~香りが学習時の気分に好影響を与え、集中力を高める重要な要素に~
公益社団法人 日本アロマ環境協会(略称:AEAJ、東京都中央区)は、アロマテラピーに使用する精油(エッセンシャルオイル)の働きを科学的に明らかにする取り組みを行っています。
今回は、AEAJが小学生を対象に、計算力と気分に与える精油の影響を明らかにする目的で実施した実験で、オレンジ・スイート精油が小学生の集中力などの気分に好影響を与え、計算ミスが軽減することが示唆された研究を紹介します。
アロマテラピーとは植物から抽出される精油を用いた芳香療法のことです。花や葉、果皮など100%植物から抽出される香りのエッセンス“精油”が嗅覚を通して脳に伝わることで、本能的な部分を司る大脳辺縁系や視床下部を刺激し、心身にさまざまな作用をもたらします。
■オレンジ・スイート精油を嗅ぐことで学習効果が高まる傾向
<実験概要>
11~12歳の小学校6年生男女38名(男子20名、女子18名)を対象とし、オレンジ・スイート精油の芳香浴後、百ます計算及び心理状態(気分)をTDMS-ST(二次元気分尺度)とVAS(視覚的評価スケール)を用いて計測しました。実験の順番による影響も考慮し、休憩時間をはさんで香りなし(精製水)/香りあり(精油)の順番をクロスオーバーして実施しました。
<実験結果>
百ます計算の誤答数を比較した実験の結果、精製水を嗅いだ群(平均4.4)よりもオレンジ・スイート精油を嗅いだ群(平均値3.2)の方が、計算ミスが約3割少ないという傾向が見られました。【図1】
また、気分に対するオレンジ・スイート精油の作用を検証した結果、TDMS-STとVASの5項目で有意差が確認され、オレンジ・スイート精油が小学生の気分に好影響を与え、学習しやすい精神環境に変化させることがわかりました【図2】
【図1】オレンジ・スイート精油の芳香浴による百ます計算の誤答数の変化
【図2】オレンジ・スイート精油の芳香浴によるTDMS-STとVASの変化
【原著論文】 熊谷千津、永山香織:小学生の計算力と気分に与える精油の影響,アロマテラピー学雑誌, 16(1), 7-14 (2015).
■集中力に対するオレンジ・スイート精油の作用
精製水とオレンジ・スイート精油の芳香浴による前頭前野の脳血流量の変化
オレンジ・スイート精油による集中力の変化を評価するため、精製水またはオレンジ・スイート精油を30秒間吸入後、芳香環境を持続しながら百ます計算を10分間実施しました。オレンジ・スイート精油は精製水と比較して、計算を始めて早い段階から、側頭葉から前頭葉にかけて脳血流が増加し、脳が活発に働き、集中力が高まっていることが分かります。
古賀良彦氏<杏林大学医学部 精神神経科 教授
今回の調査は、子どもにとってストレスの少ないNIRS※という装置で行いました。「計算」という知的な作業は脳の前頭葉を使い、その部分の働きが高まっているほど前頭葉の血流が増加します。NIRSはその血流の変化を測定することに適した装置です。前頭葉の大部分を占める前頭前野は、脳において最も知的で高度な働きをする部位であり、最も発達している機能でもあります。今回の調査の結果、オレンジ・スイート精油の香りによって前頭前野の血流が増加し、その働きが高められることが示されました。
※NIRS(Near-Infrared Spectroscopy)とは、近赤外光を用いて、頭皮上から非侵襲的に脳機能をマッピングする装置です。
プロフィール/1946年東京生まれ。71年慶応義塾大学医学部卒業後、同大学医学部精神神経科学教室入室。76年杏林大学医学部精神神経科学教室に転じ、90年に同大学助教授、95年に教授となる。博士(医学)。著書に『いきいき脳のつくり方』(2010年技術評論社)、『睡眠と脳の科学』(2014年祥伝社)など。
いよいよ本格的な受験シーズン到来!
試験前にも簡単に取り入れることができるオレンジ・スイート精油活用法
ティッシュペーパーやハンカチを利用すれば、外出先でも取り入れることができます。お持ちのハンカチやティッシュに精油を1滴垂らします。試験会場に入る前など、集中力を発揮したいときに、香りを嗅ぎながらそっと深呼吸してみましょう。
※試験会場内では、他の受験生への影響を考慮し、使用はお控えください。
【公益社団法人 日本アロマ環境協会(AEAJ)について】
AEAJは、アロマテラピーに関する正しい知識の普及・調査・研究活動など、さまざまなアロマテラピー事業活動および資格認定(アロマテラピー検定、アロマテラピーアドバイザー、アロマテラピーインストラクター、アロマセラピスト)を行っています。あわせて、自然の香りある豊かな環境の保全と創造に取り組んでいます。