対象の全エリア・全月でポジのみ運用の収益を上回る。単独蓄電池で31%増、太陽光併設で45%から60%増

蓄電池のネガポジ運用、17か月の実市場データを用いた収益性検証に関するホワイトペーパーをリリース
自社開発の電力AIを起点としたソフトウェアプラットフォーム事業、アグリゲーション事業、アセットマネジメント事業を展開するTensor Energy株式会社(本社:福岡県福岡市 代表取締役:堀 菜々、フィルター ヴィンセント)は、日本の一次調整力(FCR)市場における蓄電池の「ネガポジ運用」の経済効果を実市場データで検証した調査レポート「日本の一次調整力(FCR)市場における蓄電池のネガポジ運用」を公開しました。2025年4月から2026年8月までの17か月間、東京・中部・中国・九州の4エリアを対象に30分解像度のシミュレーションを行った結果、ネガポジ運用の一次オフライン収益は、放電のみで入札する「ポジのみ運用」を対象の全エリア・全月で上回りました。増加率はアセット構成によって異なり、単独蓄電池で+31%、高圧太陽光併設蓄電池で+60%、低圧太陽光併設蓄電池で+45%でした。本レポートは、前提条件、データソース、結果の解釈上の注意点を含めて公開しています。
レポート全文: https://www.tensorenergy.jp/research/nega-posi-fcr-batteries
◼️背景:容量価格の低下局面で問われる蓄電池の運用設計
需給調整市場の一次調整力オフライン商品では、蓄電池は30分単位で提供可能な調整力(ΔkW)を入札し、実際の周波数変動の有無にかかわらず容量に応じた対価を受け取ります。市場の上限価格は2025年度の19.51円/kWから2026年4月に15円/kW、2026年9月以降は10円/kWへと段階的に引き下げられており、蓄電池事業者にとっては運用方法の違いが収益をどの程度左右するのかを、定量的に把握する必要が高まっています。ポジのみ運用では入札量が定格放電出力に限られ、充電中は市場から退出します。ネガポジ運用では、計画していた充電量の削減分も調整力として提供できるため、充電中も市場にとどまることができ、満充電時には理論上、定格出力の2倍まで入札量を拡大できます。本レポートは、この二つの効果が実際の市場価格のもとでどの程度の収益差として現れるかを検証したものです。
◼️主な調査結果

アセット別の月次一次調整力収入比率(4エリア合計)。黄色の点線(マーカー付き)は太陽光2サイトの月平均日射量(右軸)。縦の点線は前日取引の需給調整市場が始まり価格が下落した2026年3月14日。
- 対象の全エリア・全月でネガポジ運用が上回った
17か月間、4エリア、3種類のアセット構成のいずれの組み合わせにおいても、ネガポジ運用のFCR収益がポジのみ運用を下回った月はありませんでした。4エリアの全期間集計における収益比率は、東京1.31倍、中部1.30倍、中国1.32倍、九州1.33倍です。
- アセット構成によって効果の大きさは異なる
全期間のFCR収益増加率は、単独蓄電池(2,000kW/8,000kWh)で+31%、高圧太陽光併設蓄電池(2,000kW/4,300kWh+太陽光2,380kW DC)で+60%、低圧太陽光併設蓄電池(49.75kW/216kWh+太陽光25kW DC)で+45%でした。太陽光併設型で効果が大きいのは、日中の太陽光余剰を充電に充てる時間帯がFCR入札の対象となるためです。
- 容量価格の低下局面で相対的な優位性が拡大した
2026年4月から8月と、その前年の同じ5か月間を比較すると、4エリア集計の収益比率は1.29倍から1.52倍に上昇しました。容量価格が下がるほど、充電中に市場から離脱することによる機会損失が相対的に大きくなるためです。2026年9月以降の10円/kW上限のもとでも同じ傾向が続くと考えられますが、本レポートはこれを予測として断定するものではありません。
- 市場参加率と入札量が向上した
単独蓄電池の場合、FCR落札コマにおける参加率はポジのみ運用の68%から80%に対し、ネガポジ運用では82%以上でした。入札時におけるの平均入札量は13%から22%増加しました。
- 追加収益を評価する指標「ネガポジマージン」
本レポートでは、ネガポジ運用による充電1kWhあたりの追加収益を「ネガポジマージン=2×容量価格−(スポット価格−当日最安スポット価格)」として定義しています。この値は2025年度で22円から31円/kWh、2026年度で7円から16円/kWhでした。容量価格の低下に伴いマージン自体は縮小しており、優位性の拡大はマージンの大きさではなく、市場にとどまり続けることの価値の相対的な上昇によるものです。
■ 調査手法と前提条件
30分解像度の連続シミュレーションを2025年4月から2026年8月にわたり実施しました。データはオフラインで公開されているFCR約定価格(エリア×30分)、JEPX前日スポットのエリア価格、太陽光出力制御率、ECMWF ERA5の気象データを使用しています。主な前提条件は次のとおりです。すべての入札は平均約定価格で落札されるものとしています。サイクル劣化コストは10円/kWh、FCR提供に伴う消費電力量は0.0525kWh/契約MW/コマとしました。両モードとも系統からの充電を許可しています。ディスパッチは簡易なルールベースであり、最適化は行っていません。したがって、実運用における収益はここで示した水準と異なる可能性があります。
◼️著者コメント
Energy & Data Science担当 Andres Salazar
「ネガポジ運用が有利であることは業界内で経験的に語られてきましたが、どの程度有利なのか、どの条件で差が広がるのかは十分に定量化されていませんでした。今回は前提条件を明示したうえで実市場データで検証し、結果と限界をそのまま公開しています。事業者の皆さまが自社の条件に照らして判断する材料になれば幸いです。」
◼️Tensor Energyについて
Tensor Energyは、再生可能エネルギーと蓄電池のアグリゲーション・アセットマネジメントを支える電力AIプラットフォーム「Tensor Cloud」を起点とした事業を複数展開する福岡発のエネルギーテック企業です。発電事業者・アグリゲーター・小売電気事業者に向けて「Tensor Cloud」を提供するほか、アグリゲーターとして系統用蓄電池・FIP併設蓄電池・Non-FIT太陽光の市場運用を担うアグリゲーター事業、さらにアセットマネジメント事業を通じて再生可能エネルギー資産への投資・運用を手がけています。
会社概要
会社名:Tensor Energy株式会社
所在地:〒810-0001 福岡県福岡市中央区天神1-11-1
設立日:2021年11月
代表者:代表取締役 堀 菜々 & フィルター ヴィンセント
事業内容:発電システム、蓄電システム、及びその他の分散型エネルギーシステムの資産運用、制御、並びに電力取引に関するソフトウェアの開発、販売、サービス提供
主要株主:デライト・ベンチャーズ、 FFGベンチャーパートナーズ、 ジェネシア・ベンチャーズ、グローバル・ブレイン、グロービス・キャピタル・パートナーズ、みずほキャピタル、 Plug and Play Japan
お問い合わせ:hello@tensorenergy.jp
https://www.tensorenergy.jp/