治療可能な老化を目指す最前線の遺伝医学の潮流。
「人は誰でも老いるもの」、これは長らく人類にとって不変の真理だと思われてきました。
しかし今、近年の驚異的な科学の進歩によって、この「常識」が根底から覆されようとしています。今日から3回にわたり、最新科学が解き明かす「老化とDNAの秘密」について、最前線の情報をお届けします。
<第1回>『老化』は治療ができる疾患?それとも逆らえない自然現象?
<第2回> 老化を遅らせる薬とは本当に効くの?
<第3回> 人それぞれのDNAに刻まれている老化の速度
第1回のテーマは、老化の定義と原因について。私たちは老化をあきらめるべき運命として受け入れるべきか、それとも治療すべき対象として捉えるべきなのでしょうか。
老化は「運命」ではなく「エラーの蓄積」

そもそも、なぜ私たちは老いるのでしょうか? 鏡を見て増えるシワや白髪、低下する体力。私たちはこれらを「歳をとったから」と片付けがちです。しかし、現代の分子生物学が定義する老化とは、もっと物理的な現象です。世界的な権威ある科学誌でも、老化の特徴として「DNAの損傷」「テロメア(染色体の保護キャップ)の短縮」「細胞の老化(古い細胞の蓄積)」などが挙げられています [Cell, 2013 June]。

若い頃は体の修復機能が完璧に働き、DNAの傷を治すことができます。しかし、加齢とともに修復システムのエラーが増え、傷ついた細胞が死滅せずに「古い細胞」として居座り、周囲に炎症物質をまき散らすようになります。これが全身の機能を低下させる原因の一つとされています [Cell, 2023 January]。 つまり老化とは、魔法のような時間の経過ではなく、具体的な物理的故障の積み重ねなのです。
「疾患」として捉え直す世界の動き
現在、世界の最先端医学(ジェロサイエンス)では、「老化は治療可能な対象になり得る」というパラダイムシフトが起きています。実際、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-11)改訂の議論において、当初「Old age(老齢)」というコードが提案されたことは、医学界に大きな衝撃を与えました。最終的には「老化に関連する内因性能力の低下」といった表現に落ち着きましたが、これは老化を医学的に介入可能なプロセスとして認識しようとする世界的な潮流を示しています [The Lancet Healthy Longevity, 2022 June]。
私たちは老化をコントロールできるのか?
もし老化が「蓄積したダメージ」であるならば、車の部品を修理するように、その故障を直したり防いだりすることで進行を食い止められるはずです。

私たちのアプローチはどうあるべきでしょうか。その答えの一つが「遺伝子」にあります。ケンブリッジ大学などの研究により、老化の進行速度やパターンは、生まれ持ったDNAに深く刻まれていることが明らかになりました[Nature Communications, 2020 July]。
親から受け継いだ設計図を知ることで、「自分はどの臓器が老化しやすいのか」「どのような生活習慣がリスクになるのか」を予測できる時代が到来しています。
国内でもこの動きは始まっており、seeDNA遺伝医療研究所は2026年1月より、遺伝子検査キットに「老化速度」の解析項目を新たに追加しました。流行の健康法を闇雲に試すのではなく、まずは科学的な根拠に基づいて自分の「エイジングタイプ」を知る。それが、人生100年時代を賢く生き抜くための、最も確実な「治療」への第一歩となるでしょう。
https://seedna.co.jp/gene/score/

次回、第2回では皆さんが最も気になるであろう核心に迫ります。 「老化を遅らせる薬とは本当に効くの??」 科学的エビデンスに基づいたアンチエイジングの真実について解説します。次回もお見逃しなく。