日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、岩手県旧沢内村(西和賀町)を写真とともに紹介する。
Vol.349/岩手県旧沢内村(西和賀町)
旧湯田町から北へ進み、旧沢内村へ向かった。奥羽山脈の山懐であり、西端を秋田県に接する。雨はずっと降り続き、少し肌寒い。まだ開館前ではあったけれど、旧沢内村には「深澤晟雄資料館」という施設がある。深澤晟雄さんは当時、沢内村だった頃の元村長で、村民のため医療を中心に、誠心誠意の力を尽くした人物だ。深澤さんには本気で村の将来を思って人生を捧げた、偽りのない信念があった。だからこそ資料館も残されていて、そうした信念は消えない。生きていく上で、その人そのものの在り方というものは、とても大切なものだと考えさせられる。
そして、市街地を巡っていると、交通安全の看板がいくつも設置されていて、旧沢内村の名残を感じる場面が幾度かあった。トンネルが近ければ、「早め点灯」の文字が並び、飲酒運転をしないための看板にも「徹底」の文字が目立ち、「シートベルト着用日本一の村」というかつての看板も目立った。ぼくは初めて訪れる場所なので、「村の団結を感じた」なんて簡単に言うのは大間違いだろう。でも、深澤元村長をはじめとした方々が築いてきたであろう土地の気配が、意識というものに引き継がれているような気がした。そして、それは素晴らしいものではないかと。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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