp/koubo/SM2_100001_00119.html
