
▪️概要
生成AI検索対策のためのプラットフォームを提供するQueryLift株式会社は、国立大学法人筑波大学 ビジネスサイエンス系の吉田光男准教授と、生成AI検索における情報流通および引用構造に関する共同研究を開始しました。
ChatGPTやGoogle AI Overviewなど、Web検索と大規模言語モデルを組み合わせた生成AI検索の普及により、人々が情報へアクセスする方法と得られる情報の質が大きく変化しています。生成AI検索は、AIが自律してWeb上の情報を収集し、情報を引用しながら回答を生成します。一方で、生成AIがどのようなWebページを引用し、回答を構成するかどうかは産業界だけではなく学術界でも十分に解明されていません。
QueryLiftは、生成AI検索が引用する情報源の特性や、悪意ある情報によって回答が影響を受ける可能性について研究しています。その一貫として、QueryLiftが取り組んできた生成AI検索の情報操作リスクに関する研究論文「Assessing Attack Surfaces in Generative Search Engines through Publisher Attributes: A Case Study in Political Domains」(https://arxiv.org/abs/2608.15814)が、情報検索・知識管理分野の主要国際会議であるACM International Conference on Information and Knowledge Management 2026(CIKM 2026)(https://cikm2026.diag.uniroma1.it/)に採択されました。
今回の共同研究では、Web・自然言語処理・ソーシャルメディア分析を専門とする吉田准教授の知見と、QueryLiftが蓄積してきた生成AI検索の計測・評価技術を組み合わせ、生成AI検索における情報源選択、引用構造、および回答形成の実態を明らかにします 。
▪️生成AI検索における認知攻撃リスクに関する研究が国際会議に採択
生成AI検索は、ユーザーに高度な検索能力をもたらすだけでなく、情報の発信者である企業や組織にとっても、新たなユーザーに情報を届ける機会となります。ただし、この機会は善意の発信者だけに開かれているわけではありません。
生成AI検索には、悪意ある発信者の情報が回答に入り込みやすい構造的な問題があります。Webは誰でも自由に情報を発信できる場である一方、生成AI検索は発信者が誰であるかを十分に考慮するとは限りません。そのため従来の検索とは異なり、知名度や実績がなくとも、「生成AI検索に引用されやすい形」で情報をWeb上に置くだけで、回答に影響を与えられる余地があります。さらに意図的に歪められた情報が回答に引用されると、ユーザーはAIの流暢な文章を通じて本来の意図に気づかぬまま情報を受け取り、意思決定に用いてしまいます。この性質は、組織に対する認識や評価を歪める「認知攻撃」の効果を最大化させ、長年かけてブランドを築いてきた組織にとって深刻な脅威となります。そこでQueryLiftは、認知攻撃からブランドや組織の信頼を守る「防御の視点」を重視しています。
この問題意識のもと、QueryLiftは、どのような情報源が生成AIの回答に取り込まれ、情報操作の入り口となり得るのかを評価する基盤を世界で初めて設計・開発しました。中核となるのは、回答に引用された情報源について「攻撃者がその情報源に内容を掲載・挿入することが、どの程度容易か」を捉える新しい評価指標「コンテンツ挿入障壁(content-injection barrier)」です。

本研究では、認知攻撃が社会の意思決定に多大な影響を及ぼす政治分野にこの評価基盤を適用し、認知攻撃のリスクを洗い出しました。日本と米国の政党に関する質問に対して主要な3つの生成AI検索モデルが生成した計3,861件の回答を分析・評価した結果、(1) 攻撃面の広さはモデルによって大きく異なること、(2) その違いは、引用の選び方よりも前段のウェブ検索の時点で生じていること、(3) 与党に関する質問は野党に比べて障壁の低い情報源に依存しやすいこと、(4) ユーザーの政治的立場や知識量は引用傾向にほとんど影響しないこと、がわかりました。
本成果をまとめた論文は、情報検索・知識管理分野のトップ国際学術会議である「CIKM 2026」のFull Paper Trackに採択され、口頭発表に選出されました。(投稿された2,216件中の論文のうち、口頭発表は336件。約15%)
採択論文情報
- 論文名:Assessing Attack Surfaces in Generative Search Engines through Publisher Attributes: A Case Study in Political Domains
- 著者:
- - 望月 理来(QueryLift / 慶應義塾大学)
- - 小松 秀輔(QueryLift)
- - 野口 蒼大(QueryLift)
- - 安宅 和人(慶應義塾大学)
- 採択会議:The 35th ACM International Conference on Information and Knowledge Management(CIKM 2026)
- 採択トラック:Full Paper Track
- 論文URL:https://arxiv.org/abs/2608.15814
※本論文は、QueryLiftおよび慶應義塾大学の研究者によって実施された基盤研究であり、今回開始する筑波大学との共同研究とは実施期間および研究体制が異なります。
※本研究は、攻撃の成功やユーザーの認識の変化を実証したものではなく、情報操作に利用され得る経路を評価したものです。
▪️共同研究の概要
QueryLiftは、CIKM 2026に採択された研究をはじめ、生成AI検索を多角的に捉える研究に取り組んでいます。この研究開発体制をさらに強化するため、筑波大学の吉田光男准教授との共同研究を開始しました。自然言語処理とWebの双方で培われた吉田准教授の知見と、QueryLiftの専門性および事業現場で得られる課題意識を組み合わせ、実社会における生成AI検索の利用実態を踏まえ、その情報流通や引用構造を明らかにする研究に取り組みます 。
本共同研究では、実社会で生成AI検索がどのように活用されているかを捉え、その実態を捉えるための評価方法と、利用環境や技術の変化を継続的に分析するための枠組みを明らかにすることを目指します 。得られた知見を社会へ発信し、企業や組織を含む社会が、生成AI検索の特性や限界を理解するための判断材料を提供していきます 。
生成AI検索を理解するには、自然言語処理の技術に加え、Web上の情報流通や検索について蓄積されてきた研究の知見が重要です。吉田准教授は、自然言語処理とWebの双方で長年にわたり研究に取り組んできました。本共同研究では、その研究経験を通じて培われた問題意識や分析の視点を取り入れ、生成AI検索において何を問い、どのような観点から評価すべきかを検討します。
QueryLiftには、自然言語処理や情報セキュリティを専門とする若手研究者が在籍しています。それぞれの専門性に加え、研究成果が事業上の課題解決に直結する環境を生かし、実社会での有効性を重視した研究を進めます。
具体的には、実社会で生じている課題や利用状況を研究に生かし、得られた知見について学術的な検証と社会への還元を進め、その成果を次の研究課題へとつなげます 。吉田准教授の研究蓄積と、QueryLiftの専門性および実社会で得られる知見を組み合わせ、学術的な検証と実社会における観察を継続的に往復する研究に取り組みます 。本共同研究では、特定のサービスやGEO施策の最適化ではなく、生成AI検索における情報源選択、引用構造および情報流通の実態を明らかにすることを主眼とします。
▪️QueryLiftが生成AI検索の研究に注力する理由
GEO(Generative Engine Optimization)は、生成AIによる回答におけるコンテンツの可視性を高めるための概念として、学術論文で提案されました。現在も、生成AI検索の情報源選択や引用の仕組み、最適化手法、その効果を測る評価指標などについて、研究が活発に進められています。
生成AI検索もGEOも、いまだ発展途上の分野です。対象となるモデルや検索の仕組み、質問内容、業種によって、施策の効果は異なります。そのため、既存の手法を固定的に適用するだけでなく、最新の研究成果を継続的に把握し、自らも新たな手法や評価の観点を提案しながら、事業へと実装する体制が不可欠だとQueryLiftは考えています。
市場の関心が高まる一方で、効果の根拠や適用条件が十分に明らかでない施策を、そのまま導入することには注意が必要です。学術論文で効果が示された手法についても、特定の実験条件で得られた結果が、実際の顧客環境で同様に再現されるとは限りません。重要なのは、研究成果をその検証条件や限界まで理解し、実環境での有効性を確認したうえで、迅速にサービスへ取り入れることです。
QueryLiftは、この「研究動向の把握」「新たな知見の創出」「実環境での検証」「プロダクト・支援施策への実装」を一体として進めることを、競争力の源泉と位置づけています。研究と事業の距離を縮めることで、技術の変化にいち早く対応し、顧客が根拠の不明確な施策に時間や費用を投じることを減らしながら、より確かな判断と成果につながる支援を目指します。
今回の筑波大学との共同研究では、生成AI検索に関する学術的理解を深め、情報源選択や引用構造に関する知見を蓄積します。QueryLiftでは、こうした研究成果や関連する学術的知見を踏まえ、自社の事業活動への応用を検討してまいります。
▪️研究者コメント
筑波大学 ビジネスサイエンス系 吉田光男准教授
生成AI検索の普及は、人々が情報に接触し、理解し、判断する過程を変えつつあり、社会における情報流通の構造そのものに影響を与えています。同時に学術的にも、情報検索や自然言語処理に閉じず、情報がどのように選択・引用され、人々や社会に届くのかを捉える新たな研究課題が生まれています。計算社会科学の観点からも、生成AI検索やGEOを単なる技術や最適化手法として捉えるのではなく、その仕組みと社会的影響を実証的に明らかにすることが重要です。本共同研究を通じて、生成AI時代の情報流通を理解するための学術的基盤の形成に貢献したいと考えています。

QueryLift株式会社 Co-Founder, CTO
小松 秀輔 生成AIの発達と普及が急速に加速する中、情報の伝わり方に大きな地殻変動が起きています。人間が生成AIから情報を受け取るようになった現代社会において、政府や企業をはじめとするあらゆる発信者とユーザの接点を、生成AIを前提に再設計する必要があります。
しかし、現状の生成AI検索の領域は経験則や憶測を元にした方法論が多く、ほとんどが手探りでの対策となっています。このような未発達の領域であるからこそ、研究という確固たる土台をもち、生成AI検索に対する本質的な理解を深めることが重要です。
本共同研究では吉田先生とともに、情報発信者の目線から生まれる問いに向き合います。その成果を広く共有し、情報を発信する側と受け取る側の双方が生成AI時代の情報のあり方を考えるための土台づくりに貢献したいと考えています。

QueryLift株式会社 リサーチャー
慶應義塾大学 助教
望月 理来生成AI検索の登場は、検索結果を自然言語で示す表層的な変化にとどまりません。検索の仕組みそのものが変わり、情報の蛇口の中央集中化により生じる攻撃リスク、生成された回答の妥当性や信頼性の担保、質問の形式・表現・意図の多様化による検索行動の変容など、従来の検索の枠組みを超えた課題が生じています。しかも、これらに応える新たな枠組みは、技術だけでは完結しません。技術、社会展開、ガバナンスの狭間には、誰もが安心・安全に、そして公平・公正に高度な情報検索を使いこなすための余白が、まだ多く残されています。こうした未踏の領域の開拓にこそ、産学のコラボレーションが欠かせません。私たちは、検索する側だけではなく、検索される側、すなわち情報発信者の現場にも身を置いています。彼らが描く理想や直面する本物の悩みと向き合う中で、私たちの中には多くの問いが生まれています。それらを学術研究の場へ持ち帰って知へと昇華させ、社会実装を通じて再び現場へ還元する。この循環を生み出し、支えることが研究チームの使命です。吉田先生とともにこの循環を加速させ、新たな情報検索の礎を築いていきたいと考えています。
会社概要
会社名:QueryLift株式会社
代表者:代表取締役 野口蒼大
所在地:東京都港区南麻布1丁目5−8 南麻布スキップフラット301号室
設立:2025年5月8日
事業内容:企業向けGEO・LLMO対策プラットフォームの開発・提供
企業HP:https://www.querylift.co.jp/
本件に関するお問い合わせ
https://www.querylift.co.jp/contact/company