沖縄の新設法人の早期閉鎖率は全国より低く、新設の4割が合同会社

法人データベース「Compalyze(カンパライズ)」を運営する株式会社Compalyze(本社:滋賀県草津市、代表取締役:鈴木隆士)は、国税庁の法人番号データをもとに、2021~2025年に設立された会社を都道府県別に集計し、人口10万人あたりの新設法人数(起業密度)を分析する調査を実施しました。
その結果、東京・大阪に次ぐ全国3位に沖縄(706社)が入りました。ただし新設の中身を分解すると、テック集積でも乱立でもない、沖縄ならではの起業の姿が浮かび上がりました。
データ引用時のお願い
本調査データを引用・利用される際は、以下のURLと出典を明記してください。
URL:https://compalyze.co.jp/journal/startup-density
出典:【調査】新設法人が多い県、3位は沖縄 ── ただし正体は「テック集積」ではなく「観光×合同会社」の密度
調査サマリ
- 人口10万人あたりの新設法人数(2021~2025累計)は、東京1,421社・大阪805社に次いで沖縄が706社で全国3位。福岡564社・京都543社がこれに続く。
- 沖縄の新設はテック起業ではない。IT・テック系の社名比率は2.43%と全国平均2.98%を下回り、福岡(2.86%)・京都(2.68%)・東京(3.40%)よりも低い。
- 「すぐ畳む」でもない。設立4年内の早期閉鎖率は沖縄2.1%と、全国3.1%・東京3.9%より低く、むしろ定着している。
- 沖縄を押し上げる正体は、新設の39.9%を占める合同会社(全国28.7%)、全国の約4.3倍にのぼる観光系(0.91%対全国0.21%)、そして那覇の特定住所への名目本店の集中(4年で75社)の組み合わせとみられる。
- 福岡・京都は事業・スタートアップ寄りの密度。沖縄は「観光×軽い器」型の密度で、同じ上位でも性質は異なる。
人口あたりにすると、沖縄が3位に浮上する
2021~2025年に新しく登記された会社を都道府県別に数え、人口10万人あたりに直すと、首位は東京の1,421社です。2位の大阪(805社)を大きく引き離しています。3位に入ったのが沖縄の706社です。沖縄は新設法人の絶対数では全国中位ですが、人口が約147万人と少ないため、人口あたりでは一気に上位へ浮上します。以下、福岡(564社)、京都(543社)、神奈川、愛知が続きます。

人口10万人あたりの新設法人数 上位(Compalyze調べ、2021~2025年累計)
沖縄の起業は「テック」でも「短命」でもない
人口あたり3位と聞くと、IT企業が集まる活気あるスタートアップの街を想像するかもしれません。しかし新設会社の中身を見ると、その像は二重に裏切られます。
ひとつは、テック起業ではないことです。新設会社の社名にIT・システム・テック・デジタルといった語を含む比率を見ると、沖縄は2.43%で、全国平均の2.98%を下回ります。東京(3.40%)はもちろん、福岡(2.86%)、京都(2.68%)よりも低い水準です。人口あたりの会社は多いものの、それはテック集積の結果ではありません。
もうひとつは、「数だけ多くてすぐ消える」でもないことです。2021~2025年設立のうち、すでに登記が閉鎖されたものの割合(早期閉鎖率)は沖縄が2.1%です。全国の3.1%、東京の3.9%より低く、むしろ沖縄の新設会社は他地域より長く残っています。「乱立してすぐ畳む」という像も当たりません。
沖縄を押し上げる正体 ── 合同会社・観光・名目本店
では、テックでも短命でもないのに、なぜ沖縄は人口あたりで全国3位なのでしょうか。沖縄の起業密度を分解すると、3つの固有性が浮かびます。

沖縄の新設法人プロファイル(全国平均=1.0。Compalyze調べ)
合同会社の多さ。沖縄の新設会社の39.9%が合同会社で、全国平均(28.7%)を大きく上回ります。合同会社は決算公告の義務がなく、最も軽い器として、資産管理・民泊・小規模事業の受け皿に使われやすい形態です。沖縄では、生まれる会社の4割がこの軽い器を選んでいます。
観光系の突出。社名に観光・リゾート・マリン・ホテルといった語を含む比率は沖縄が0.91%で、全国平均0.21%の約4.3倍にのぼります。観光という、比較的小資本で始めやすい産業の厚みが、新設の多さを底上げしているとみられます。
名目的な登記の集中。沖縄で最も多くの新設会社が登記された住所には、4年あまりで75社が集まっていました(うち合同会社37社)。シェアオフィスや登記代行の住所とみられ、本店の実態というより、登記の住所だけが置かれているケースが一定数あることを示しています(個社の実態を断定するものではありません)。
以上をまとめると、沖縄の「人口あたり3位」は、観光という起業しやすい産業と、合同会社という軽い器への偏り、そして名目本店の集中が重なって生まれた密度だといえます。事業の厚みやテック集積を直接示すものではありません。一方で早期閉鎖率は低く、生まれた会社は脆くもありません。「数は多く、器は軽く、しかし脆くはない」という、沖縄固有の起業の姿です。
同じ高密度でも、性質が異なる
人口あたりで上位に並ぶ都府県も、その中身の性格は一様ではありません。合同会社の比率(軽い器をどれだけ選ぶか)とIT・テック系の社名比率(事業先端性の代理指標)で並べると、同じ高密度でも位置が分かれます。

新設会社の性格マップ:横軸=合同会社比率、縦軸=IT系社名比率(Compalyze調べ)
福岡(合同会社25.6%・IT2.86%)や京都(25.0%・2.68%)は、軽い器が少なくIT比率が高めの「事業・スタートアップ寄り」に位置します。
対して沖縄は、合同会社が突出して多く、IT比率は低い「観光×軽い器」型に位置します。同じ「人口あたり上位」でも、福岡・京都が事業の密度なら、沖縄は器と観光の密度であり、性格はかなり異なります。人口あたりの数字を一律に「起業の活発さ」として横並びに読むと、この違いを見落とします。
約7倍の地域差と、密度指標の読み方
ランキングの下位を見ると、人口あたりの新設法人が少ないのは岩手(201社)、秋田(209社)、山形(210社)など東北・日本海側の県です。最下位の岩手と首位の東京では約7倍の開きがあります。
ただし本調査で見たように、人口あたりの「数」が大きいことは、必ずしも事業の厚みやスタートアップの活発さを意味しません。合同会社という器の選ばれ方、観光のような産業構造、名目本店の集中といった要素が密度を押し上げます。
新設法人の登記密度は地域の事業開始動向をみる入り口の指標であり、「どんな会社が、どんな器で生まれているか」まで分解して初めて、地域の起業の姿が見えてきます。
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【調査】新設法人が多い県、3位は沖縄 ── ただし正体は「テック集積」ではなく「観光×合同会社」の密度
調査概要
調査主体
株式会社Compalyze
調査対象
国税庁 法人番号公表データに基づく国内の全登記法人(約580万法人)。新設の集計は会社5種(株式・合同・有限・合資・合名)を対象。
集計期間
新設の年次推移は2016年~2025年(法人番号制度開始が2015年10月のため、通年で追えるのは2016年以降)。
データ
法人番号データ(設立・法人種別・所在地)、登記の組織変更、Compalyze が事業内容・従業員規模を把握した会社の補助情報。
方法
法人種別コード別に新設・存続・組織変更を集計。割合は会社5種を分母とする(一般社団法人・NPO等を含む民間調査の新設法人全体とは分母が異なる)。
留意点
「登記上の存続数」は休眠を含み、活動中の会社数ではない。従業員規模・業種の構成比は把握できた会社を母数とした傾向値であり、全体像とは幅がある。
Compalyze について
Compalyze は、登記・決算公告・知財・役員・公共調達など企業の公開データを全件規模で統合し、企業分析・営業・投資・M&A の意思決定を支援する企業データベースです。(https://compalyze.co.jp)
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