伝統工芸の技法に根ざした、絹本への抽象的なペインティングで内なる祈りと直感の世界を表出する山田晋也氏が、京都・建仁寺塔頭、両足院で2度めとなる個展「うちにあるもの ‒Representation‒」を7月16日(土)～24日(日)の期間、開催している。

「うちにあるもの ‒Representation‒」について

2020年の「胎内衆会『ぼくらは何処にかえるのだろう？』」では、両足院の方丈内陣を黒い絹本で覆うインスタレーションによって、観客を、本尊・阿弥陀如来を視覚でなく気配で感得させる体験へと導いた。

「うちにあるもの ‒Representation‒」では、両足院の古材を枠に用い、山田氏が抽象画を描いた絹本を張った中に、仏像と灯火を包み込んだオブジェ『影向(ようごう)』(※)をAntiques＆Art Masaが制作。

夕闇に満たされた両足院の方丈に、いくつもの「見えない浄土」が浮かび上がるかのような景色を描く。通常非公開の夜の両足院の静寂の中、内省と問い、直感の縁起がむすばれる。

絹という素材

今回展示されるインスタレーション、平面作品、オブジェ『影向(ようごう)』で山田氏が用いるのは、帯図案を描くための特殊な絹本。

裏から打った箔を透かせた上に図画を重ね見せるため、日本画材の絹よりもはるかに薄く、扱いもきわめて難しいもの。着物メーカーでもある山田氏が深い敬意を注ぐ絹は「胎内と浄土―うちとそと」「覆うことで、内に深く感じる」という山田氏のパーマネントなテーマを表現する上でも、欠かせないものだ。

アーティストプロフィール

山田晋也氏は、1974年京都生まれ。豊和堂(京都市上京区)アートディレクターとして、国宝をはじめ数々の歴史的な重要染織品の復元、奉納をおこなう。『ぼくらが日本を継いでいく(琳派. 若冲. アニメ)』展(2017～2018年京都高島屋、新宿高島屋)『ゲゲゲの鬼太郎と比叡山の七不思議展』(2019年比叡山延暦寺)では、染織工芸技術とポップカルチャーを融合させた。

「自分のうちにあるものと、他人のうちにあるものの対話をしてみたい」との山田氏の思いを感じることのできる「うちにあるもの ‒Representation」へ足を運んでみては。

■うちにあるもの ‒Representation
会期：7月16日(土)～24日(日)
開場時間：17:30～21:30
会場：両足院(建仁寺山内)
住所：京都市東山区大和大路通四条下る4丁目小松町591
入場料：無料

※ようごう：仏教用語。神仏が仮の姿をとって現れること。“影に向かう”という語意をとらえ、闇の中で真実を感得するためのオブジェの名として、用いている。