日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、福島県旧東村(白河市)を写真とともに紹介する。
Vol.246/福島県旧東村(白河市)
白河市の東に位置する、旧東村へ。旧表郷村、旧大信村と同じタイミングで合併したが、旧東村の方々は、地域を大切に思っているということを伺った。夜に「ホタルまつり」へ伺うことになったのだが、その車中で話を聞いたのだ。そして、ほんとうにそうだと思った。自分たちの土地を誇りに思っていること、明るく過ごそうということ、そうした強さをのちに感じたのだった。
まずは昼間にまちを散策する。村社の鹿島神社を訪れた。古い石段を登った先に社殿があり、その両端に構える狛犬は見たことのない美しさだった。小松寅吉という名工が彫った狛犬だそうで、躍動感、細部の意匠、技術が狛犬に乗り移っていた。
宿泊していたゲストハウスに戻り写真を整理していたとき、ひとつ年上の男性と出会った。とても素敵な方で話も盛り上がり、そのとき、「今日、ホタルまつりがあるのを知っていますか?」と、聞いてくださった。
そうだ、思い出した! 知っています。なぜなら今日、旧東村を訪れたときにお祭りの看板を見ましたから!「今日かあ!」って。でも、市街地からはちょっと距離があるし、スーパーカブでは現実的ではないと思っていた。ちょうど先週は、茨城県でホタルまつりを逃した。でも、このタイミングで、その質問をいただいて、「行きますか?」の返答をもらったとき、それはもう、すごくうれしかった。その男性は別のご予定で行けなかったのだが、別の方の車で連れ出してくださることになった。
会場はただのホタルまつりではなかった。さまざまな出店が並び、地元の蕎麦も振る舞われている。さらにホール内では音楽隊の演奏が披露され、ホタルまつりというよりも大きなお祭りだ。何より、この場にいる人たちが、みんなすごく楽しそうで、なんて素敵な場なのだろうと。
そして、いよいよホタルを見に行こうという前に、夜空に
「ドーン!!」
と花火が打ち上がった。
まさかの、打ち上げ花火だった。感動しっぱなしである。
ホタルを見に行ったのは、プログラムの最後の最後だった。水田に飛ぶ蛍を、みんなで静かに愛でた。たくさん飛んでいて、その喜びをみんなで共有する。
帰ってきたあと、「また遊ぼうね〜!」「おやすみ〜!」「バイバイ〜!」の声が会場で響いていた。とてもいい夜だった。素敵な思い出になった。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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