日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、栃木県旧烏山町(那須烏山市)を写真とともに紹介する。
Vol.124/栃木県旧烏山町(那須烏山市)
旧烏山町では、那須烏山市で有名な「山あげ祭」と呼ばれるお祭りがある。曳山祭とは少し違い、網代(あじろ)状に組んだ竹枠と、烏山特産の和紙を用いて組み立てられた「山」を舞台背景に、移動式の野外劇が披露されるのだ。お祭りについて知ることができる、「山あげ会館」にも訪れた。
その前に二つの場所も訪れた。まずは「龍門の滝」だ。観光地として知られている滝であり、50メートルぐらい離れているはずなのに、風下なら水飛沫が飛んでくるほどの勢いがあった。
次に、島崎酒造さんのどうくつ酒造へ向かう。祝日だったのでちょうど開いていた。名前の通り、なんと洞窟の中に酒蔵があるのである。
この洞窟は戦車製造のための地下工場になる予定だったところ、すぐに終戦を迎え、平成19年から島崎酒造の清酒の貯蔵庫として生まれ変わったそうだ。洞窟にもいろんな活用法があるものだと、甲子園ぐらいの敷地を持つ洞窟を歩きながらつくづく驚いた。
山あげ会館ではお祭りの資料展示だけではなく、ミニチュア劇やお祭りの動画も観ることができた。その中でも動画は、お祭りの準備から当日までを追った内容になっていて、すごく面白かった。たくさんの長い準備を経てお祭りを迎える一連の流れを、ぼくが「長い準備」と簡単にいうことはできても、実際にはもっと想像もし得ない大変さがあるはずだ。だからこそ、誇り高き祭りでもあるのだと。
「山あげ祭は生活の一部、誇り」と動画の最後のナレーションをそのままに感じられたのだった。山あげ祭に行きたくなったし、お祭りそのものに関わっている人を羨ましいとも思った。お祭りは生まれ、育ち、暮らし。その土地に関わるかどうか、不思議な因縁が大きく関わっている。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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