「SiC パワー半導体の先駆的研究と実用化による機器の省電力化」 京都大学大学院工学研究科 教授 木本 恒暢
1930年(昭和5年)に設立された公益財団法人服部報公会(理事長:佐藤知正)は、活動の一環として、工学に関する優秀な研究成果を挙げた研究者に対して、服部報公会「報公賞」を贈呈しております。
このたび、本年度の公募を行い慎重かつ厳正な審査を経て、令和8年度の報公賞に、
京都大学大学院工学研究科教授 木本恒暢氏の研究「SiCパワー半導体の先駆的研究と実用化による機器の省電力化」を選定いたしました。
[業績の概要]
炭化ケイ素(SiC)は、高耐圧・高効率動作を実現する次世代パワー半導体材料として大きな期待を集めてきたが、その実用化には材料品質やデバイス性能に関する多くの技術的課題が存在した。木本恒暢氏は、SiCパワー半導体の研究開発を長年にわたり牽引し、現在主流となっている4H-SiC材料の優位性の実証、高品質エピタキシャル成長技術の確立、結晶欠陥や界面特性の解明と改善など、材料からプロセス、デバイスに至るまでの基盤技術を体系的に確立した。また、重要な電子物性の精密評価と学術基盤の整備を通じて、SiCパワー半導体研究の発展に多大な貢献を果たした。
さらに、高耐圧・低損失のショットキーダイオードやMOSトランジスタの開発により、SiCパワー半導体の実用化を大きく前進させるとともに、多数の産学連携を主導して我が国における関連産業の発展と国際競争力の強化に寄与した。その成果は、電気自動車(EV)・ハイブリッド車、鉄道車両、再生可能エネルギー設備、データセンターなど幅広い分野における省エネルギー化と高効率化を支え、脱炭素社会の実現にも大きく貢献している。
木本氏の業績は、SiCパワー半導体の基礎研究から産業応用に至る発展を主導したものであり、学術的価値と社会的・産業的価値の双方において極めて顕著な功績である。
なお、服部報公会「報公賞」の贈呈式は、来る10月9日(金)に、開催予定で、賞状並びに賞金1,000万円が贈呈されます。また、「報公賞」と同時に、本年度の「工学研究奨励援助金」として、16件の研究に対し総額1,600万円 本年より新設の報公奨励賞1件に対し100万円が贈られます
報公賞は、1931年(昭和6年)の第1回目より2025年に至るまでに、120件(137名)を、そして工学研究奨励援助金は、3,051件を贈呈して参りました。
本件に関するお問い合わせ先
公益財団法人 服部報公会 事務局
〒104-0031 東京都中央区京橋一丁目4-10
TEL 03-3275-3166 / FAX 03-3275-3165
E-mail info@hattori-hokokai.or.jp
https://www.hattori-hokokai.or.jp
■受賞者略歴

氏名 木本 恒暢 (きもと つねのぶ)
生年月日 1963年12月27日
学歴
1988年3月 京都大学大学院工学研究科電気工学第二専攻 修士課程修了
1996年3月 博士(工学)(京都大学, 論文提出による)
主要経歴
1988年4月 住友電気工業(株) 伊丹研究所 研究員
1990年4月 京都大学工学部 研究生
1990年8月 京都大学工学部 助手
1996年9月 スウェーデン国 リンシェピン大学物理学科 研究員(京都大学助手 兼任)
1998年2月 京都大学大学院工学研究科電子物性工学専攻 助教授
2006年4月 京都大学大学院工学研究科電子工学専攻 教授 現在に至る
受賞歴
2004年 電子情報通信学会 業績賞
2014年 市村学術賞
2014年 市村産業賞
2015年 加藤記念賞
2020年 岩谷直治記念賞
2020年 文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門)
2020年 山崎貞一賞
2022年 応用物理学会 赤崎勇賞
2024年 IEEE Andrew S. Grove Award
2025年 紫綬褒章
2025年 SSDM Award
2026年 日本学士院賞
公益財団法人服部報公会 概要
服部報公会は、昭和5年(1930年)、株式会社服部時計店(現 セイコーグループ株式会社)の創業者初代社長服部金太郎が、その70回の誕辰にあたり、国家、社会の恩に報ずるの念をもって、私財3百万円を投じて設立した公益事業団体であります。
会の目的とするところは、社会の福祉を増進し公益に資することであり、このために次の事業を遂行することとしました。
1. 国家及び社会に対し有用なる発明発見または研究を成就したるものに対する感謝及び賞金の贈呈。
2. 一般学術の特殊なる研究又は調査の奨励、援助。
3. 教育その他の公益事業に対する援助。
4. その他の本財団の目的を達成するために必要なる事業または出版を為すこと。
設立当時の役員は、理事長桜井錠二博士、理事に湯浅倉平、大河内正敏、矢野恒太、篠原三千郎の4氏、監事に穂積重遠、清水賢一郎の両氏が当り、評議員には学界ならびに政、官、財界の諸名士が名を連ねました。その後、服部金太郎が昭和9年に歿すると、嗣子2代社長 服部玄三は、設立者の遺志を継いで、さらに私財3百万円を寄附し、ここに会の基金は6百万円に増強され、当時屈指の民間公益事業団体となりました。
会の発足以来今日に至る間に、我が国は、第2次世界大戦をなかにはさんでしばしば激動の 波に洗われましたが、この間においても、会の事業は一度の中断もなく遂行されてまいりました。 しかし戦後の激しいインフレの昂進によって、従来の基金をもってしては事業の遂行が困難になりましたので、創立者の遺業に関係の深い会社のご協力や個人のご寄附によって逐次基金の増加を図り現在に至っております。
なお、当会は平成24年1月に公益財団法人へ移行いたしました。
服部報公会では、1931年(昭和6年)に第1回報公賞を贈呈して以来、授賞を行って現在に至っており、今年で第96回目の贈呈になります。現在は広く工学の進歩に貢献する研究を対象として公募をしており、特定の工学分野に限定していない点が大きな特徴として挙げられます。