AIが大量に見つける脆弱性の、検証から修正までを自動化

一般社団法人 Nyx Foundation(所在地:東京都文京区、以下「Nyx」)は、AIセキュリティのスタートアップであるKonoe Intelligenceと業務提携契約を締結し、あらゆるシステムを対象とした「Mythos対策」の取り組みを開始したことをお知らせいたします。まずはソースコードの脆弱性検出から着手し、金融を中心とした基幹システムを持つ企業へ提供してまいります。
いま、AIによって脆弱性を大量に発見できる時代が始まりつつあります。攻撃側はAIで脆弱性を次々と見つけ、守る側にはAIが生成した脆弱性レポートが毎月大量に届く。だが、そのどれが本物で、どれを直すべきなのかを、人手で確かめきることはもうできません。もっともらしいだけの報告が洪水のように流通し、検証が追いつかない。本リリースではこの構造を「Mythos問題」と呼びます。
Nyxは1年以上前から、独自開発の形式仕様抽出・検証エンジン「SPECA」を用いてこの問題に取り組んできました。ブロックチェーンにとどまらずC/C++のオープンソースソフトウェア(OSS)でも脆弱性を発見し、公開ベンチマークで最高水準の精度を記録しています。直近ではイーサリアム財団の研究グラントを受領し、同財団のもとへ届くAI生成レポートの妥当性を自動で検証し、自動でパッチを当てる仕組みづくりを進めています。
本提携では、この仕様駆動の形式検証技術に、AIレッドチーミング(攻撃者視点での安全性評価)のコンペティションで入賞実績を持つKonoe Intelligenceの実践知を掛け合わせ、あらゆるシステムに対するMythos対策を本格的に始動します。
背景:AIが脆弱性を「大量に」見つける時代
セキュリティの前提が、いま静かに反転しつつあります。これまで脆弱性を見つけることは、専門家の時間と勘に依存する希少な作業でした。しかしAIの登場で、脆弱性は「探すもの」から「大量に降ってくるもの」へ変わろうとしています。
これは二つの刃を持ちます。ひとつは攻撃側の刃です。2025年、完全自律型のAIペネトレーションテスター「XBOW」が、バグ報奨金プラットフォームHackerOneの米国ランキングで数千人の人間の研究者と競い、AIとして初めて首位に立ちました。XBOWが提出した脆弱性は約1,060件。直近90日間の提出分だけでも54件がCritical、242件がHighに分類され、2,000台以上のホストに影響する未知の脆弱性も含まれていました。脆弱性を見つける速度と量で、AIはすでに人間を追い越し始めています。
もうひとつは守る側の刃です。バグバウンティや自動監査ツールから、AIが生成した脆弱性レポートが毎月大量に届きます。しかし、その一つひとつが本物なのか、誤検知なのか、どれを優先して直すべきなのかを、人手で確かめきることはもうできません。発見が自動化された分、検証だけが人間の手に残され、そこが新たなボトルネックになります。もっともらしいが正しいとは限らない報告が洪水のように流通し、本物のリスクが偽陽性の山に埋もれます。本リリースではこの構造を「Mythos問題」と呼びます。仕様と実装の乖離を、機械が機械のスピードで突いてくる。ブロックチェーンやAIに限った話ではなく、金融をはじめとするあらゆる基幹システムに共通して迫る課題です。
金融システムほど、この問題は重くのしかかります。止められない、間違えられない、規制も厳しい。脆弱性レポートの洪水を前に「どれが本物かを機械的に確かめ、直すところまで自動化する」仕組みを持たない組織は、対応そのものが破綻しかねません。
取り組みを支える両社の実績
本提携は、攻撃者視点の実践的評価と、仕様駆動の形式検証という、両社の異なる強みの掛け合わせで成り立っています。
Konoe Intelligence(攻め:AIレッドチーミング)
- 京都大学・東京大学発のAIセキュリティスタートアップとして、生成AIへの疑似攻撃で脆弱性を検出する「AIレッドチーム」サービスを提供。
- OpenAIが主催した「Red-Teaming Challenge - OpenAI gpt-oss-20b」において、大規模言語モデル(LLM)へのプロンプトインジェクション(AIへの指示に悪意ある入力を紛れ込ませる攻撃手法)の成功を実証し入賞するなど、AI Safetyの実践的知見を蓄積。
Nyx Foundation(守り:仕様駆動の形式検証)
- Sherlock Ethereum Fusaka監査コンテスト:SPECAは、スコープ内の脆弱性15件をすべて再現したうえで、開発者の修正コミットで確認された新規バグを4件発見。
- RepoAudit C/C++ベンチマーク:ブロックチェーン外のOSSにおいても既知バグ35件をすべて検出し、公開されている最高水準の精度(88.9%)を記録。
- 脆弱性データベースの構築・公開:監査で得られた知見(約4,500件)を公開。あわせてEthereumクライアントの脆弱性・修正履歴(2000件以上)を集約したデータベースを構築し、Mythos対策の学習・検証基盤を整備。
- イーサリアム財団の研究グラントを受領:財団のセキュリティ運用への統合を進め、AI生成レポートの自動検証・自動パッチの仕組みづくりに取り組む。
攻めの「攻撃者は実際にどこを突くか」を見抜く力と、守りの「本物かどうかを機械的に確かめる」力を持ち寄ることで、検証の自動化は机上のものではなく、実戦に耐えるものになります。
関係者コメント

Konoe Intelligence 代表取締役・勘佐圭吾AI性能の向上に伴いサイバーセキュリティに対する危機感は刻一刻と高まっています。
日本政府の動きとしても重要インフラ等にも注意喚起並びに対策を求めています。
これは特に国産によるソリューション等で対策していく必要性があります。
Nyx Foundation並びに我々、Konoe Intelligenceはこの重要なテーマに対して、貢献してまいります。

Nyx Foundation Co-Founder・神波真聖セキュリティの前提が、移り変わっています。これまで脆弱性は、人が時間をかけて探し当てる、希少なものでした。いまは、AIが大量に見つけ、大量に報告してくる時代です。
私たちが1年以上取り組んできたMythos対策とは、脆弱性を見つけることではなく、見つかったものが本物かどうかを仕様に照らして機械的に確かめることです。この考え方で、イーサリアムのブロックチェーン、暗号ライブラリ、分散型金融サービス、そしてOSS全般に対し、これまでに40件を超える脆弱性を発見してきました。
象徴的な出来事があります。ある高校生が私たちのツールを使い、わずか1ヶ月でセキュリティを学び、グローバルな監査コンテストで入賞しました。仕様さえ形にできれば、大きなAIモデルがなくても、セキュリティエキスパートでなくても、Mythos級の脆弱性は見つけられます。一度チェックリストを整備すれば、何度でも同じ精度でループして監査でき、なぜそれが脆弱性なのかを人が後から追える。仕様駆動監査の強みは、この解釈可能性にあります。
ICLR 2026 Workshopへの採択、イーサリアム財団の研究グラント採択と、研究と実務の両面でこの技術を磨いてきました。Konoe Intelligenceとともに、この技術を日本のセキュリティ水準を高めるために、最大限使っていきたいと考えています。
今後の展開
両者はまず、ソースコードの脆弱性検出から取り組みを始めます。想定する主な提供先は金融を中心とした基幹システムを持つ企業で、脆弱性レポートの検証から修正までの自動化を、既存のセキュリティ体制へ統合できる形で提供することを目指します。
本提携で構築するMythos対策の枠組みは、基幹システムに限らず開かれたものにしていきます。OSSやブロックチェーンの開発者・監査者にはMythosクラスの脆弱性の検出・修正に、セキュリティ研究者には形式検証とAIレッドチーミングを融合した新たな領域への早期の接続に、それぞれ活用いただくことを目指します。こうした広がりを通じて、日本のセキュリティ水準の底上げに貢献してまいります。
Konoe Intelligenceについて

https://www.konoe-intelligence.net/
Konoe Intelligence 株式会社は「安全な超知能に最速で到達する」をミッションに掲げ、AI安全性を専門とする研究開発スタートアップです。
解釈可能性手法を統合したAIモデルの安全性評価やモデル開発、AIに対するレッドチーミング等を提供。
OpenAIが主催した「Red-Teaming Challenge - OpenAI gpt-oss-20b」において、Top20に日本人で唯一入賞。
- 所在地: 京都府京都市上京区甲斐守町97西陣産業創造會館
- メール: info@konoe-intelligence.net
- Konoe Intelligence: https://www.konoe-intelligence.net/
Nyx Foundationについて

https://nyx.foundation
一般社団法人Nyx Foundation(所在地:東京都文京区)は、Ethereum・ブロックチェーンに特化した私設の研究機関です。形式検証とセキュリティを専門領域とし、次世代プロトコルの安全性向上に取り組んでおります。
すべての活動資金は寄付・研究助成金・スポンサーシップによって支えられております。Ethereum Foundationやブロックチェーン企業・大学との連携を進め、Financial Cryptography 2026 DeFi Workshopでの論文採択、ICLR 2026 Agents in the Wild Workshop採択、Ethereum次期アップグレード「Fusaka」監査コンテストでの脆弱性発見数世界第1位、イーサリアム財団研究助成金採択など、国際的な学術成果と実績を上げております。
本件に関するお問い合わせ先
- 一般社団法人 Nyx Foundation
- 所在地: 東京都文京区
- メール: contact@nyx.foundation
- Nyx Foundation: https://nyx.foundation/