心理学書を中心に教育学や幼児教育・保育の専門図書を発行する北大路書房から、教育学、教育心理学の最新書『自立的で相互依存的な学習者を育てる コレクティブ・エフィカシー』3,080円(税込)が、10月27日(金)より発売中だ。
著者は、ジョン・ハッティ氏、ダグラス・フィッシャー氏、ナンシー・フレイ氏、シャーリー・クラーク氏。
集合的効力感が、子どもの学びを強く育む
子どもの学びやそのモチベーションに関わる非認知能力の一つとして、セルフ・エフィカシー(自己効力感)が近年注目されている。セルフ・エフィカシーとは「ある状況に置かれたときに、必要な行動を遂行できるという自分の可能性についての自信(信念)」のこと。それと対をなすものとして「個々が一致団結して課題を克服し、意図した結果を出すことができるという集団の可能性についての自信(信念)」のことをコレクティブ・エフィカシー(集合的効力感)という。
今回発売された『自立的で相互依存的な学習者を育てる コレクティブ・エフィカシー』では、セルフ・エフィカシーだけではなく、コレクティブ・エフィカシーが十分に発揮されることによって、子どもたちの学びが強く育くまれると強調されている。
同書は、コレクティブ・エフィカシーに注目し、コレクティブ・エフィカシーが子どもにとってどのような場合に威力を発揮するのか、コレクティブ・エフィカシーの恩恵を最大化するための条件をどのように整えるか、そしてどのような課題の属性が集団の活動に最も資するのかをVisible Learning(可視化された学習)研究の確かな知見に基づき解説した一冊となっている。
「私」スキルと「私たち」スキルが重要
子どもたちがコレクティブ・エフィカシーを発揮するには何が重要となるのだろうか。Visible Learning(可視化された学習)研究で著名な同書の原著者であるジョン・ハッティ氏は、「私」スキルと「私たち」スキルが重要となると述べている。
「私」スキルとは、エージェンシーやレジリエンス、コミュニケーションスキル等、「私たち」スキルは、共通の信念をもつことや社会的感受性、潜在力等であり、それらが具体的にどのようなスキルかが同書では説明されている。これらは2つに分離し独立しているのではなく、むしろ互いに補い合うものであり、これらが結集したときに、子どもたちはグループでの取り組みや成功に貢献するスキルや確信をもてるようになるのだという。
「私」スキルと「私たち」スキルが相互作用的に高まり、コレクティブ・エフィカシーが向上することによって、グループだけではなく個人の自信(セルフ・エフィカシー)を高めることにもつながる。同書の後半では、それらのスキルを高める学習や課題をどのように設計するか、コレクティブ・エフィカシーをどのようにアセスメントするのか等が具体的に解説されている。
子どもたちの学びを力強く育むコレクティブ・エフィカシーについて書かれた『自立的で相互依存的な学習者を育てる コレクティブ・エフィカシー』を、この機会にチェックしてみては。
書籍詳細:https://www.kitaohji.com/book/b633818.html
(江崎貴子)